「あっ!」
机の端に積み上げていた本に肘が当たり、雪崩のように落ちていく。
ドサドサ。
(拾いたくないな〜、、、、面倒臭いし)
床に散乱した本を見る。
「片付けるか、、、、」
本を拾い集め、本棚に並べていく。
片付けているうちに、懐かしい物を見付けた。
白色の画用紙にラミネートで貼っつけられたしおり。
中には四葉のクローバー。
小さい頃、何処かで見付けて来たんだっけ?あまり覚えていないや。
四葉を見付けると願いが叶うと聞くけれど、私は何をお願いしたんだっけ?そしてそれは叶ったのかな?
、、、、思い出せない。
ついさっきまでしおりの存在を忘れていたのだから、願いを思い出せないのは当たり前なのだが、気になる。
「う〜ん、、、、」
いくら頭を捻っても思い出せない。
まぁ、いっか。

春休みが過ぎ、桜が舞い散る四月。
真新しい制服に身を包めば少し大人に近付いた気分。
クラスには知らない子が沢山いた。
緊張し過ぎてお腹痛くなってきた、、、、。
「ね、名前何ていうの?私は神宮寺姫奈」
「え、あの、、、、」
前の子が話しかけてくれているのに、緊張して声が出ない。
「え?」
「新美、、、、陽茉莉です、、、、」
「陽茉莉ちゃん!よろしくね!!」
姫奈ちゃんはいらゆる一軍女子というやつで、すぐに男女共に友達になっている。
友達のいない私とは正反対の子。
ぎゅっと、根付を握り締めた。
「陽茉莉ちゃん、帰ろ!」
姫奈ちゃんを中心にした数人グループが声をかけていた。ぼーっとしていて気が付かなかった。
「え、、、、う、うん」

「それでこの前、彼氏がさー」
「え〜!何それー!」
「てか、カラオケ行かない?」
「良いね!行こ行こ」
「陽茉莉ちゃんも行くよね?」
「え?」
「カラオケ!勿論行くっしょ?」
カラオケ。初めて誘われた、、、、。
良いのかな?
でも、せっかく誘ってくれているし、、、、。
「うん。行きたい」
初めて友達と入ったカラオケ。
私は聞く専門だからの歌わない。それでも、楽しかった。
『良かったね、陽茉莉ちゃん』
「うん!」
そう返すと、「陽茉莉ちゃん?どうしたの?」と不思議そうに姫奈ちゃんに聞かれた。
き、聞かれてた!?やばい、どうしよう。絶対変な子って思われるよね。
「な、何でもないよ」
「ふ〜ん」
お手洗いから戻ってきた時だった。
「姫奈ちゃん、新美さんのことどう思っての?」
扉を開けようとしていた手が止まった。
「ん〜、、、、」
考えているようだ。
「てか、さっき新美さん。さっき誰と話していたんだろうね。いきなりうん!って」
「あ、それな〜」
「ちょっと可笑しいよね」
「まさか、厨二病とか!?」
「えー何それー!」
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。
手が震える。
やっぱり、私に友達なんて、、、、。

「やぁ、陽茉莉ちゃん!、、、どうしたの?」
自分の部屋で布団に包まっていると、陽気な声が聞こえた。
今日もいきなり現れるノアさん。
もう慣れた。
「ノア、さん、、、」
「泣いているよ。辛いことあった?それか、何処か痛い?」
「平気、、、」
今はそっとしてほしい。
高校生になってからの友達だったのに、、、。
「神宮寺姫奈、だっけ?」
「!!何で、、、」
「僕は何でも知っているよ、君のことならね」
「、、、、」
「陽茉莉ちゃん。今日はもうおやすみ、十一時過ぎだよ」
「眠たくない、、、、」
「なら、陽茉莉ちゃんが寝るまで傍で子守唄を歌っているね」
「子守唄、、、、?」
「絵本の読み聞かせの方が良いかい?」
何処からか絵本を出す。
何で子守唄か読み聞かせの二択なんだろう。
「、、、、大丈夫、、、、」
「そっか、、、、。無理しないでね」
「、、、、うん」
小さく答え、目を閉じた。