そろそろって時間になってもアデリン叔母さまは起きてこなくて、わたしとルイーザの二人だけで教会へ行ったの。
 昨日は慌ただしくて建物の様子とかろくに見ていなかったけど、小さくてもどっしりしいて歴史の有りそうな上品な造りだったわ。
 庭や霊園の手入れも良く行き届いてた。

 牧師さまは墓地の、昨日ルイーザといたのと同じ区画に立ってたの。
 真っ白な髪の品のいいおじいさん。
 寂しい感じだったけど、お墓ってそんなもんじゃない?
 墓石の形や大きさが判で押したみたいに似たようなのがそろっていても、この町ではそうなんだなってぐらいにしか思わなかったの。
 刻まれている日付けが全部同じだなんて、言われるまで気づかなくっても、妹に観察力がないみたいに言われるほどのことじゃあないわよね?

 とにかくわたしは牧師さまに、昨日は妹がお世話になりましたってお礼して、さっさと帰ろうとしたの。
 だけどルイーザはわたしが手を引っ張ってもビクともしなくて。

 ルイーザと牧師さまの会話は、何それ? って思うようなことの連続だったわ。
 録音したりその場でメモを取っていたわけじゃないから細かい部分は違うかも知れないけど、だいたいこんな感じよ。


ルイーザ「昨日の話の続き。四十三年前にパトリシアと別れてから、サン・ジェルマンに何が会ったのか教えて」
牧師さま「子供に聞かせられるような話ではありません」
ルイーザ「今日は大人も連れてきたわ」


 わたし、ちょっとびっくりしちゃった。
 ルイーザがこんなことを言うなんて。
 でもこれはまだほんのちょっとのびっくりよ。


ルイーザ
「ここにあるのはすべて四十三年前の鉄道事故の犠牲者のお墓」
「その汽車にサン・ジェルマン・ルルイエとパトリシア・ルルイエが乗っていた」
「事故の生存者はこの二人と、生まれたばかりだったヘンリーだけ」


 牧師さまはとても驚いていらしたわ。
 わたしは驚くを通り越してキョトンよ。
 わたしは同じ家族の姉よ?
 なのに何で姉のわたしが知らないことを妹が当たり前みたいに話してるのよ?
 ああ、この時は驚きに飲み込まれてただただキョトンとしていたけれど、今から考えると悔しいわ。
 ルイーザが家に来たときはこの子のことを異分子みたいに思ったけれど、弾き出されたのはわたしのほうだったのよね。
 ああ、こんな話より列車事故のほうをオリヴィアは知りたいわよね?