母が言っていた「あの人」は正一さんのことなの? そして、命の夢見鳥が凪で、運命のつがいが正一さんなの?
この酷い人が凪の運命のつがいだなんて。
羽月はなにも答えられず、ただ黙っていた。
話を終えた羽月は、自分が与えられた、離れとは名ばかりの小屋に戻った。
引き戸を開けると小さな土間があり、上がり框を挟んですぐ障子で仕切られた六畳ほどの板の間がある。
結婚して以来ここに住んでいる。奥まったこの場所は門からも遠く、かつては座敷牢のように監禁するために使っていた様子もあった。隙間風ばかりで、寒い冬には震えながら眠るのは常だった。
「お姉ちゃん、開けるよ」
声がして、入口の引き戸が開けられた。
羽月が土間に通じる障子を開けると、そこには凪がいた。
「凪……」
ほっとした直後、羽月は思い直す。凪はかつての彼女とは様子が違っているのだから、かつての調子で接していては気分を害させてしまうかもしれない。
凪を部屋に上げると、凪は座りもせずに羽月に告げる。
「旦那様はああ言ったけど、やっぱり私は出て行ってほしいの」
その目には怒りがあり、羽月の胸がずきっと痛んだ。
元妻が同じ敷地の中に居るだなんて、凪にしては不愉快そのものだろう。
だが、正一の言う通りに羽月には行く先がないし、残された凪がどういう目に遭うのかが心配で出て行きたくない。
この酷い人が凪の運命のつがいだなんて。
羽月はなにも答えられず、ただ黙っていた。
話を終えた羽月は、自分が与えられた、離れとは名ばかりの小屋に戻った。
引き戸を開けると小さな土間があり、上がり框を挟んですぐ障子で仕切られた六畳ほどの板の間がある。
結婚して以来ここに住んでいる。奥まったこの場所は門からも遠く、かつては座敷牢のように監禁するために使っていた様子もあった。隙間風ばかりで、寒い冬には震えながら眠るのは常だった。
「お姉ちゃん、開けるよ」
声がして、入口の引き戸が開けられた。
羽月が土間に通じる障子を開けると、そこには凪がいた。
「凪……」
ほっとした直後、羽月は思い直す。凪はかつての彼女とは様子が違っているのだから、かつての調子で接していては気分を害させてしまうかもしれない。
凪を部屋に上げると、凪は座りもせずに羽月に告げる。
「旦那様はああ言ったけど、やっぱり私は出て行ってほしいの」
その目には怒りがあり、羽月の胸がずきっと痛んだ。
元妻が同じ敷地の中に居るだなんて、凪にしては不愉快そのものだろう。
だが、正一の言う通りに羽月には行く先がないし、残された凪がどういう目に遭うのかが心配で出て行きたくない。