朝が来た。
「……眠い……」
クッキーを夜中まで作り、おば様への手紙──ではなくメールを送り、怒られたり呆れられたりと、ベッドに入る頃には日付を越えてたわ。
あ、この世界にも時計はありますよ。ただ、一般的にはなってないけどね。
ゆっくりと起き上がり、縮んだ体を大きく伸ばした。ふぅ~。
「……シャワーを浴びたいな……」
毎日していることができないのがこんなに辛いとは思わなかったわ。
まあ、ないのなら文句を言ってもしかたがない。あるもので工夫さましょう。
服を脱いで裸になり、火と水の指輪でお湯の球を空中に作り出して頭を突っ込ませる。ブクブクブク。
お湯の球を回転させながら、頭から胸に、腹、脚と下げていく。
お湯を浴びただけのことだけど、眠気はなくなり、気分がすっきりした。
「……お湯の処理、どうしようかしら……?」
部屋でやるものじゃなかったわね。
しょうがないので、窓から外へポイ。庭木の糧となれ~。
「水を捨てるものを用意しなくちゃね」
髪や体を渇かしながら処理の方法を考え、新しい下着に旅用の服に着替えた。
「洗濯も考えないとな~」
アース世界の下着は雑に洗うと崩れちゃうし、お風呂より難しいかもしれないわね~。
手鏡を四つ、空中に浮かべ、ブラシで髪をとかしていると、ドアがノックされた。
「はぁ~い。ど~ぞ~」
まだ途中なので入ってもらうことにした。どうせナタリーさんでしょうからね。
ドアが開き、読み通りナタリーさんが入って来た。
「おはようございます。お目覚めになられてたんですね」
「いつもよりは寝過ごしてしまいましたけどね」
ナタリーさんも同じくらい起きてたのに、身なりはしっかりとしており、眠気など欠片もなかった。
「朝食ですか?」
「いえ。シャーリー嬢を起こしに来たのですが、不要のようでしたね」
まあ、夜遅くまで起きてたしね、心配になってもしかたがないわね。
「用意が調いましたら食堂へお越しください」
忙しいのか、そう言って下がってしまった。
まっ、わたしだけに構ってられないものね。ご苦労様です。
満足いくまで髪をとかし、風で床に落ちた髪の毛や埃を吸い取り、火の指輪で燃やし尽くす。灰は外へポイ。風に吹かれてさようなら~。
布団を綺麗に直し、落ちている髪の毛がないかを確認。異次元屋で買った除菌剤をシュッシュッと噴きかける。
「こんなものかしらね」
男爵家の侍女さんか下女さんがまた掃除するでしょうけど、借りたものを綺麗にして返すのがわたしの信条。ごめんあそばせ、だ。
誰がやるかわからないけど、感謝の証しとして昨日焼いたクッキーと感謝の紙をテーブルに置いておく。
鞄をつかんで部屋を出て食堂に向かった。
ガルズ様一行が旅立つからか、男爵家の方々はとっくに起きており、兵士さんたちも忙しくしていた。
食堂にはまだ誰もいず、どうしていいかわからないので昨日座った席に腰を下ろした。
しばらく待っていると、男爵家の侍女さんがやって来て、お茶を出してくれた。
「ごめんなさいね、シャーリー嬢。バタバタしちゃって」
男爵夫人がやって来て、そう謝罪された。
「いえいえ。お気になさらず。手伝えることがあったら遠慮なくおっしゃってくださいませ」
まあ、わたしが出るとさらに忙しくなると思いますけどね。
すぐに男爵様、ガルズ様たちがやって来て、すぐに朝食となった。
「すまないな、シャーリー嬢。忙しくて。遅れを取り戻したくて早い出発したいのでな」
「お気になさらず。旅は大変ですからね」
普段できることができない大変さを知りました。文句など言えるはずもないわ。
朝食も会話らしい会話もなく終え、食後のお茶もなく出発することとなった。本当に忙しないわね。
玄関に向かい外に出ると、馬車が四台、並んでいた。
先頭の馬車は幌馬車。二番目は豪華な馬車。三番目は質素な馬車。四番目は大量の荷物を積んだ馬車だった。
三十人近くいる兵士さんは馬に跨がり、六人いる騎士様は玄関前に左右に分かれて並んでいた。
男爵家の兵士さんや騎士様も並んでおり、なにか催しのような感じだった。
「ダイグン殿。世話になった」
ガルズ様一行と男爵様夫婦が向かい合い、別れの挨拶を交わしている。
わたしの立ち位置ここでいいの? と思いながらわたしらガルズ様と奥様の間に立ってにこやかと笑みを浮かべる。
「シャーリー嬢もお気をつけてな」
「はい。短い間でしたが、お世話になりました。侯爵夫人からお礼の手紙を送らせていただきます」
おば様からお礼の手紙は出すから伝えてくれと言われたのよね。
「それは畏れ多いことですな。よろしくお伝えください」
「はい。ご壮健くださいませ」
一礼して一歩下がった。わたしはここまでと示すために。
ガルズ様と男爵様が握手を交わし、馬車へと乗り込んだ。
わたしは、ナタリーさんと同じ侍女さんが四人いる馬車だった。
……あら? わたしはてっきりガルズ様と同じ馬車かと思ってたわ……。
侍女さんたちと同じ馬車に不平はないけど、ガルズ様はなにを考えているのかがわからなくてモヤっとするわ~。
六人がけの真ん中に座ったので、男爵様方の見送りに応えることはできなかったけど、まあ、気持ちを表すために一礼をしておく。
馬車が出発。わたしの旅が始まった。
さて。どんな旅になるのかしらね。ちょっとだけワクワクするわ。
「……眠い……」
クッキーを夜中まで作り、おば様への手紙──ではなくメールを送り、怒られたり呆れられたりと、ベッドに入る頃には日付を越えてたわ。
あ、この世界にも時計はありますよ。ただ、一般的にはなってないけどね。
ゆっくりと起き上がり、縮んだ体を大きく伸ばした。ふぅ~。
「……シャワーを浴びたいな……」
毎日していることができないのがこんなに辛いとは思わなかったわ。
まあ、ないのなら文句を言ってもしかたがない。あるもので工夫さましょう。
服を脱いで裸になり、火と水の指輪でお湯の球を空中に作り出して頭を突っ込ませる。ブクブクブク。
お湯の球を回転させながら、頭から胸に、腹、脚と下げていく。
お湯を浴びただけのことだけど、眠気はなくなり、気分がすっきりした。
「……お湯の処理、どうしようかしら……?」
部屋でやるものじゃなかったわね。
しょうがないので、窓から外へポイ。庭木の糧となれ~。
「水を捨てるものを用意しなくちゃね」
髪や体を渇かしながら処理の方法を考え、新しい下着に旅用の服に着替えた。
「洗濯も考えないとな~」
アース世界の下着は雑に洗うと崩れちゃうし、お風呂より難しいかもしれないわね~。
手鏡を四つ、空中に浮かべ、ブラシで髪をとかしていると、ドアがノックされた。
「はぁ~い。ど~ぞ~」
まだ途中なので入ってもらうことにした。どうせナタリーさんでしょうからね。
ドアが開き、読み通りナタリーさんが入って来た。
「おはようございます。お目覚めになられてたんですね」
「いつもよりは寝過ごしてしまいましたけどね」
ナタリーさんも同じくらい起きてたのに、身なりはしっかりとしており、眠気など欠片もなかった。
「朝食ですか?」
「いえ。シャーリー嬢を起こしに来たのですが、不要のようでしたね」
まあ、夜遅くまで起きてたしね、心配になってもしかたがないわね。
「用意が調いましたら食堂へお越しください」
忙しいのか、そう言って下がってしまった。
まっ、わたしだけに構ってられないものね。ご苦労様です。
満足いくまで髪をとかし、風で床に落ちた髪の毛や埃を吸い取り、火の指輪で燃やし尽くす。灰は外へポイ。風に吹かれてさようなら~。
布団を綺麗に直し、落ちている髪の毛がないかを確認。異次元屋で買った除菌剤をシュッシュッと噴きかける。
「こんなものかしらね」
男爵家の侍女さんか下女さんがまた掃除するでしょうけど、借りたものを綺麗にして返すのがわたしの信条。ごめんあそばせ、だ。
誰がやるかわからないけど、感謝の証しとして昨日焼いたクッキーと感謝の紙をテーブルに置いておく。
鞄をつかんで部屋を出て食堂に向かった。
ガルズ様一行が旅立つからか、男爵家の方々はとっくに起きており、兵士さんたちも忙しくしていた。
食堂にはまだ誰もいず、どうしていいかわからないので昨日座った席に腰を下ろした。
しばらく待っていると、男爵家の侍女さんがやって来て、お茶を出してくれた。
「ごめんなさいね、シャーリー嬢。バタバタしちゃって」
男爵夫人がやって来て、そう謝罪された。
「いえいえ。お気になさらず。手伝えることがあったら遠慮なくおっしゃってくださいませ」
まあ、わたしが出るとさらに忙しくなると思いますけどね。
すぐに男爵様、ガルズ様たちがやって来て、すぐに朝食となった。
「すまないな、シャーリー嬢。忙しくて。遅れを取り戻したくて早い出発したいのでな」
「お気になさらず。旅は大変ですからね」
普段できることができない大変さを知りました。文句など言えるはずもないわ。
朝食も会話らしい会話もなく終え、食後のお茶もなく出発することとなった。本当に忙しないわね。
玄関に向かい外に出ると、馬車が四台、並んでいた。
先頭の馬車は幌馬車。二番目は豪華な馬車。三番目は質素な馬車。四番目は大量の荷物を積んだ馬車だった。
三十人近くいる兵士さんは馬に跨がり、六人いる騎士様は玄関前に左右に分かれて並んでいた。
男爵家の兵士さんや騎士様も並んでおり、なにか催しのような感じだった。
「ダイグン殿。世話になった」
ガルズ様一行と男爵様夫婦が向かい合い、別れの挨拶を交わしている。
わたしの立ち位置ここでいいの? と思いながらわたしらガルズ様と奥様の間に立ってにこやかと笑みを浮かべる。
「シャーリー嬢もお気をつけてな」
「はい。短い間でしたが、お世話になりました。侯爵夫人からお礼の手紙を送らせていただきます」
おば様からお礼の手紙は出すから伝えてくれと言われたのよね。
「それは畏れ多いことですな。よろしくお伝えください」
「はい。ご壮健くださいませ」
一礼して一歩下がった。わたしはここまでと示すために。
ガルズ様と男爵様が握手を交わし、馬車へと乗り込んだ。
わたしは、ナタリーさんと同じ侍女さんが四人いる馬車だった。
……あら? わたしはてっきりガルズ様と同じ馬車かと思ってたわ……。
侍女さんたちと同じ馬車に不平はないけど、ガルズ様はなにを考えているのかがわからなくてモヤっとするわ~。
六人がけの真ん中に座ったので、男爵様方の見送りに応えることはできなかったけど、まあ、気持ちを表すために一礼をしておく。
馬車が出発。わたしの旅が始まった。
さて。どんな旅になるのかしらね。ちょっとだけワクワクするわ。