ハーレム主人公の友達として人類滅亡阻止します


高校受験も終え、すべてから解放された俺は、人生で一番の時を過ごしていた。

(今日買ったラノベ、早く家に帰って読みてえ……)

俺はママチャリのカゴに入ったラノベたちを見て、ニヤつきながら青信号になった歩道を走り抜けようとしたが、

(え……?)

よそ見でもしてたのか、居眠りでもしてたのか、俺は大型トラックに吹き飛ばされた。

(まだ……新刊読んでないのに……)

意識が朦朧とする中、俺は読めてない買ったばかりのラノベたちを悔いながら、意識を手放した。

――――――――――――――――――――――――

なんだろう……心地いい……何かに包まれてるような暖かさ。ここがいわゆる死後の世界なのかな?

「――――――」

誰かから声を掛けられてる気がする……随分前に亡くなったおばあちゃんかな?それとも綺麗な天使さんかな?俺は優しく語りかけられる声に反応するかのように、閉じた瞼をゆっくりと開いた。

「グッドモーニング!!!ボーイ!!!!」

「うわああああああああ」

目の前に、古代ギリシャみたいな服を着たゴリゴリのマッチョメンが、キラッと歯を見せながら俺の視界にドアップで現れた。

「なんだいボーイ!僕と添い寝していてその反応はナッシングだよ!」

(添い寝!!?)

俺はすぐに状況を確認しようと、寝そべる隣に寄り添うかのように寝転んでいた。

「うぉりゃ!!!」

「グフゥ」

俺は思い切りその男の腹に向けて蹴りを入れ、距離を取った。

「oh……oh……このGODである私に向かって蹴りを入れるとは、なんてボーイだ……」

GOD……?神様ってやつか?

「そうさ!私は神だ!!!」

(心読むなよ)

「読めるさ!神だから!」

(ウザいし、なんだコイツ)

「sorry……sorry……ボーイ、そんな顔しなくてもいいじゃないか!」

俺は自称神から距離を置くと、彼はニコッと輝く歯を見せつけるように俺に話しかけてきた。

「君は佐藤悟(さとうさとる)、死んだのさ……交通事故で」

やっぱり死んでしまったのか。俺は自分の最期のあっけなさ、読めなかったラノベたち、そして親に何もしてやれなかった申し訳なさに顔をやるせなさに駆られた。

「ボーイ……そんな顔をしないでおくれ……君にお願いがあって私はここに呼んだんだ。」

(神が?俺に?なんの用で……)

「ボーイにはとあるお願いがあるんだ……そのお願いを聞いてくれるなら、現世に甦らせてやろう……」

死者蘇生!?そんなこと許されるの!?

「ああ……私はGODだからね。許されるさ!」

なんと寛大な!

「それで、どんなお願いなんですか?」

俺は神のお願いがなんなのか質問した。すぐにでも戻ってラノベ読みたいし。

「お願いは単純さ!このボーイ神野響(かみのひびき)の恋愛を成就させるお手伝いをして欲しいのデース!」

神はパチンと指を鳴らすと、何もないところにスクリーンが現れ、1人の少年が映し出された。

「こいつの恋愛をサポートするため?」

俺は問い返すと、

「この子の周りにいっぱいのガールズが集まりマース!その中から一番相応しい子とゴールインできるように、響くんの友人となってサポートして欲しいのデース!」

ハーレム形成するやつの友達になって、しかも恋愛を成就?なんと罰ゲームか?妬みで響ってやつを殺したくなるぞ……

「oh……ボーイ、そう殺意を出さないで……気持ちはわかるデース。でもサポートして欲しいのデース!」

「なんでさ?」

俺は嫌そうに返すと、

「このボーイが正しくないガールとゴールインしちゃうと、人類滅亡しちゃいマース……」

「何でさ!!」

意味わからん。他の奴とくっついたら人類滅亡って、どんな過酷な恋愛だよ。どうなったらそうなるんだよ……

「この響ボーイは聖力というとってもとってもスピリチュアルなパワーを秘めていて、そのパワーを狙った悪魔と天使が彼の周りに集まってしまいまーす。」

つまり響ってやつの周りに天使と悪魔の女の子のハーレムが形成されると……羨ましい……

「羨ましいとか考えないでボーイ、人類の存亡かかってマース!」

「悪魔はともかく、天使はあんたらの部下みたいなもんだろ?せめて天使は止めろよ。」

神は少し申し訳なさそうな顔をし、俺に向かって問い返す。

「sorryボーイ……天使たちの中の大天使であるミカエラと夫婦なのですが、むかし私が人間と浮気して以降、天使からの反感が凄まじく、何言っても聞くどころか私を神から堕とそうとしてくるので……」

そりゃそうでしょ……

「天使は偉大なるミカエラを悲しませた哀れな人間共を滅ぼすために……悪魔は人間と天使、神である私を殺して魔族の世界を作るため、世界を滅ぼそうとしてマース……」

「でも私は人間を愛してマース……だからボーイ、君を殺し、この事を伝え、響ボーイのことらヒロインの中にいるただ1人の人間の女の子こと、そしてゴールインできるようにフォローし、ハッピーエンドになるようにして欲しいのデース!」

ちょっと待て……今、俺を殺したって言った?

「oh……」

神はしまったという顔をする。俺はゆらゆらと神に近づき、

「貴様が諸悪の根源かあああああ!」

「NOOOOOOOO!!」

そのまま神を持ち上げて、スクリュードライバーを決めた。

俺は思わず溜息をつき、目の前の神に聞いた。

「具体的に、どこまでサポートすれば人類滅亡を回避できるんだ?」

神はキラッと歯を光らせ、なんか嬉しそうな顔をして答える。

「ボーイ……ついにやる気になってくれたんだね……!」

「やる気になったっていうか、やる気がなくてもやらせるんだろ?」

「……」

「目を逸らすな! こっち見ろ!!」

神は一瞬目を逸らし、軽く肩をすくめる。どうやら図星らしい。

「ボーイ、君にしかできないことなのデース!」

「天使からの信用無くして他の神からも見捨てられてるから俺に頼ったんじゃなくて……?」
 
「…………」

「…………」

「君が人類を救う英雄になるのデース!」

「そもそもさ、あんたが浮気したのが原因だろ?」

「…………」

「…………」

「sorry ボーイ……」

神がなんかしょぼくれて謝る。でも、こうなった以上、俺が何か言っても状況は変わらなそうだ。

「もういいよ……」

結局、もう起きちゃったことだし、しゃあないか。どうせ逃げられないなら、やるしかない。

「とりあえず、ボーイにはこの後すぐ現世に戻ってもらうデース!でも、このまま返しても多分BAD ENDしか迎えないので、このGODである私がボーイに素晴らしいギフトを授けまーす!」

神は指をパチンと鳴らす。チート能力とかくれるんだろ? 異世界転生ってそういうもんだしな。

「YES!ボーイには【死に戻り】のギフトをプレゼントしまーす!!」

「死に戻り?」 俺は眉をひそめた。まさかとは思ったけど……予想通りだ。

「死に戻りって、要するに死ぬたびにひどい目に合うやつだよな?」

「ギクゥ……」

おいおい、隠す気ないんかい。まあ、確かにそれくらいないと、何度でもやり直せる訳ないか。

「まあ、仕方ねえか……でも、これがあるならトライ&エラーでなんとかなるだろ」

「YES!失敗は成功のもとデース!」

……お前がそれ言うと腹立つな。でも、能力自体は悪くない。むしろ、かなり使える。

「この能力、どういう感じで発動すんの?」

「デッドしたら、ボーイはその日の朝に戻って、記憶もインストールされるデース!」


「そっか、なるほど。意外と普通の仕組みで助かったわ。あんたの事だから一癖ありそうだったし」

「それは心外デース……」

神は少ししょぼくれている。まあ、何はともあれこれで行けるだろ。

「じゃあ、そろそろ現世に戻らせてくれ。ラノベも読みたいし」

「OK、ボーイ、ルールは覚えてますね?」

「ああ、なんとかするさ」

「それでは、ボーイ!ファイトデース!!」

神の掛け声とともに、俺の体が不思議な渦に巻き込まれていく。

――――――――――――――――――――

「oh……大事なことを言い忘れました……まあ、また会えるし、その時でいいデース……」

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