「それでさ……」
 陽乃真は言葉につまり、花楓はまた首をかしげた。
「俺が好きなのは君だけだから」
 陽乃真が言い、花楓は目を丸くして彼を見た。
 彼はまっすぐに花楓を見つめていて、その真剣なまなざしに、花楓は目を離せなくなる。

「ごめん、伝えて置きたくて。知っておいてくれたらいいから」
 彼はそう言って自転車に向かう。
 花楓は思わず彼の服をつまんでいた。

「な、なに?」
 陽乃真は動揺して答える。
 花楓は顔を上げられず、なにも言えずにただうつむいている。

「あ、ごめん、迷惑だった……?」
 慌てる彼に、花楓はただ首を振った。

「あの……私も」
「え?」

 花楓の心臓がどきんどきんと大きく脈打つ。
 こんなタイミングでなんて、考えても見なかった。
 外に出られたら言おうと思っていた、だけどそれがこんな早く訪れるなんて。
 だけど、言うならきっと今だ。
 花楓は決心して顔をぐいっと上げた。

「私も好き」
 視線がまっすぐにぶつかる。