「はぁ~。なんか疲れた」
部屋へ案内してくれた侍女のレーラさんが消えて、一人になったらベッドに倒れ込んだ。
「さすが男爵家のベッド。冒険者相手の宿とは違うわ」
城のベッドには落ちるけど、最低を知って最高を知った感じね。
「……このまま寝ちゃいそう……」
そんな誘惑に負けてしまいそうになるが、さすがに昼間から寝ると言うのははしたないわよね。あの女、昼間から寝てるんだぜ、とか思われるのも嫌だし。
気合いを入れてベッドから起き上がる。
旅用の服から城で着ていた私服へと着替える。旅用ではゆっくりできないからね。
レーラさんが夜までゆっくりしてくださいと言ってたから、夜までは誰も来ないでしょうと、異次元屋で買ったインスタントココアとカップ……がない。
「……買うの忘れた……」
あれだけ酷い目に合ったのにまだ城にいる感覚でいる自分に情けなくなる。もう泣きたい……。
「なんて頭を抱えててもしょうがないわね」
泣いて事態が変わるならいくらでも泣くけど、変わらないのなら動くしかないわ。
「買い物にでかけましょうか」
お金は充分にある。出発前に必要なものを揃えておきましょうかね。
「着替えは……いっか。面倒だし」
町の中なら魔物も襲って来ることもないでしょうし、暴漢の一人や二人なんとかなる。まだ魔力は十二分にあるしね。
旅用の服からお金が入った小袋を出し、普段着の異空間ポケットへと入れる。
「今度から異空間ポケットにも入れておかないとダメね」
前にスカートの横にあるポケットを異空間化させて物を入れてたんだけど、城で暮らしていると必要なものは決まった場所に置いておくほうが楽で、自然と異空間ポケットは空になっちゃったのよね。
部屋から出ると、年配の侍女さんが立っていた。
「どうかなさいましたか?」
それはこちらが聞きたいですが、他家の仕事に口出すのも失礼かと笑顔を見せた。
「旅に足りないものを買いに出て来ますね」
「少しお待ちください。主に連絡して来ますので」
と、部屋へと戻された。なぜに?
なにがなにやらわからないでいると、ガルズ様たちがやって来た。
「シャーリー嬢、買い物に出たいとか聞いたが?」
「え、あ、はい。足りないものがありましたので」
いったい何事よ? なにか一大事でも起こったような勢いですけど……。
「そ、そうですか。わかりました。ルイドフィーを呼べ」
と、銀髪の若い騎士様が現れた。
「ルイドフィー。シャーリー嬢の護衛をしろ」
「はっ。シャーリー嬢。ルイドフィー・マイジオと申します。よろしくお願いします」
二十代前半かしら? 騎士としての威厳や雰囲気はなく、どこか役者っぽい感じね。
「あ、はい。シャルロット・マルディックと申します。こちらこそよろしくお願いします」
と、ルイドフィー様と兵士四人、そして、侍女のレーラさんと買い物に出かけることになってしまった。え? なんなの、いったい?
「シャーリー嬢。どこへ向かいますか?」
「あ、えーと、雑貨など売っているお店にいこうかと思います」
「わかりました」
なにが? と問う勇気もなく、レーラさんの指示のもとライヤード商会にやって来た。うん? え? なぜに?
「いらっしゃいませ、シャーリー嬢」
中へ通され、魔法の指輪を売ったときと同じ部屋に招かれた。
長椅子にわたしだけ座り、背後にルイドフィー様とレーラさんが控えている。ほんと、誰かこの状況を説明してくれないかしら?
「あ、はい。どうもです」
「今日はいかがなされましたか?」
なにか当たり前のように受け入れているサナリオさん。これは当たり前のことなのですか?
「実は旅に必要な雑貨が欲しいと思いまして」
わからないときは流れに身を任せるしかないと、笑顔で口にした。
「旅に必要な雑貨ですか。具体的にどのようなものですかな?」
具体的に、か。
「そうですね。お茶の道具、料理の道具、裁縫道具、大きさの違う籠、衣装箱、布各種、あと、大きな盥が欲しいですね」
急に言われると、それしか思い浮かばないわね。まあ、足りなければ途中の町で買い足せばいいでしょう。
「……それは、旅に必要なのですか?」
なぜか首を傾げるサナリオさん。なにか変かしら?
「はい。必要です」
「わかりました。すぐに用意しましょう」
用意? って、ライヤード商会はそれを全部扱ってるの? 何屋さんの、ここって?
「我が商会は男爵様御用達の商会です。我が商会が呼びかければ取り扱っている店がすぐ集まります」
御用達か。それはおば様に聞いたことがあるわ。貴族は店にいくのではなく呼びつけると。
わたしとしてはお店を見て回りたいのだけれど、男爵令嬢としての立場ならそうなるの、かな?
「とは言え、時間がかかるので、時間潰しに我が商会の商品を御覧になってはいかがでしょうか? 男爵家御用達としていろいろ取り寄せておりますよ」
時間潰しか。まあ、お茶を飲む間に、ってわけじゃなさそうだし、遠慮なく見せていただきましょうか。
「それは楽しみです」
「ありがとうございます。では、すぐに用意致します」
はいと答え、出されたお茶をいただきながら待つことにした。
部屋へ案内してくれた侍女のレーラさんが消えて、一人になったらベッドに倒れ込んだ。
「さすが男爵家のベッド。冒険者相手の宿とは違うわ」
城のベッドには落ちるけど、最低を知って最高を知った感じね。
「……このまま寝ちゃいそう……」
そんな誘惑に負けてしまいそうになるが、さすがに昼間から寝ると言うのははしたないわよね。あの女、昼間から寝てるんだぜ、とか思われるのも嫌だし。
気合いを入れてベッドから起き上がる。
旅用の服から城で着ていた私服へと着替える。旅用ではゆっくりできないからね。
レーラさんが夜までゆっくりしてくださいと言ってたから、夜までは誰も来ないでしょうと、異次元屋で買ったインスタントココアとカップ……がない。
「……買うの忘れた……」
あれだけ酷い目に合ったのにまだ城にいる感覚でいる自分に情けなくなる。もう泣きたい……。
「なんて頭を抱えててもしょうがないわね」
泣いて事態が変わるならいくらでも泣くけど、変わらないのなら動くしかないわ。
「買い物にでかけましょうか」
お金は充分にある。出発前に必要なものを揃えておきましょうかね。
「着替えは……いっか。面倒だし」
町の中なら魔物も襲って来ることもないでしょうし、暴漢の一人や二人なんとかなる。まだ魔力は十二分にあるしね。
旅用の服からお金が入った小袋を出し、普段着の異空間ポケットへと入れる。
「今度から異空間ポケットにも入れておかないとダメね」
前にスカートの横にあるポケットを異空間化させて物を入れてたんだけど、城で暮らしていると必要なものは決まった場所に置いておくほうが楽で、自然と異空間ポケットは空になっちゃったのよね。
部屋から出ると、年配の侍女さんが立っていた。
「どうかなさいましたか?」
それはこちらが聞きたいですが、他家の仕事に口出すのも失礼かと笑顔を見せた。
「旅に足りないものを買いに出て来ますね」
「少しお待ちください。主に連絡して来ますので」
と、部屋へと戻された。なぜに?
なにがなにやらわからないでいると、ガルズ様たちがやって来た。
「シャーリー嬢、買い物に出たいとか聞いたが?」
「え、あ、はい。足りないものがありましたので」
いったい何事よ? なにか一大事でも起こったような勢いですけど……。
「そ、そうですか。わかりました。ルイドフィーを呼べ」
と、銀髪の若い騎士様が現れた。
「ルイドフィー。シャーリー嬢の護衛をしろ」
「はっ。シャーリー嬢。ルイドフィー・マイジオと申します。よろしくお願いします」
二十代前半かしら? 騎士としての威厳や雰囲気はなく、どこか役者っぽい感じね。
「あ、はい。シャルロット・マルディックと申します。こちらこそよろしくお願いします」
と、ルイドフィー様と兵士四人、そして、侍女のレーラさんと買い物に出かけることになってしまった。え? なんなの、いったい?
「シャーリー嬢。どこへ向かいますか?」
「あ、えーと、雑貨など売っているお店にいこうかと思います」
「わかりました」
なにが? と問う勇気もなく、レーラさんの指示のもとライヤード商会にやって来た。うん? え? なぜに?
「いらっしゃいませ、シャーリー嬢」
中へ通され、魔法の指輪を売ったときと同じ部屋に招かれた。
長椅子にわたしだけ座り、背後にルイドフィー様とレーラさんが控えている。ほんと、誰かこの状況を説明してくれないかしら?
「あ、はい。どうもです」
「今日はいかがなされましたか?」
なにか当たり前のように受け入れているサナリオさん。これは当たり前のことなのですか?
「実は旅に必要な雑貨が欲しいと思いまして」
わからないときは流れに身を任せるしかないと、笑顔で口にした。
「旅に必要な雑貨ですか。具体的にどのようなものですかな?」
具体的に、か。
「そうですね。お茶の道具、料理の道具、裁縫道具、大きさの違う籠、衣装箱、布各種、あと、大きな盥が欲しいですね」
急に言われると、それしか思い浮かばないわね。まあ、足りなければ途中の町で買い足せばいいでしょう。
「……それは、旅に必要なのですか?」
なぜか首を傾げるサナリオさん。なにか変かしら?
「はい。必要です」
「わかりました。すぐに用意しましょう」
用意? って、ライヤード商会はそれを全部扱ってるの? 何屋さんの、ここって?
「我が商会は男爵様御用達の商会です。我が商会が呼びかければ取り扱っている店がすぐ集まります」
御用達か。それはおば様に聞いたことがあるわ。貴族は店にいくのではなく呼びつけると。
わたしとしてはお店を見て回りたいのだけれど、男爵令嬢としての立場ならそうなるの、かな?
「とは言え、時間がかかるので、時間潰しに我が商会の商品を御覧になってはいかがでしょうか? 男爵家御用達としていろいろ取り寄せておりますよ」
時間潰しか。まあ、お茶を飲む間に、ってわけじゃなさそうだし、遠慮なく見せていただきましょうか。
「それは楽しみです」
「ありがとうございます。では、すぐに用意致します」
はいと答え、出されたお茶をいただきながら待つことにした。