「な、なんだこれは!」
 命が吸い取られるような感覚に、正一は手をぶんぶんと振って離そうとする。だが光は強くなる一方で、やがて正一はがくりと倒れた。
 修太朗は虚ろな目でそれを見て口元に笑みを浮かべている。
「安心しろ、命までは奪っていない」
 鳳羽は羽月に言う。
「死の神はずいぶんと甘いのだな」
 修太朗は怒りに吐き捨てた。
「こいつは祖父の真似をして妻の……己の母の血を吸っていた。ありえない」
「人と人がすることに関知しない」
 冷然と鳳羽は言う。
「だが、羽月がからむとなれば話は別だ」
「くそ!」
 周之助は懐から数珠を取り出すとなにごとかを唱え始めた。
 鳳羽はそれが結界と同じ波動であることを感じた。
 周之助の血筋を辿れば、前世の羽月にたどりつく。羽月の血の力をいくばくか持っているのだろう。
「その程度でなんとかなると思うのか。なめられたものだ」
 鳳羽はあきれたように言う。
「夢見鳥様、お早く。御身のためでございます」
 修太朗の催促に、鳳羽は不快に眉をひそめた。早く、とは早く周之助の命を奪え、ということなのだろうから。
 周之助は唱え終わると数珠を突き出す。
 呪力が生まれ、それは鳳羽に向かって光となって走った。