幼い羽月は母がなにを言いたいのかわからなくて首をひねった。
「現実と死をたゆたう夢見鳥。「あの人」が現れてあなたを連れて行くのだわ」
それを聞いて彼女は怯えた。
「嫌だ、行きたくない、お母さんたちと一緒にいる!」
「あらあら」
母は笑いながら羽月の背を撫でて落ち着かせる。
「まだまだ先のことよ。それに、「あの人」はあなたにとって必要なの。だから心配しなくていいのよ」
「必要って、どうして?」
「「あの人」は生命の夢見鳥にとって運命のつがいなのよ。だから必ず探して見つけ出すと言われているの」
羽月はよくわからなくて首をかしげた。
「黄金にゆらめく命の夢見鳥。あなたが蝶に変化した姿はきっと美しいでしょうね」
母は微笑してそう言った。
貧しいながらも両親と妹の凪とともに幸せに暮らしていた羽月だが、ある日、それが壊れた。
両親が馬車に轢かれ、亡くなったのだ。
羽月は慟哭し、自分を責めた。
自分が一緒にいたならば、その力で両親を死から救えたのかもしれないのに。
激しい自責ののち、気が付いたら癒しの力は消失し、痣も消えていた。
ふさわしくない力だと神が取り上げたのかもしれない、と幼い自分は思った。だが不思議な力の一部は残っており、自分がケガをした際には急速にその傷は癒され消失した。
遠縁を名乗る人たちにひきとられてから羽月と凪の不幸は始まった。
子どものない彼らは羽月と凪を養子としたのだが、彼女らは使用人としてこき使われ、尋常小学校もろくに通わせてもらえなかった。
「現実と死をたゆたう夢見鳥。「あの人」が現れてあなたを連れて行くのだわ」
それを聞いて彼女は怯えた。
「嫌だ、行きたくない、お母さんたちと一緒にいる!」
「あらあら」
母は笑いながら羽月の背を撫でて落ち着かせる。
「まだまだ先のことよ。それに、「あの人」はあなたにとって必要なの。だから心配しなくていいのよ」
「必要って、どうして?」
「「あの人」は生命の夢見鳥にとって運命のつがいなのよ。だから必ず探して見つけ出すと言われているの」
羽月はよくわからなくて首をかしげた。
「黄金にゆらめく命の夢見鳥。あなたが蝶に変化した姿はきっと美しいでしょうね」
母は微笑してそう言った。
貧しいながらも両親と妹の凪とともに幸せに暮らしていた羽月だが、ある日、それが壊れた。
両親が馬車に轢かれ、亡くなったのだ。
羽月は慟哭し、自分を責めた。
自分が一緒にいたならば、その力で両親を死から救えたのかもしれないのに。
激しい自責ののち、気が付いたら癒しの力は消失し、痣も消えていた。
ふさわしくない力だと神が取り上げたのかもしれない、と幼い自分は思った。だが不思議な力の一部は残っており、自分がケガをした際には急速にその傷は癒され消失した。
遠縁を名乗る人たちにひきとられてから羽月と凪の不幸は始まった。
子どものない彼らは羽月と凪を養子としたのだが、彼女らは使用人としてこき使われ、尋常小学校もろくに通わせてもらえなかった。