私は、主に青春系のジャンルで活動する新人作家です。
昨年――二〇二四年の三月に大学を卒業し、四月から細々と兼業作家をしています。
大学時代の私は、いわゆる「公募勢」でした。
「公募勢」というのは、わかりやすく言うと、小説家デビューを目指して様々な文学賞にチャレンジする人のことです。
デビューできた今でも文学賞への挑戦は続けていますが、あの頃が「公募勢」生活のピークでした。
とにかく暇さえあれば文学賞の応募要項が掲載されたサイトを調べ、どれに挑戦するか検討する日々だったように思います。
受賞は叶いませんでしたが、こちらのサイトが主催するキャラクター短編小説コンテストに応募したこともあり、あれはなかなか良い経験でした。
そんな日々の中見つけたのが、「第1回 きおく文学賞」の応募要項でした。
「きおく」にまつわる小説を募集する文学賞とのことでしたが、題材の例としてあげられていたのが「子ども時代の家族との思い出」とか、「親子での日々の一ページ」といった家族にまつわるものばかりだったため、意図的にそういうカテゴリーの作品を多く集めようとしているのかなぁと感じました。
私がデビューを目指す青春ものや児童小説のジャンルに特化した賞というわけではなさそうでしたが、いくらか興味を持ったため、要項の詳細を確認しました。
そして、何の変哲もない応募要項の中に、一文だけ不可解な文を見つけました。
しかし、時間をおいて再度応募要項を見た際、なんのアナウンスもないまま当該一文は削除されていました。ネットを見れど、SNSを漁れど、自分以外に誰も騒いでいる人などいません。
少々不気味に思いましたが、そのまま何事もないまま募集は締め切られ、何事もないまま審査が進み、どこかの誰かが受賞して、何事もないままこの文学賞は幕を閉じました。
その様子を見て、すべては自分の見間違い、もしくは記憶違いだったんだと思うようになりました。
前ページの応募要項は、私の朧げな記憶をもとに修正前の「きおく文学賞」の応募要項を再現したものです。内容に絶対的な自信があると言えば嘘になりますが、ここまで鮮明に思い出せるということはやっぱり存在していたんじゃないでしょうか。スクショでもとっときゃよかったなぁ。
人間の記憶なんて、もろいもんだ。
改めて、そう思います。
昨年――二〇二四年の三月に大学を卒業し、四月から細々と兼業作家をしています。
大学時代の私は、いわゆる「公募勢」でした。
「公募勢」というのは、わかりやすく言うと、小説家デビューを目指して様々な文学賞にチャレンジする人のことです。
デビューできた今でも文学賞への挑戦は続けていますが、あの頃が「公募勢」生活のピークでした。
とにかく暇さえあれば文学賞の応募要項が掲載されたサイトを調べ、どれに挑戦するか検討する日々だったように思います。
受賞は叶いませんでしたが、こちらのサイトが主催するキャラクター短編小説コンテストに応募したこともあり、あれはなかなか良い経験でした。
そんな日々の中見つけたのが、「第1回 きおく文学賞」の応募要項でした。
「きおく」にまつわる小説を募集する文学賞とのことでしたが、題材の例としてあげられていたのが「子ども時代の家族との思い出」とか、「親子での日々の一ページ」といった家族にまつわるものばかりだったため、意図的にそういうカテゴリーの作品を多く集めようとしているのかなぁと感じました。
私がデビューを目指す青春ものや児童小説のジャンルに特化した賞というわけではなさそうでしたが、いくらか興味を持ったため、要項の詳細を確認しました。
そして、何の変哲もない応募要項の中に、一文だけ不可解な文を見つけました。
しかし、時間をおいて再度応募要項を見た際、なんのアナウンスもないまま当該一文は削除されていました。ネットを見れど、SNSを漁れど、自分以外に誰も騒いでいる人などいません。
少々不気味に思いましたが、そのまま何事もないまま募集は締め切られ、何事もないまま審査が進み、どこかの誰かが受賞して、何事もないままこの文学賞は幕を閉じました。
その様子を見て、すべては自分の見間違い、もしくは記憶違いだったんだと思うようになりました。
前ページの応募要項は、私の朧げな記憶をもとに修正前の「きおく文学賞」の応募要項を再現したものです。内容に絶対的な自信があると言えば嘘になりますが、ここまで鮮明に思い出せるということはやっぱり存在していたんじゃないでしょうか。スクショでもとっときゃよかったなぁ。
人間の記憶なんて、もろいもんだ。
改めて、そう思います。

