もふもふ猫又警察官は愛する彼女を守りたい

「だって、私がそうだった。誰にも言いたくなくて、だけど誰かに言いたくて、気が付くとここに来ていた。イチョウに話したら心が軽くなれる気がしたの」
 珀佳は黙って花楓を見つめた。彼女の顔は真剣で、心からそう思っているように見える。

 本当に、そうだろうか。そうであってくれればいいのに。
 思って、珀佳の目から涙が溢れた。
 少しでも彼女の救いになりたかった。
 彼女のそばにいたかった。
 自分では気が付いていなかった。だが、彼女の「そばにいる」ことができていたのだとしたら。

「彼女の死因は病気だよ。病気でもあなたのそばにいて話がしたいくらい、あなたのことが支えだったのね。だから、自分を責めないで」
 珀佳はぽろぽろと涙を零す。

 ずっと自分を責めていた。自分は見ているだけでなにもできなかった。
 彼女を救うためになにかできたのではないのか。煩悶し、自責の念に心がつぶされそうだった。
 子どもたちに癒されたとき、心が温まるとともに罪悪感は強くなった。
 彼女を救えなかった自分が救われていいようには思えなかった。
 だが、花楓は自分を責めないでという。

「苦しかったんだね、ひとりで」
 花楓の手が珀佳の背をそっと撫でる。
 言われて初めて珀佳は自分が苦しかったのだと気が付いた。
 そうして、同時に心の霧が晴れていくような心持がした。