使用人が駆け付けたとき、鳳羽が無慈悲に命を奪うのではないかと思った。前世での記憶では、彼は羽月を守るためには命を奪うことをためらわない。
 だが、彼女が止める言葉に従って彼は気絶させるにとどめてくれた。
 修太朗が実の父を、ひいては我が息子を恨んでいたことは初めて知ったことで、驚愕した。
 常には存在感がなく、無気力にやりすごすだけだった彼の奥底にそんな暗い炎が燃えていることなど知る由もなかった。
 周之助がなにかを唱え始めたとき、鳳羽を害するつもりなのだとわかった。
 だからその攻撃の光が放たれようとしたとき、愛する鳳羽を守るために飛び出していた。
「羽月、なにを!」
 鳳羽の叫びが聞こえる。
 ケガをしても自分ならばすぐに治るのだろうし、万一命を失ったとしてもまた転生をして彼に会うことができるはずだ。彼に探す手間をかけさせてしまうのだけれど、彼を失うことに比べたら。
 だが、攻撃は羽月には当たらなかった。
 彼女を抱き留めた鳳羽が右手を一閃すると、その攻撃はたやすく消滅した。
 確かに周之助は命の夢見鳥の力の片鱗を持っているが、その力は何世代にも渡って薄められている。到底、鳳羽に叶うわけがない。彼が入れなかった結界は、よそから呼んだ術師の協力によるものだったのだ。
「羽月、無茶をする」
「だって……」
「記憶が戻ってからさほどたっていない。実感がないのか、私が死の夢見鳥であることに」
 揶揄するような声に、羽月はただ彼の銀の瞳を見つめる。