ねえ、信じられる?
 ルイーザが言ったのはつまり、パパはパトリシアおばあちゃまの子供じゃないってことなのよ?
 何よそれ?
 どうしてそんなことをこんなところで妹の口から聞かされなくっちゃならないのよ?

 もちろんウソだと思ったわよ。
 その場でルイーザを叱ろうとしたわよ。
 ウソなんか吐いて何を聞き出したいのか知らないけど、牧師さまを騙そうなんてしちゃいけないわ。
 それなのにルイーザってば、わたしが口を開くより早く、牧師さまに見えないようにわたしのお尻をつねって黙らせたのよ!?
 まるで行儀の悪い子供をしつけるみたいに!
 わたし姉よ!?
 逆でしょ、こんなの!?
 しかもその隙になんと牧師さまがわたしに詰め寄ってきたわけよ。
「こんな子供にそんなことまで話しているのか」って。
 わたしは初耳なんだってば!

 ルイーザは「おばあちゃまから聞いた」って。
「パパには言ってない」って。

 牧師さまはあきらめたように首を振って「そこまでわかっているなら」って重い口を開いたわ。
 ルイーザはわかっていても、わたしはわかっていないんだけど。


ルイーザ「パトリシアと別れてからサン・ジェルマンに何があったのか教えてほしい」
牧師さま「私はそのかたとお会いしたことは一度もありません」


 ねえオリヴィア、がっかりした?
 長い手紙をここまで読んできたのにって思った?
 わたしはこのとき、肩透かしを食らったみたいになったわ。
 でもね、ここからよ。


ルイーザ
「首なし騎士の首の在り処に心当たりは?」

牧師さま
「それらしきものをこちらの教会で預かっています」


 牧師さまは墓地の隅の、教会そのものよりも古そうな納骨堂から木の箱を持っていらしたわ。
 頭蓋骨がすっぽり収まる大きさの箱。
 頭蓋骨は布に包まれて収められてた。
 ルイーザがその場で中を確認したの。

 わたしはルイーザの肩越しにちょっと覗いただけ。
 真っ白だったわ。頭蓋骨。
 目の穴が、目なんてとっくになくなってるのに、こちらを見つめているみたいだった。

 ルイーザは頭蓋骨を手に取って、なで回して、抱きしめて、泣き出した。
 わたしも牧師さまも唖然としてそれを見ていた。

 牧師さまがおっしゃるにはこの頭蓋骨は、鉄道事故から数年後にアーカムの若い学生たちが森で見つけたのだそうよ。
 首なし騎士の噂を聞いて、まさか本当にそんなものがいるわけがないって度胸だめしに行った人たちの中の一組の戦利品。

 線路から離れた場所にあったから鉄道事故とは関係がないと思われたみたい。
 警察が調べても身元はわからず教会で引き取って――

 一度は埋葬したのだけど野良犬が掘り返してしまったの。
 すでに白骨化していて――嫌な言い方になってしまうけど――食べられる部分なんてないはずなのに。
 何度、埋め直しても、その度に野良犬が掘り返すので、埋めるのはあきらめて、すでに使わなくなっていた納骨堂に収めておいたんですって。