N「ルイーザが放心状態でいるうちに、キャロラインの体のモノクロ化は順調に進んでいった。
Ny「しばらくするとハリボテの街が完全に壊れて、向こうにピラミッドが現れた。
だって、ほら、忘れてないかい?
きみがもともと読んでいたのは、B級ホラー映画『恐怖の吸血ミイラ』についての資料なんだよ?」
Nya「ピラミッドからフラフラと、キャロラインにとって見覚えのない青年が出てきた。
『オレはアーサー。オレはジョン・スミス』
その青年はキャロラインには意味のわからない言葉をぶつぶつとつぶやいた。
『今だけは……今だけはアランだ!』
青年が叫ぶと、何もなかった空中に映画撮影用のライトが現れた」
Nyar「キャロラインが思わず目を閉じ、光が収まって目を開けると、彼女は映写室に戻ってきていた。
スポットライトもないし、アランもいない。
殺風景なせまい部屋の中には、映画のエンドロールを映す、わずかな光があるだけだった」
Nyarl「キャロラインの足もとでルイーザがうずくまっていた。
触手も消えて、すっかり元どおりの姿になっていたよ。
目の前でサン・ジェルマンを連れ去られて、ひどいショックを受けていたが、ルイーザ自身は怪我一つないどころか服が汚れてすらいない。
キャロラインはルイーザの無事を確かめて、一まずは安堵したものの、その途端――」
Nyarla「映写機の中や周りに積まれたフィルムケースの中から、フィルムの群れが蛇のように飛び出してキャロラインに襲いかかり、腕、脚、首と巻きついて締め上げた」
Nyarlat「いやいや、本気で殺そうとしたわけではないよ。
どういう状態か確かめただけさ」
Nyarlath「フィルムに引き戻すにはモノクロ化が足りなくてね」
Nyarlatho「サン・ジェルマンがいなくなり、異郷の地での異常事態に頼れる大人はアデリン叔母さまただ一人。
そのアデリン叔母さまが助けてくれたのはいいけれど――」
Nyarlathot「血走った目で獣のようにうなりながらフィルムを喰いちぎっていたんだ。
フィルムの拘束を解かれたキャロラインはまず呼吸を整えるのに時間がかかり、それから目をまん丸くして事態を把握するのにさらなる時間を要していた。
彼女はここに来るまでにさまざまな恐怖を体験してきたが、その中でもこれが一番だったのではないかな?
叔母さまがどうなってしまったのかようやく理解できて、キャロラインは絶叫した。
それはそれはすさまじい悲鳴だったよ。
そしてそれから……」
Nyarlathote―「……いや、ここまでにしておこう。
私が語るよりもおもしろい資料が、ほら、きみの手もとにあるからね」
Ny「しばらくするとハリボテの街が完全に壊れて、向こうにピラミッドが現れた。
だって、ほら、忘れてないかい?
きみがもともと読んでいたのは、B級ホラー映画『恐怖の吸血ミイラ』についての資料なんだよ?」
Nya「ピラミッドからフラフラと、キャロラインにとって見覚えのない青年が出てきた。
『オレはアーサー。オレはジョン・スミス』
その青年はキャロラインには意味のわからない言葉をぶつぶつとつぶやいた。
『今だけは……今だけはアランだ!』
青年が叫ぶと、何もなかった空中に映画撮影用のライトが現れた」
Nyar「キャロラインが思わず目を閉じ、光が収まって目を開けると、彼女は映写室に戻ってきていた。
スポットライトもないし、アランもいない。
殺風景なせまい部屋の中には、映画のエンドロールを映す、わずかな光があるだけだった」
Nyarl「キャロラインの足もとでルイーザがうずくまっていた。
触手も消えて、すっかり元どおりの姿になっていたよ。
目の前でサン・ジェルマンを連れ去られて、ひどいショックを受けていたが、ルイーザ自身は怪我一つないどころか服が汚れてすらいない。
キャロラインはルイーザの無事を確かめて、一まずは安堵したものの、その途端――」
Nyarla「映写機の中や周りに積まれたフィルムケースの中から、フィルムの群れが蛇のように飛び出してキャロラインに襲いかかり、腕、脚、首と巻きついて締め上げた」
Nyarlat「いやいや、本気で殺そうとしたわけではないよ。
どういう状態か確かめただけさ」
Nyarlath「フィルムに引き戻すにはモノクロ化が足りなくてね」
Nyarlatho「サン・ジェルマンがいなくなり、異郷の地での異常事態に頼れる大人はアデリン叔母さまただ一人。
そのアデリン叔母さまが助けてくれたのはいいけれど――」
Nyarlathot「血走った目で獣のようにうなりながらフィルムを喰いちぎっていたんだ。
フィルムの拘束を解かれたキャロラインはまず呼吸を整えるのに時間がかかり、それから目をまん丸くして事態を把握するのにさらなる時間を要していた。
彼女はここに来るまでにさまざまな恐怖を体験してきたが、その中でもこれが一番だったのではないかな?
叔母さまがどうなってしまったのかようやく理解できて、キャロラインは絶叫した。
それはそれはすさまじい悲鳴だったよ。
そしてそれから……」
Nyarlathote―「……いや、ここまでにしておこう。
私が語るよりもおもしろい資料が、ほら、きみの手もとにあるからね」
