「そういえば、学校の先生が言ってたんだけどね」
 彼女の言葉に、花楓は続きを待った。

「三毛猫って、雌ばっかりなんだって。雄はすごく珍しくって、三万分の一なんだって」
「へえ」

 三万匹の猫が並んでいる様を想像してみる。学校の校庭に並べてみたらぎゅうぎゅう詰めでも足りないかもしれない。その果てしなく居並ぶ猫の中、ただ一匹しかいないなんて、なんていう奇跡的な数字だろう。

「でね、三千万円もするんだって!」
「それはすごいね」
「こういう面白いことばっかり学校で教えてくれたらいいのに」
 不服そうに言う結愛がなんだかかわいい。

「それでね、猫耳を作ったの」
「猫耳?」
 どうして「それで」になるのかはわからないが、彼女の中ではなにか関連することがあったのだろう。
 結愛は机の引き出しを開けて、猫耳のついたカチューシャを取り出した。

「先生の分も作ったの。あげる」
「わあ、ありがとう!」
 白いふわふわの布で作った猫耳だった。小学生が作ったとは思えないほどよくできている。

「上手ね。大変だったんじゃない?」
「簡単よ!」
 彼女は鼻を膨らませて得意げに言う。
「私、将来はこういうのを作る人になりたい」