もふもふ猫又警察官は愛する彼女を守りたい

「ですが、あなたは猫から庇ってくださいました。私といたいということではないのですか」
「それは違うよ」
 即答に、珀佳はショックを受けたような顔をした。

「なんていうか……違うの。守るなら、閉じ込めなくてもいいはずだわ」
 言いながら、花楓は言葉を探る。なにか違和感がずっと頭の中にあって、それを探しながら。

「違う……そう、違うの、私は彼女とは違うの」
 違和感のかけらのひとつが見つかった気がして、花楓は言う。彼は自分とあの女性を同一視してしまっていたのではないだろうか。
「だから、彼女と同じ結果にはならないよ」

「同じように『人』です。人は弱い。心の傷がもとで命を落とすかもしれません。外はつらいことや悲しいことでいっぱいなのでしょう? ここにいればすべての憂いから逃れられます」
「……きっとそうだね。だけど、一緒にいたい人たちもいない」
 花楓の言葉に珀佳は目を丸くして言葉を失くす。

「私がいなくなったらきっと家族も友達も悲しんでくれると思うし、私も悲しい。失恋とは違う悲しみだろうけど、やっぱり悲しいの。一緒にいたいと思うの」
「ですが、同じように家族も友人もいた彼女は命を落としました……」
「苦しいとき、心が千切れてしまうことはあると思う」
「だったら!」
「それでも、ここにいることはできない。外にいたい。どうしてって聞かれても、やっぱり私が生きていた世界だから、かなあ?」
「そんな曖昧な!」
「私を守るためにあなたが外の世界に来て。そう言われて即答できる?」
 う、と珀佳は言葉に詰まる。