もふもふ猫又警察官は愛する彼女を守りたい

「家まで送るよ」
「大丈夫、スクーターですぐだから」
「ダメ。夜道は危険だから」
 真剣な口調に花楓は苦笑した。もう夜が明けるというのに。

「……じゃあお願いします」
 一緒にお寺の門に向かい、スクーターの前でヘルメットを手にする。
「そういえば、よく私の場所がわかったね」
「猫又だから、音とか匂いとかで探したんだ」
「手……大丈夫? どうしたの?」
「気にしないで、大丈夫だから」
 陽乃真はそう言って手を隠すように後ろに回した。
 これ以上は聞いても教えてくれなさそうだ、と花楓はあきらめた。

「今日はありがとうございました」
 深い感謝をこめて、花楓はぺこりと頭を下げる。
「うん……あのさ」
 陽乃真がなにか言いたげで、花楓は首をかしげた。

「さっきのあの女性……婚約者というのは誤解だから」
「だけど」
「あの人がそう言ってるだけ。見合いしたことあるけど、断った。納得してもらえなくて、あの夜、押しかけられた。君のことは半端なあやかしだと思ったみたいだ」
「そうだったんだ」
 あやかしだと思われたのはやはり猫耳が原因だろうか。