親愛なるオリヴィアへ

 インスマウスでのことについて警察の人と話したんだけど、何だかおかしな感じになってしまったわ。
 警察署へ行く前に、何をどういう風に説明するか、わたしたちしっかり打ち合わせをしたの。
 だって素直に全部を話したところで信じてもらえるとはとても思えないし。
 それでも守ってもらう必要はあるわけだから、わたしたちがウソを吐いているように思われても困ってしまうわけだし。

 アデリン叔母さまがこういうのすごくテキパキしていて。
 まずルイーザは絶対に余計なことを言わないように。
 怯えて口も聞けなくなっているということで、ふてくされてないで怯えた顔をしていなさい、と。

 首なし騎士やジョン・セレストさんのことは黙っておいたほうがいい。
 生け贄の儀式について信じてもらえそうな部分だけをアデリン叔母さまが見つくろって話すから、わたしはうまく相槌を打つ。
 そういう作戦で警察署に乗り込んだの。

 だけどね。
 警察の人がね。
 ありえないって。
 インスマウスに人が住んでいるはずがないって。
 二年ほど前に大きな事件があって、インスマウスは誰も住まないゴーストタウンになっているんだって。

 事件の内容は教えてもらえなかったわ。
 何だかこう、外国人なんかに話してやる義理はないみたいな雰囲気で。
 インスマウスの名前を聞くのも嫌だみたいな感じ。
「ありえない話をこれ以上続けるなら医者を呼ぶ」みたいな。
 実際はもう少しマシな言い回しだったけど、とにかくそんなたぐいのことを言われて、わたしたち退散するしかなかったわ。

 それで仕方なくホテルに戻ってこの手紙を書いているの。
 アデリン叔母さまは一刻も早くここから離れるべきだって、ニューヨーク行きの汽車のチケットを取りに行ったわ。
 ニューヨークの港からイギリスへ帰るの。
 わたしも叔母さまに賛成よ。
 いつインスマウスの人たちがわたしたちを追いかけてこのアーカムにまでやってくるかわからないもの。

 ああ、だけどそれなのにルイーザはここに残っておじいちゃまを捜すなんて言ってるのよ?
「怖いなら二人だけで帰れ」ですって!
 もちろん引きずってでもルイーザも連れて帰るわよ!

 じゃあまたね。
 ニューヨークに無事につけるように祈っていてね。

キャロラインより