親愛なるオリヴィアへ
前の手紙を書いてから丸一日。
今日はもうクタクタ。
まだアーカムの、昨日と同じホテルよ。
朝、起きたらルイーザが居なくなっていたの。
ああ、でも安心して。
もう見つかって今はこうして手紙を書けるぐらいに落ち着いているから。
前の手紙はルイーザが勝手に投函してきたものよ。
ちゃんと届いているわよね?
わたしがテーブルの上に置きっぱなしにしていた手紙をルイーザが黙って持ち出して、ポストに行くって言ってフロントの人に見せたから、朝早くに子供が一人で外に出ようとしてるのに止めてもらえなかったのよ。
だから少なくともインスマウスの人に誘拐されたわけではないけれど、でもこの不安がいつ現実になってもおかしくないのは変わらないじゃない?
それでアデリン叔母さまが警察に連絡して、わたしは町の人たちに訊いて回って。
ルイーザはおじいちゃまが失踪したときのこと、つまり何十年も昔のことを調べているわけだから町の資料館にも行ってみたんだけど、ルイーザは来ていないって。
ただ、資料館の職員に事情を話したら、ルイーザはおじいちゃまとおばあちゃまの新婚旅行の足取りを追っている形になるんだから、新婚旅行にふさわしいおしゃれなホテルを当たってみたらいいんじゃないかってアドバイスをいただいたの。
おしゃれで、おじいちゃまの若いころからあるような古いホテル。
電話帳で探して、片っ端から電話をかけて、どこも空振り。
気が気じゃなかったのよ。
一人で森の中で首なし騎士を捜しているならまだいいわ。
もしもインスマウスに戻っていたらどうしようって思った。
こんな電話なんかかけていないで、わたしもインスマウスに行かないといけないんじゃないかとか考えて、資料館の職員にインスマウスへ向かうバスがないか訊いてみたりして。
インスマウスとはどういう町なのか。
警察の人がゴーストタウンだって言っていたのは本当なのか。
本当ならどうしてそうなったのか。
資料館の職員やたまたま居合わせた利用者に訊けば訊くほど答えはバラバラ。
謎の伝染病だとかマフィアによる大虐殺があったとか。
全員一致して言っているのは、バスはないし行ってくれるタクシーも期待できないって点だけだったわ。
ルイーザは墓地に居たわ。
牧師さまと話してたの。
ルイーザは本当に賢いわ。
わたし、学んだの。
恐ろしい経験というものにはいくつもの種類が合って、それが人に話せるものの場合は警察を頼れるけれど、話せない、話しようがない経験なら神さまに頼るしかないの。
だから教会には情報が集まるし、警察や資料館では消されてしまうようなウソみたいな記録も残されているわけなのよ。
でも知ってるからって簡単に教えてもらえるわけではなくて、牧師さまもインスマウスについては「あそこは悪魔の町だ」みたいに言うだけだったわ。
汽車の時間も迫っていたからほとんど話さずに、ルイーザの手を引いてホテルに戻って迷子探しの協力のお礼とチェックアウトの手続きを済ませて、アデリン叔母さまとも合流して三人で駅へ走ったの。
それなのに汽車には乗れなかったの。
アデリン叔母さまが発車の時刻を勘違いしてらしたのよ。
それでまた、出たばかりのホテルに逆戻り。
大丈夫よ。
次の手紙はきっと汽車の中で書くわ。
キャロラインより
前の手紙を書いてから丸一日。
今日はもうクタクタ。
まだアーカムの、昨日と同じホテルよ。
朝、起きたらルイーザが居なくなっていたの。
ああ、でも安心して。
もう見つかって今はこうして手紙を書けるぐらいに落ち着いているから。
前の手紙はルイーザが勝手に投函してきたものよ。
ちゃんと届いているわよね?
わたしがテーブルの上に置きっぱなしにしていた手紙をルイーザが黙って持ち出して、ポストに行くって言ってフロントの人に見せたから、朝早くに子供が一人で外に出ようとしてるのに止めてもらえなかったのよ。
だから少なくともインスマウスの人に誘拐されたわけではないけれど、でもこの不安がいつ現実になってもおかしくないのは変わらないじゃない?
それでアデリン叔母さまが警察に連絡して、わたしは町の人たちに訊いて回って。
ルイーザはおじいちゃまが失踪したときのこと、つまり何十年も昔のことを調べているわけだから町の資料館にも行ってみたんだけど、ルイーザは来ていないって。
ただ、資料館の職員に事情を話したら、ルイーザはおじいちゃまとおばあちゃまの新婚旅行の足取りを追っている形になるんだから、新婚旅行にふさわしいおしゃれなホテルを当たってみたらいいんじゃないかってアドバイスをいただいたの。
おしゃれで、おじいちゃまの若いころからあるような古いホテル。
電話帳で探して、片っ端から電話をかけて、どこも空振り。
気が気じゃなかったのよ。
一人で森の中で首なし騎士を捜しているならまだいいわ。
もしもインスマウスに戻っていたらどうしようって思った。
こんな電話なんかかけていないで、わたしもインスマウスに行かないといけないんじゃないかとか考えて、資料館の職員にインスマウスへ向かうバスがないか訊いてみたりして。
インスマウスとはどういう町なのか。
警察の人がゴーストタウンだって言っていたのは本当なのか。
本当ならどうしてそうなったのか。
資料館の職員やたまたま居合わせた利用者に訊けば訊くほど答えはバラバラ。
謎の伝染病だとかマフィアによる大虐殺があったとか。
全員一致して言っているのは、バスはないし行ってくれるタクシーも期待できないって点だけだったわ。
ルイーザは墓地に居たわ。
牧師さまと話してたの。
ルイーザは本当に賢いわ。
わたし、学んだの。
恐ろしい経験というものにはいくつもの種類が合って、それが人に話せるものの場合は警察を頼れるけれど、話せない、話しようがない経験なら神さまに頼るしかないの。
だから教会には情報が集まるし、警察や資料館では消されてしまうようなウソみたいな記録も残されているわけなのよ。
でも知ってるからって簡単に教えてもらえるわけではなくて、牧師さまもインスマウスについては「あそこは悪魔の町だ」みたいに言うだけだったわ。
汽車の時間も迫っていたからほとんど話さずに、ルイーザの手を引いてホテルに戻って迷子探しの協力のお礼とチェックアウトの手続きを済ませて、アデリン叔母さまとも合流して三人で駅へ走ったの。
それなのに汽車には乗れなかったの。
アデリン叔母さまが発車の時刻を勘違いしてらしたのよ。
それでまた、出たばかりのホテルに逆戻り。
大丈夫よ。
次の手紙はきっと汽車の中で書くわ。
キャロラインより