その後、花楓は陽乃真と別れて当初の予定通りに買い物に出かけた。
 今日も陽乃真に会えて良かった。
 胸の中が穏やかに温かい。

 彼に会うときはいつも春の陽気に包まれたように温かくなった。
 笑顔が煌めいて見えるし、なにげない会話が楽しくて仕方がない。
 恋をしてしまった、と気がついたときにはどうしようかと思った。

 年齢差も気になったが、それ以前に相手はあやかしだ。どうやら人間と同じような常識を持っているようだが、彼からしたら異種族である自分は恋愛の対象にはならないのではないだろうか。
 あきらめなくちゃ、と思うのに気持ちは抑えられなくて、ずるずると恋をひきずっている。
 彼はいつも優しくて、笑顔が猫のようにかわいくて素敵だった。

 いつだったか駐在所に行ったとき、彼はまた眠っていた。
 また猫の姿に戻っていて、花楓は苦笑しながら落ちている帽子を拾った。
 つやつやした毛並みを撫でたくなって、うずうずした。
 眠ってるしバレないよね、と思って、そっと撫でた。
 ふわふわで柔らかくてなめらかで、気持ちが良かった。

 つい何度も撫でて、ついでに耳を触った。なんとも言えないふにふにした感触が楽しくて、つい両耳をつまんでしまう。
 直後、彼がびくっとして起きた。
 慌てて手をひっこめると、彼は寝ぼけて花楓を見た。