きみきみ。そんなに警戒しないで。
 こっちの資料も見てくれよ。
 前に僕が降霊術で魚人の巫女のノベンバってやつを呼び出したときの記録だよ。





Q――あなたはいつ死んだのか。

「シャーマーメイズの任務中だよ。
 一九三〇年の一〇月の……何日だったかは忘れちまったよ」

Q――どこで死んだのか。

「アメリカの、マサチューセッツ州の端っこ。荒野を通る線路の近くだ。

Q――どのような任務だったのか。

「ルイーザがキギータウンから出てくるのを待っていたんだよ」

Q――ルイーザとは何者か。

「クトゥルフ様の触手の先端。
 クトゥルフ様の魂のカケラにして、クトゥルフ様の肉体の眠るルルイエの封印を解く鍵さ」

Q――ルイーザはパトリシアではないのか。

「肉体はパトリシア。魂は違うよ」

Q――ならばなぜパトリシアとして振る舞うのか。

「パトリシアの脳細胞に残った記憶のせいで、クトゥルフ様はご自分をパトリシアだと勘違いなさっておられるんだ」

Q――パトリシアの魂はどうなったのか。

「さてね。考えたこともなかったね。
 アトランティスを今もさまよってるんじゃないのかい?」

Q――パトリシアの魂がクトゥルフの中に入っている可能性は。

「バカ言え。大いなる種族とか名乗ってる虹色のグニャグニャじゃあるまいし」


Q――あなたは自分が死んだときのことを覚えているか。

「途中までならね。
 ……あのときすでにシャーマーメイズのメンバーは四人しか残っていなかった。
 六人はルルイエの絵を完成させるために自ら生け贄になったわけだが、イギリスで一人、インスマウスでさらに一人失うとは予想していなかったよ。
 絵を描いた時期? アタシらの寿命は人間どもとは違うんだよ。

 アタシとディセナの当番だったときにそれは起こった。
 時空の狭間なんてモノには近いも遠いもないんだが、まさにどこともつかぬところからいろんなモンが壊れる音が轟いてきた。
 建物や大地や空間そのものが壊れる音さ。

 アタシは驚きはしたけどビビりはしなかった。
 別の時空で起きてることだからアタシには危険はないって思ってたんだ。
 なのに気がついたらアタシは瓦礫に押しつぶされて、何が起きたかわからないまま死んじまった。
 一緒にいたディセナはどうなったのかねえ……


Q――あなたはハリウッドへは行っていないのか。

「何の話だい?」

Q――ルイーザがクトゥルフなら、ルイーザはなぜモスマンについての記憶を有していたのか。

「だから何の話だいッ!?」