修太朗はその後、魂を取り戻したかのように別人になった。
 周之助によって人生をゆがめられ、あきらめていた。
 その周之助が死に、銀の蝶に命を吸い取られた息子の正一は廃人のようになってしまった。
 自分がしっかりしなければ薬問屋はつぶれてしまうし、使用人のすべてが路頭に迷う。
 追い詰められた環境が修太朗を別人のようにしていた。
 羽月たちの生い立ちを知った修太朗は、彼女らの養い親の不正を追及した。
 養い親は、彼女たちに支払われるべき事故の賠償金を着服したとして警察に捕まった。
 蔵にあった木乃伊はひっそりと荼毘に付され、手厚く葬られた。
 羽月は凪とともに大燕の家に留まり、下にも置かない扱いを受けた。
 鳳羽は銀の蝶に身を扮して彼女たちを見守り、使用人たちはその存在に気が付かなかった。

***

 修太朗が家督を継いで一か月後。
 季節はすっかり春に移り、桜が咲き乱れ、菜の花が地を彩る。
 凪は修太朗の養女となることが決まった。
 正一との婚姻はその届けが出されていなかったため、凪はまだ独身である。修太朗が後見となり、良き相手を探してくれるとのことだった。
 それまでは女学校に通うことが決まっている。
 身の置き所が決まってほっとしている凪だったが、ひとつ気掛かりなことがあった。