ある週刊雑誌の記事

「令和に羅生門の老婆現れる

令和6年12月初旬、全国の30人弱の女性が一斉に殺される事件が発生!取材によると、死因は公表されていないが、発見時、被害者は全員、頭の毛が無くなっている模様。犯人は、エクステに使うつもりか、髪の毛フェチなのか、詳細不明。コメンテーターが、令和の羅生門の老婆のようだと、SNSでコメント。この事件を受けて、警察は特別捜査本部を立ち上げている。」

青木刑事が白石に怒鳴っていた。
「何だ!この記事は!
白石、お前、第一発見者に、被害者の遺体の状態を口止めしておかなかったのか?これは殺人事件かもしれんのだぞ。犯人しか知らない情報を漏らしたら、捕まるもんも捕まらんぞ!」 
「はい、申し訳ございませんでした。再度、確認して口止めしておきます。」
「全員だぞ!全員!」
白石は溜め息をついた。

白石は第一発見者に再度、電話をかけた。ほとんどの人が凄惨な場を発見したことで、心的ショックを受けており、口を閉ざし、あまり事件のことを話したがらなかった。

数十件電話した後、比較的、被害が少ない状態で亡くなっていた方の大家が、週刊誌の取材に答えていたことが分かった。

「あら〜、この前の刑事さんじゃないの〜。週刊誌の取材?遺体の状態を訊かれましたよ、はい。頭の上部が無くなっていた、とは答えましたよ。でも、この記事によると、頭の上部を髪の毛だけだと聞き間違えたみたいですね。うふふふ。頭蓋骨の上半分が無くなっていた、って答えた方が齟齬が無くて良かったかしらね。うふふふ。え〜、言っちゃまずかった?だって、あの亡くなった人、何ヶ月も家賃滞納してたんで、早く他の人に変わって欲しいと思ってましたの〜。ちょうど良かったわ〜。でも事故物件になっちゃうとは思ってなかったですよ。うふふふ。」
大家の含み笑いを聞いて、白石は、意外と近くにサイコパスはいるもんだと、震え上がった。