「やめて、お願い!」
「花楓さん」
 猫魈の姿のまま陽乃真は花楓を見る。

「お願い、彼は悪くないの」
「しかし」
「まだ話が終わってないの、お願い」
「こいつを信じていいのかわからない」
 陽乃真はそう言って珀佳を見る。

「花楓は、どうしてこんな男がいいのですか」
 悲しそうに珀佳が言う。
「どうしてって言われても……」
 優しいから。笑顔が素敵だから。
 なにをどう言っても断片的で、最終的には好きだから好きなんだ、という答えにしか辿り着かない気がする。

「この男ではあなたを幸せにできない。私ならそれができる」
「犯罪者が大口叩くな! お前がやったことは拉致監禁だ!」
 陽乃真がシャーっと威嚇する。

「珀佳さん、守ろうとしてくれたのはわかったよ。気持ちはうれしい。だけど私は一度もそれを望んでないよね?」
「ですが……」
 珀佳は言い淀み、言葉を探すように目を彷徨わせてから言う。