わたしはタダの侍女ではありません

 夕食時間が終わる前にやっとシャンプー作りが終わった。

「ハァー。シャワー作りに気が散って集中できなかったわ」

 まあ、奥食堂は一日中利用可能だなんだけど、夜中は出来合いのものを配るだけ。ちゃんと夕食時間にいかないと温かいものが出ないのよね。

 道具と魔法陣を片付け、奥食堂へと向かった。

 やはり時間が時間なだけに奥食堂には下女が一人しかおらず、裏厨房も片付けに入っていた。

「遅くにごめんなさい。夕食、もらえるかしら?」

 片付けなので料理人は揃っており、まだ竈に火は入っていた。

「今日は遅かったですね。お仕事でしたか?」

「いえ、まあ、仕事と言えば仕事のような、なんとも言えない状況でした」

 どう言葉にしていいかわからず濁してしまった。

「そうですか。お体を大事にしてくださいね。すぐにご用意致します」

 あっさりと流してくれ、笑顔で夕食を用意してくれる料理人さん。侯爵家では働く人は料理人でも優秀なのね。

「お代わりはあるので遠慮なく言ってください」

 わたしがたくさん食べることはもう知れ渡っているようで、多目に作ってくれているそうだ。

 ……食費で迷惑かけてないかな……?

 まあ、働きで返していけばいっか。おば様、容赦なく仕事を回してくるんだから。

 夕食をゆっくりいただき、食後のお茶で一息。あーシャワーのこと、どう書けばいいんだろう? 

 そんなことをぼんやりと考えていると、マリッタが現れた。

「あら、まだ休んでなかったの?」

 日勤の下女はもう休んでる時間じゃないっけ?

「はい。今日からシャルロット様つきの下女となりました」

 わたしつき? 特定の侍女に下女なんてついたっけ? いや、ついてた侍女もいたわね。でも、かなり身分のある侍女だけで、それ以外はついてなかった。もしかしてお目付け役?

「そうなの。でも、お休み中なんだからついてる意味あるの?」

 侍女長様からなんて言われてるのかしら?

「いえ、休み中でも側にいろとのことでした」

 お目付け役じゃなく監視でした! いや、どちらも同じだったわね……。

「大変ね、あなたも」

 仕事とは言え、わたしの側にいなくちゃならないんだから。いや、わたし、監視されるほど問題起こしてないよね!?

「いえ。とても名誉なことです」

「……そ、そうなの。名誉と思われてこちらも嬉しいわ……」

 自分で言ってどう嬉しいかはわからないけどね。

「それと、侍女長様より部屋を移るようご指示がありました」

「部屋を移る?」

 え? なに? なにが起こっているの? 説明ください!

「はい。二人部屋に移るよう侍女長様がおっしゃられました」

「……侍女長様、よほどマリッタを信頼してるのね……」

 二人部屋ってことは、マリッタと同室になれと言うこと。つまり、わたしのことを聞かされたってことだわ。

「シャルロット様つきとしてがんばらせていただきます」

 わたしについてなにするかはわからないけど、まあ、がんばってちょうだい。わたしに拒否することはできないんだからね……。

「部屋はすぐに移るの?」

「はい。部屋は整えてありますので」

 まあ、荷物らしい荷物はない。あるのは鞄一つ。シャンプー作りの道具させ片付けてしまえば移るのも苦ではない。が、なんだろう、この納得いかない感じは? これが働くと言うことなの?

 なんて考えは放り投げ、自室に戻ってお片付け。鞄一つ持って新たな部屋へと案内してもらった。

 新しい部屋は三階。二人部屋と言うより四人部屋っぽかった。

「広くない?」

「はい。元は四人用の部屋でしたが、シャルロット様が作業しやすようにとここにしたと侍女長様より聞いております」

 変な改造される前に広い部屋へと移された感じかな?

「仕事着や私服は家具に仕舞ってください。定期的に洗濯しますので」

 服が何着も入りそうな家具やなにをそんなに入れるんだろうかと言うタンス。なにもない本棚。机と椅子。姿見の鏡まである。

「侍女の部屋としては一般的なのかしら?」

 なにか、かなり優遇されてる感じがするわ。

「侍女様は基本、二人部屋ですが、似たような仕様です」

 ふ~ん。まあ、侯爵家の侍女は身分が高いし、こんなものだと納得しておきましょう。わたしにはどうしようもないんだからね。

 なんにせよ、家具があるなら鞄から出しておきますか。使わないってのもなにか間抜けな感じがするしね。

 と言ってもそんなに服はない。侍女服、私服、お出かけ用、あとは下着が四組。タオルが数枚。必要なくない? って考えを蹴り飛ばしておいた。そのうち増えるでしょうよ。

「シャルロット様。洗濯物はこの籠に入れてください。洗濯する者に渡しますので」

「洗濯はわたしがするわ。わたしの下着は特殊だから」

 わたしが使う下着は異次元屋から買っていて、型崩れしないよう針金が入ってたり特殊繊維でできてたりする。桶でゴシゴシとはいかない。下女には任せられないわ。

「まあ、他のものはお願いするわ」

 タオルとか内着なら洗ってもらいましょう。すべてを洗うと時間もかかるしね。

「マリッタはもう休んでいいわよ。わたしは明日までシャワーのこと書かなくちゃならないから」

 よくわからないし、改造する絵でも書いて、あとは適当に描いとけばいっか。

 机に向かい、紙に書き出した。