わたしはタダの侍女ではありません

 分解! で、湯浴み場の床を崩していき、浴槽になる大きさになったら砂となった床を集結。浴槽に形作り、凝結で固めた。

 これは試し。下作りね。どんな形になるか視覚的に確かめるためにしたものよ。

「う~ん。釜をつけるとなると高くしないとダメかしらね?」

 となるとかさまししないといけない──いや、釜を低くしてもいっか。そのほうが楽だし。

 一旦外に出て分解で掘っていき、分解、集結、凝結で釜を作ってみる。

「浴槽の大きさを考えると釜は大きくしないとダメね」

 そうなると煙突を高くしないとならないか。

 何度か繰り返し、頭の中で組み立てながらお風呂を作っていく。

 お昼には満足いく形にはなった。けど、ここからが微調整しないとならない。下女が湯を沸かしやすいようにしながら侍女たちが快適に入れるようにしなくちゃならないからね。

「お昼にしましょうか」

 ポカーンな下女たち。まあ、魔法に触れてこなかった者には唖然とすることばかりでしょうよ。

「じゃあ、先にいくわね」

 久しぶりに頭を使いながら魔法を使うのはお腹が空くわ~。

 下女たちも我を取り戻す時間が必要でしょうと、先に失礼させてもらい奥食堂へと向かった。

 しっかり食べて食後のお茶を飲みながら魔力を回復。頭を休ませた。

「シャルロット」

 と、呼ばれて意識を覚醒させると、侍女長様が向かいの席にいた。

「失礼しました。なにか呼びましたでしょうか?」

 無防備にはしてなかったけど、周りの声が遠くなっていた。なにか言われてても聞こえなかったかもしれないわ。

「休んでいるところごめんなさい。進捗状況はどうかを聞きたいかっただけよ」

「大体の形はできましたので、あとは細かい調整をしていきます。夜には使えるようにはできると思いますが、様子を見るために明日の午前中までやらせていただけませんでしょうか?」

「問題でも?」

「いえ。念のためです。館の地盤がどうなっているかもわかりませんから」

 お風呂って意外と重いのよね。ましてや何人も入るとなれば地盤沈下しても不思議ではない。まあ、半日でわかるものではないけど、一日湯を入れてれば傾きがないかを確かめておくべきでしょう。

「地盤、ですか?」

「わたしは館が建つ前のことは知りませんが、昔、王都は地揺れに襲われたと、祖母に聞いたことがあります。そんな地だと地盤が弱くなっている場合があるそうですよ。その確認ですね」

 まあ、最初に調査しろって話なんだけど、そんな本格的な調査、わたし一人ではできない。精々が湯浴み場くらいだわ。

「そう言えば、前の侍女長様からそんな話を聞いたことがあります」

 前の侍女長。うっすらと記憶がある。おばあちゃんな人で、にこやかにしている顔が印象的な人だったわね。

「奥様に相談してみます」

 相談してなんとかなるものなのかしらね? 自然災害は人の手では操れないもの。逃げるしかないわ。

 まあ、それでも対応できるようにするのがおじ様やおば様の仕事。がんばってくださいませ。

 食休みが終わればわたしもお仕事再開、する前に歯を磨いておきますか。

 そう言えば、あの古臭い洗面所もどうにかしたいものよね。下女がよく手入れしているとは言え、城の洗面所からしたら汚すぎる。水も各自で汲んで鏡は持参。歯ブラシも木の繊維を柔らかくして棒に巻いただけだし。

 まあ、わたしはすべて部屋でできるからいいけど、横でやられると気になってしょうがないのよね……。

 洗面具は各自用意するもの。わたしがあげるのも他の者に示しがつかないからがまんするしかないのよね。

 ……まさか、館で売るとかできないしね……。

 部屋で歯を磨いてから湯浴み場に向かうと、下女たちは揃っていた。

 ほんと、下女も大変な仕事よね。わたしにはできない職業だわ、いや、やりたいと言ってもやらせてはくれないでしょうけど。

「では、始めましょうか」

 とは言っても下女たちは見てるしかできないんだけどね。なにもせず、ただ見てるだけも拷問かもね。

 何度かの調整で浴槽は完成。釜口も二つ作り、奥に煙が逃げるようにして煙突は屋根の上まで伸ばした。

「あ、そうだ。侍女長様に捨てても構わない剣か使わない金属片がないか尋ねてきてもらえる? 掻き出し棒のことを忘れていたわ。それで作るから」

 なにを言われたかわからない三人だけど、年長のハーティムが真っ先に我を取り戻し、畏まりましたと一礼して湯浴み場を出ていった。

 その間に排水溝と排水口を設置していく。

「シャルロット」

 と、なぜか侍女長様を連れて戻ってきた。

 ……一番大変なのは侍女長様かもね……。

「どう言うことですか?」

「木を燃やせば灰が出ます。その灰を掻き出すための棒を金属で作りたいんです。木では燃えてしまいますから」

 と言うことだけなのに、侍女長様が出てくるほどでもないのだと思うのだけれど?

「そうですか。それは職人に頼みます。他に必要なら紙に書いてわたしに出しなさい。それまでは棒でやらせなさい」

 なぜ? とは思ったけど、なんかはなしがややっこしくなりそうな気がしたので素直に従っておいた。

「なにかあるならすぐに連絡しなさい」

「畏まりました」

 なんだか判断が難しいけど、なにか悩むことができたら連絡しましょう。悩まなければそのまま続行、ってことで。

 よし。完成まであとちょっと。がんばりますかね!