もふもふ猫又警察官は愛する彼女を守りたい

 涙を零すたび、胸が痛いのになぜか軽くなっていくような気もする。
 彼女もそうだったのだろうか。自分のたもとで泣いて、心が軽くなっていただろうか。

 花楓を守ろうとしたのに。助けようとしたのに。
 どうしようもなく彼女に救われる。

 彼は言葉もなく花楓を見つめる。
 悲しさを、寂しさを、虚しさをわかってくる。
 ただそれだけのことがどうしてこんなにも嬉しいのか。

 人は、こうも温かくあるものなのか。
 人を傷付けるのもまた人であるというのに。
 つらい思いをしてもなお優しくあれるものなのか。
 必要なのは、守ることよりも寄り添うことなのか。
 彼は意識を持ってから大半を眠りで過ごして来たのだから、人というものをまださほど理解していないのだ、とようやく気が付いた。

「すみません……私はなにもわかってはいなかったようです」
 珀佳はじっと花楓を見る。
「私はあなたが好きです、花楓」
 自然と、あふれるように言葉がこぼれた。

「ありがとう」
 にっこりと花楓は笑う。
「私も好きだよ。子どものころ、助けてくれたよね。ありがとう。直接お礼を言えるのって嬉しいね」
 ふふ、と花楓は笑うから、珀佳はなにも言えなくなる。
 花楓が言う好きと自分が言う好きは違うのに。