「なにが……お姉ちゃん!」
力なく鳳羽に抱かれる姉を見て、凪は声を上げる。
「心配ない、眠っているだけだ」
「え……?」
「彼女は命を司る夢見鳥、たやすく死ぬことはない。そなたも血族ならば聞いたことがあるだろう」
「お母さんがそう言ってた……お姉ちゃんは命の夢見鳥、金の蝶を使いとする。死の夢見鳥は銀色をしている、とも」
ならば、目の前にいるこの男こそが死の夢見鳥なのだろう、と凪は思う。死のように静謐で冷たく、なのにその目には温かさがある。ときに冷徹に、ときに優しく訪れる死のように。
「夢見鳥様」
かけられた声に鳳羽が振り返ると、平伏した修太朗がいた。
「どうぞ私の命も奪ってください」
「それはならぬ」
鳳羽は即答した。
「しかし、我が一族は長きにわたり、あなた様の伴侶を閉じ込め、その力を悪用してきました」
「そなたがやったわけではないだろう。羽月ならそう言うはずだ。だから私はなにもせぬ」
「しかし……私は肉親の死を望むような穢れた存在、この世にはいないほうが良いかと思います」
「そなたは己の妻のところへ行きたいだけだろう。そう思うならば自力でそうするがいい」
「……それはできません。不甲斐なくもその勇気がなく」
「ならば生きるしかあるまい」
鳳羽の言葉に修太朗はただ首垂れる。
「そなたの伴侶とて、そなたの死を望んではおるまいよ」
続いた言葉に、修太朗はうう、と嗚咽をもらす。
力なく鳳羽に抱かれる姉を見て、凪は声を上げる。
「心配ない、眠っているだけだ」
「え……?」
「彼女は命を司る夢見鳥、たやすく死ぬことはない。そなたも血族ならば聞いたことがあるだろう」
「お母さんがそう言ってた……お姉ちゃんは命の夢見鳥、金の蝶を使いとする。死の夢見鳥は銀色をしている、とも」
ならば、目の前にいるこの男こそが死の夢見鳥なのだろう、と凪は思う。死のように静謐で冷たく、なのにその目には温かさがある。ときに冷徹に、ときに優しく訪れる死のように。
「夢見鳥様」
かけられた声に鳳羽が振り返ると、平伏した修太朗がいた。
「どうぞ私の命も奪ってください」
「それはならぬ」
鳳羽は即答した。
「しかし、我が一族は長きにわたり、あなた様の伴侶を閉じ込め、その力を悪用してきました」
「そなたがやったわけではないだろう。羽月ならそう言うはずだ。だから私はなにもせぬ」
「しかし……私は肉親の死を望むような穢れた存在、この世にはいないほうが良いかと思います」
「そなたは己の妻のところへ行きたいだけだろう。そう思うならば自力でそうするがいい」
「……それはできません。不甲斐なくもその勇気がなく」
「ならば生きるしかあるまい」
鳳羽の言葉に修太朗はただ首垂れる。
「そなたの伴侶とて、そなたの死を望んではおるまいよ」
続いた言葉に、修太朗はうう、と嗚咽をもらす。



