さてここでアデリン叔母さまの日記の登場だ。
きれいにファイルされた手紙やスクラップブックに貼りつけられた新聞記事と並べると、いかに古くとも素の日記帳というのは何だか生々しいな。
表紙の薔薇の絵を見たまえ。刺々しいながらも少女趣味。これこそがアデリン・アンダーソンという人物なんだ。
ああ、きみ、そんな不審げな目で見ないでくれ。
アンダーソン邸の屋根裏部屋で発見されたものを、アデリンの従兄弟の子孫から譲ってもらったんだ。
確かにご婦人の日記を勝手に読むのは気が引けるが、これはキャロライン・ルルイエ行方不明事件の謎を解く重要な手がかりなんだ。
さあ、ページをめくってみよう。
7月27日
近所のチャリティー・フェスティバルに行く。
占い小屋の女に、過去の恋愛を引きずっているのを当てられた。
水難の相がでていると言われ、お守りとして分厚い百科事典を渡された。
帰り道、混雑した橋で後ろから誰かに突き飛ばされて川に落ちたけど、鞄の中の百科事典が浮きになったので溺れずに済んだ。
占いって本当に当たるものなの?
着替えてからイベント会場に戻ったら、占い小屋はなくなっていた。
8月7日
本屋の近くであの占い師と再会。
ただの偶然とは思えない。
占い師の名前はジューリャ。
アタシの人生に必要なのは青く輝く石だと言われた。
思い当たるものがあるはずだって。
アタシは知らないって言って逃げた。
だって。
言えるわけがない。
8月10日
占い師の名刺の住所にアタシから出向く。
ジューリャの占いによれば、アタシに幸運をもたらすはずの石は、持つべきではない人のものになろうとしているらしい。
ヘンリーの屋敷に電話。
ヘンリーは留守。
メイドと話す。
パトリシアの遺言でブルーダイヤはルイーザのものになる。
勢いでキャロラインに手紙。
出したあとで悔やむ。
意味のないことをした。
8月17日
ジューリャに本心を告げる。
ブルーダイヤがほしい。
あれはアタシが掴めなかった幸せの象徴。
アタシはキャサリンのようにもパトリシアのようにもなれなかった。
キャサリンが生きていればブルーダイヤはパトリシアの死後はヘンリーからキャサリンへ渡されたはず。
ルイーザはキャサリンの不幸の象徴。
だってルイーザはアタシの姉の子供ではない。
ブルーダイヤがルイーザのものになるなんて許せない。
認められない。
ジューリャはアタシに協力してくれると言う。
どうすればいいかは水晶玉が教えてくれる。
アタシたちは水晶玉が立てる計画に従うだけ。
「気にしなくていい」
「ブルーダイヤはあなたのものになりたがっている」
「時が来ればあなたから姉の娘に与えればいい」
キャロラインに。
落ち着いてこうして日記に書いてみるとムチャクチャな話。
だけどもう、アタシの欲望は固まってしまった。
8月24日
ひどい天気。
ジューリャの言葉にうなずいてしまったのは、きっとこの天気のせい。
別にたいしたことをするわけじゃあない。
明日、ジューリャをヘンリーに紹介するだけ。
それだけよ。
きれいにファイルされた手紙やスクラップブックに貼りつけられた新聞記事と並べると、いかに古くとも素の日記帳というのは何だか生々しいな。
表紙の薔薇の絵を見たまえ。刺々しいながらも少女趣味。これこそがアデリン・アンダーソンという人物なんだ。
ああ、きみ、そんな不審げな目で見ないでくれ。
アンダーソン邸の屋根裏部屋で発見されたものを、アデリンの従兄弟の子孫から譲ってもらったんだ。
確かにご婦人の日記を勝手に読むのは気が引けるが、これはキャロライン・ルルイエ行方不明事件の謎を解く重要な手がかりなんだ。
さあ、ページをめくってみよう。
7月27日
近所のチャリティー・フェスティバルに行く。
占い小屋の女に、過去の恋愛を引きずっているのを当てられた。
水難の相がでていると言われ、お守りとして分厚い百科事典を渡された。
帰り道、混雑した橋で後ろから誰かに突き飛ばされて川に落ちたけど、鞄の中の百科事典が浮きになったので溺れずに済んだ。
占いって本当に当たるものなの?
着替えてからイベント会場に戻ったら、占い小屋はなくなっていた。
8月7日
本屋の近くであの占い師と再会。
ただの偶然とは思えない。
占い師の名前はジューリャ。
アタシの人生に必要なのは青く輝く石だと言われた。
思い当たるものがあるはずだって。
アタシは知らないって言って逃げた。
だって。
言えるわけがない。
8月10日
占い師の名刺の住所にアタシから出向く。
ジューリャの占いによれば、アタシに幸運をもたらすはずの石は、持つべきではない人のものになろうとしているらしい。
ヘンリーの屋敷に電話。
ヘンリーは留守。
メイドと話す。
パトリシアの遺言でブルーダイヤはルイーザのものになる。
勢いでキャロラインに手紙。
出したあとで悔やむ。
意味のないことをした。
8月17日
ジューリャに本心を告げる。
ブルーダイヤがほしい。
あれはアタシが掴めなかった幸せの象徴。
アタシはキャサリンのようにもパトリシアのようにもなれなかった。
キャサリンが生きていればブルーダイヤはパトリシアの死後はヘンリーからキャサリンへ渡されたはず。
ルイーザはキャサリンの不幸の象徴。
だってルイーザはアタシの姉の子供ではない。
ブルーダイヤがルイーザのものになるなんて許せない。
認められない。
ジューリャはアタシに協力してくれると言う。
どうすればいいかは水晶玉が教えてくれる。
アタシたちは水晶玉が立てる計画に従うだけ。
「気にしなくていい」
「ブルーダイヤはあなたのものになりたがっている」
「時が来ればあなたから姉の娘に与えればいい」
キャロラインに。
落ち着いてこうして日記に書いてみるとムチャクチャな話。
だけどもう、アタシの欲望は固まってしまった。
8月24日
ひどい天気。
ジューリャの言葉にうなずいてしまったのは、きっとこの天気のせい。
別にたいしたことをするわけじゃあない。
明日、ジューリャをヘンリーに紹介するだけ。
それだけよ。