そしてこちらはアデリンの日記。

『モスマンと空を飛んでいたのに、いきなり窓のない地下室に――ワープ? ――していた。
 鍵がかかっていて閉じ込められているようだった。

 しばらくしたらドアが開いて円錐形のバケモノが入ってきた。
 アタシはそいつを突き飛ばして逃げた。
 そのときにあることに気づいたけれど、怖くて自分の体を見下ろすことができなかった。

 キャロラインを探してイーグルスホテルへ走った。
 客室にも食堂にもキャロラインはおらず、厨房で見つけた。
 あの子はアタシを見て悲鳴を上げた。
 業務用の冷蔵庫のピカピカの扉が鏡のようにアタシを映した。
 アタシは円錐形のバケモノになっていた。

 声は出るけど人間の言葉を発音できるような喉じゃなくて、キャロラインに逃げられて、追いかけたけど見失った。
 そうこうするうちに町全体がおもちゃのように壊れ始めて、瓦礫の下敷きになって、アタシは自分が“宿っている”肉体が死ぬのを感じた。

 目が覚めたら辺りに岩しかないような荒野に倒れていて、かたわらでルイーザがアタシを見下ろしていて、アタシの魂はもとの肉体に戻っていた。
 どうやらルイーザが助けてくれたのらしい。
 その恩返しにルイーザは、アタシにお供をするよう命じてきた。
 子供が一人で旅なんか続けたら通報されるか誘拐される。
 だからアタシを連れていきたい。

 断れなかった。
 この先にいるモノの力を使えばアランを見つけられると言われた。
 アタシたちはハリウッドへ向かう。
 財布以外の荷物はすべてなくしてしまった。
 たぶんキャロラインも似たような状況。
 あの子はちゃんとイギリスへ帰れるのかしら?
 それよりも今は自分の心配を。
 ルイーザがハリウッドへ行く目的は“調べもの”としか教えてくれない。』




 ねえきみ、さっききみの背後で物音がしなかったかい?
 気づかなかったか。
 まぁいいさ。
 気づいても気づかなくても結果は同じだからな。