陽乃真は驚いて花楓を見つめたあと、カーっと顔を赤くした。
「そ、そんな、本当に?」
 慌てふためいた陽乃真は自転車を倒してしまい、がしゃん! と大きな音がした。

「住職が起きちゃうよ」
「ご、ごめん」
 あわあわと自転車を起こして陽乃真が謝る。

「あ、あの、それじゃ……」
 陽乃真は花楓を見つめる。
「俺とお付き合いしてもらってもいいですか」
 どきん。
 花楓の心臓がいちだんと大きく脈打った。

「……はい」
 花楓が答える。
 直後、陽乃真の顔がぱあっと輝いた。

「うれしい、ありがとう!」
 陽乃真が花楓に抱き着き、花楓は硬直した。
 ぎゅうっと抱きしめられてかちこちになっていると、あ、と陽乃真が我に返って離れた。

「ご、ごめん、うれしすぎて」
 慌てて謝罪され、花楓はうつむく。

「そ、そろそろ帰ろうか」
「……うん」
 彼を見ることもできず、花楓は頷いた。

 空は闇を払い、青くなりつつある。
 稜線からまばゆい光を放つ太陽が顔を覗かせ、世界を薔薇色に染めた。