被害者のうちの一人である、ILLYと呼ばれているYouTuber の配信動画を見て、赤井は顎を手でさすった。
「何だ?この12月4日の配信?」
どういう意味なんだろう。いつもの配信の様子と違う。なんでそんなに買ってくれと叫ぶんだ。第一、購入期限は12月1日の配信の日だけじゃないのか?
青いっていうのは、髪の色のことか?
いかが?って、散々購入勧めてたのに、まだ売ろうとしているってことか?しかも、なぜ片言なんだ?
というか、それより、なぜこんな普通の見た目の子が人気なんだ?
白石が自信を持って言った。
「ILLYこと、木村雅美もこの事件の被害者っすよね。しかも、木村雅美は内臓もやられてる検体ですね。犯人は相当、恨みを持っていそうですよね、こんな殺し方。まぁ、美人だから、男関係も激しそうっすね。」
「あぁ、そうだな。」
赤井は上の空で返事をした。
「僕もちゃんと事件のこと、考えてるんで。犯人は、きっとILLYの熱狂的ファンっすね。好きになりすぎて、想いが伝わらず、自分の物にならないなら殺したくなっちゃう、的な。ありません?そんなこと。
まぁ、赤井さんは、愛妻家で幸せそうなんで、無いっすか。
ところで、赤井さんは、いいっすよね。背も高くて、イケメンだし。僕、ミスしてばっかりで青木さんから毎日怒鳴られてますよ。青木さん、いつも赤井さんのこと、褒めるんっすよ。
仕事も僕と違って出来るし、奥さんも美人で、美男美女で最高だよなって。そういえば、僕、初めて赤井さんに会った時、同期かなって思ったんすよ、すみません。赤井さん、シュッとしてるから、若く見えますし。本当は、一回り以上も離れてるのに。聞いてびっくりしましたよ。
ねぇ、赤井さん、聞いてますか?」
依然として、分からないことだらけだ。
殺人事件なら、一斉に大量殺人した犯人は、洗脳でもして殺害したというのか?いや、そんな馬鹿な。
その後、木村雅美の遺体の第一発見者である、実の姉が、マンションの近くで黒いフードを被った男が度々見かけたと証言した。木村雅美のことをしつこくつけ回し、木村雅美本人から警察に相談があった。白石の言う通り、ストーカーの仕業か?
捜査本部は、黒いフードの男を重要参考人として捜査することを決定した。
事件資料として、押収した木村雅美のパソコンのメールの履歴から、複数回、脅迫とも取れる文面の内容が見つかった。
「僕だけが、本当のILLYを知っている。君には僕しかいないんだ。」
「君の住所も僕はずっと前から特定してるよ。僕のこと、舐めてもらっちゃ困るな。僕だけのILLY。」
「君が整形してることを僕は知ってるよ。君の小学校の卒業アルバムを手に入れたよ。雅美、目も鼻も顔の輪郭も結構イジってるんだね。君のリスナーにバラしちゃおっかな?天然美人で売ってるのに、大丈夫かな?」
「今日、コンビニでプリンを買っている君を、隣の棚から見ていたの、気付いてくれた?相変わらず甘い物が好きなんだね、雅美。」
「僕と暮らそう。君は僕としか分かり合えないよ。君は僕と元から繋がってるんだよ。今度マンションの下まで行くね。僕の手作りのプリンを一緒に食べようよ。」
その男はすぐに見つかった。48歳の、頭の髪が禿げあがり、腹がてっぷりと出た男だった。木村雅美のマンションの周りをうろついており、どうやら、まだ木村雅美が死んだことを知らなかったらしい。手にはプリンと見られるお菓子が入ったビニール袋を持っていた。
その男は警察署の取調室でこう言った。
「ILLYは僕自身なんだ。ILLYのおかげで、毎日会社でムカつく事があっても、やっていけてる。僕の生きる糧なんだ。ただ、ILLYが地球上に存在しているだけで、幸せだし、僕は生きていける。ILLYは僕とたくさん共通点があって、例えば人見知りだったり、本当は寂しがりやだったり、少し神経質なところだったり、血液型もO型で、誕生日も3月だし。僕が一番ILLYのこと、分かってあげられる。前世で一緒だったのに、きっと現代で別々に生まれてしまったんだと思う。
でも、この前、他のリスナーに愛してるって言ってて、許せないと思った。僕が一番、ILLYのこと知ってるし、一番長いファンだと思うんだ。その僕を差し置いて、許せない。ILLYは僕の気持ちを一番に考えるべきなんだ。だから、ILLYの好きなプリンを一緒に食べて、僕と一生を共にする約束をしようと思って。ILLYに何かあったんですか?刑事さん、お願いだから、ILLYに会わせて下さい!」
赤井は困り果ててしまった。生きる糧を失った彼は、今後どうやって生きていくのだろう。
「何だ?この12月4日の配信?」
どういう意味なんだろう。いつもの配信の様子と違う。なんでそんなに買ってくれと叫ぶんだ。第一、購入期限は12月1日の配信の日だけじゃないのか?
青いっていうのは、髪の色のことか?
いかが?って、散々購入勧めてたのに、まだ売ろうとしているってことか?しかも、なぜ片言なんだ?
というか、それより、なぜこんな普通の見た目の子が人気なんだ?
白石が自信を持って言った。
「ILLYこと、木村雅美もこの事件の被害者っすよね。しかも、木村雅美は内臓もやられてる検体ですね。犯人は相当、恨みを持っていそうですよね、こんな殺し方。まぁ、美人だから、男関係も激しそうっすね。」
「あぁ、そうだな。」
赤井は上の空で返事をした。
「僕もちゃんと事件のこと、考えてるんで。犯人は、きっとILLYの熱狂的ファンっすね。好きになりすぎて、想いが伝わらず、自分の物にならないなら殺したくなっちゃう、的な。ありません?そんなこと。
まぁ、赤井さんは、愛妻家で幸せそうなんで、無いっすか。
ところで、赤井さんは、いいっすよね。背も高くて、イケメンだし。僕、ミスしてばっかりで青木さんから毎日怒鳴られてますよ。青木さん、いつも赤井さんのこと、褒めるんっすよ。
仕事も僕と違って出来るし、奥さんも美人で、美男美女で最高だよなって。そういえば、僕、初めて赤井さんに会った時、同期かなって思ったんすよ、すみません。赤井さん、シュッとしてるから、若く見えますし。本当は、一回り以上も離れてるのに。聞いてびっくりしましたよ。
ねぇ、赤井さん、聞いてますか?」
依然として、分からないことだらけだ。
殺人事件なら、一斉に大量殺人した犯人は、洗脳でもして殺害したというのか?いや、そんな馬鹿な。
その後、木村雅美の遺体の第一発見者である、実の姉が、マンションの近くで黒いフードを被った男が度々見かけたと証言した。木村雅美のことをしつこくつけ回し、木村雅美本人から警察に相談があった。白石の言う通り、ストーカーの仕業か?
捜査本部は、黒いフードの男を重要参考人として捜査することを決定した。
事件資料として、押収した木村雅美のパソコンのメールの履歴から、複数回、脅迫とも取れる文面の内容が見つかった。
「僕だけが、本当のILLYを知っている。君には僕しかいないんだ。」
「君の住所も僕はずっと前から特定してるよ。僕のこと、舐めてもらっちゃ困るな。僕だけのILLY。」
「君が整形してることを僕は知ってるよ。君の小学校の卒業アルバムを手に入れたよ。雅美、目も鼻も顔の輪郭も結構イジってるんだね。君のリスナーにバラしちゃおっかな?天然美人で売ってるのに、大丈夫かな?」
「今日、コンビニでプリンを買っている君を、隣の棚から見ていたの、気付いてくれた?相変わらず甘い物が好きなんだね、雅美。」
「僕と暮らそう。君は僕としか分かり合えないよ。君は僕と元から繋がってるんだよ。今度マンションの下まで行くね。僕の手作りのプリンを一緒に食べようよ。」
その男はすぐに見つかった。48歳の、頭の髪が禿げあがり、腹がてっぷりと出た男だった。木村雅美のマンションの周りをうろついており、どうやら、まだ木村雅美が死んだことを知らなかったらしい。手にはプリンと見られるお菓子が入ったビニール袋を持っていた。
その男は警察署の取調室でこう言った。
「ILLYは僕自身なんだ。ILLYのおかげで、毎日会社でムカつく事があっても、やっていけてる。僕の生きる糧なんだ。ただ、ILLYが地球上に存在しているだけで、幸せだし、僕は生きていける。ILLYは僕とたくさん共通点があって、例えば人見知りだったり、本当は寂しがりやだったり、少し神経質なところだったり、血液型もO型で、誕生日も3月だし。僕が一番ILLYのこと、分かってあげられる。前世で一緒だったのに、きっと現代で別々に生まれてしまったんだと思う。
でも、この前、他のリスナーに愛してるって言ってて、許せないと思った。僕が一番、ILLYのこと知ってるし、一番長いファンだと思うんだ。その僕を差し置いて、許せない。ILLYは僕の気持ちを一番に考えるべきなんだ。だから、ILLYの好きなプリンを一緒に食べて、僕と一生を共にする約束をしようと思って。ILLYに何かあったんですか?刑事さん、お願いだから、ILLYに会わせて下さい!」
赤井は困り果ててしまった。生きる糧を失った彼は、今後どうやって生きていくのだろう。