「賑やかになってあいつも喜んでるかな」
「だといいんだけど」
珀佳はあれ以来姿を現さない。図書館の本が夜中のうちに移動していることがあるというから、こっそり本を読んでいるかもしれない。
「花楓お姉ちゃん、この字、なんて読むの?」
「どれかなー」
呼ばれた花楓はすぐさまその子どものところへ向かう。
陽乃真はまたイチョウの木を見やる。
和服姿の青年の姿が見えた。彼は陽乃真に軽く会釈をする。
陽乃真が会釈を返すとすうっと姿が消えていく。
「どうしたの? なんかあった?」
イチョウを見つめている彼に、花楓が心配そうにたずねる。
「いや、なんでもないよ」
彼は答えて制帽を被り直す。
青い夏空に蝉の声がうるさく響き渡り、今日も暑くなる予感を漂わせていた。
終
「だといいんだけど」
珀佳はあれ以来姿を現さない。図書館の本が夜中のうちに移動していることがあるというから、こっそり本を読んでいるかもしれない。
「花楓お姉ちゃん、この字、なんて読むの?」
「どれかなー」
呼ばれた花楓はすぐさまその子どものところへ向かう。
陽乃真はまたイチョウの木を見やる。
和服姿の青年の姿が見えた。彼は陽乃真に軽く会釈をする。
陽乃真が会釈を返すとすうっと姿が消えていく。
「どうしたの? なんかあった?」
イチョウを見つめている彼に、花楓が心配そうにたずねる。
「いや、なんでもないよ」
彼は答えて制帽を被り直す。
青い夏空に蝉の声がうるさく響き渡り、今日も暑くなる予感を漂わせていた。
終



