そうする中で、羽月は知った。
 彼は死を司る夢見鳥、自分は生命の夢見鳥。死を司る彼は不変だが、自分は人として生まれ、必ずその生命を終える。命は巡り行くものだから。
 だがあるとき、彼女は奪われた。
 人間の策略によって彼女は連れ去られ、隠された。
 その策略を働いた者こそが大燕の祖先だった。
 生命の力を手に入れた彼の一族は繁栄した。
 妻とさせられた自分は命の力をすすり取るように血を奪われ、早々と命を落とした。
 鳳羽が取り戻しに来たときにはすでに遅く、彼は彼女の体ともども封印された。
 その後、自分の血を引いた女性には命の力が顕現することとなったが、その血は万能薬として高額で売られた。血を奪われるゆえに大燕家の娘は短命だった。
 大燕家は力のある血を守り、外に出さないために血族婚を繰り返した。
 姓を持つことを許されたときには蝶を喰らう燕を苗字として、家紋もそのように変えた。
周之助が生まれたとき、その血の濃さゆえに彼は病弱だった。
 彼の家に女性が生まれず、遠縁の女性を妻とした。
 彼女にはなんの力もなかったが、周之助は彼女の血をすすってなんとか体を維持し続け、彼女が死したのちは息子の妻の血もすすった。
 彼は伝説にある夢見鳥そのものを探した。
 そうして執念で羽月を探し出し、手に入れた。
 彼女は力を発現させていなかったが、その血はやはり万病に効果を発揮し、周之助の体を癒した。
 血の力は富を維持するためにも利用した。政府高官や財閥のお偉方、華族たちに万病の薬と高値で売りつけると、実際に病気が癒されたとして評判は高まった。