空と舞が結婚して、数年が経った…

舞は、結婚してからアパレルの仕事を辞めて

近所でパートの仕事を始めた。



空のお義母さんは、みんなで集まるのが好きで

空の実家に集まることが多かった。

お義母さんは、その度に美味しい料理を作ってくれる。



空の義妹は…



「舞さん、ちょくちょく来るの大変でしょ?お母さん、お兄ちゃんのことが大好きだから心配なんだよ…。それに付き合わされるの面倒だよね?ごめんね…」



「面倒ではないよ…私も、みんなに会いたいし、空も楽しそうにしてるから…」



舞の気持ちは本当だった…

お義母さんは、優しくて楽しい人だし…こうして集まるのも楽しかった…



ただ…しいて言うなら…



義妹の所には、子どもがいる…

この間、2人目の子どもも生まれた…



空には、1歳上の従兄がいる。

従兄とは、兄弟みたいに育ったらしい…

その従兄は再婚だけど…

去年、子どもが生まれた…



空は、すごく子ども好きだ。

昔からそうだった。

公園とかで小さな子どもがいると…

話し掛けたり…一緒に遊んだりする。



従兄の話だと…

従兄の歳が離れた弟のことを従兄よりも可愛がっていたそうだ。



みんなで集まった時に…

その子ども達を可愛がる義妹や従兄のお嫁さんを見ると…

羨ましかった…



私達には、まだ子どもが出来ない…



お義母さんも、何も言わないけど…

きっと、空の子を見たいと思っているんだろうな…



うちのお母さんも、時々こっそりと聞いてくる。

早く、孫の顔がみたくてたまらない感じだ…



どうして、なかなか出来ないのだろうか…





ある日…

舞が勤めていたモールに1人で、ふらっと行ってみた…

何も考えずに、ウィンドショッピングをする。



すると…向こうから

ベビーカーを押し、もう一人の子どもを連れた女性が見えた。

それは、見覚えのある顔だった…

大人になっているけれど…

面影のある、その顔は…

栞だった。



舞に駆け寄って来る栞…



「舞…舞だよね?久しぶり!元気だった?」



「うん。久しぶり…元気だよ。栞は?」



「私も、この通り元気だよ…。あっ、これから時間ある?」



「うん…。大丈夫…時間あるよ」



2人で、キッズルームのあるカフェに行った。



「舞、空と結婚したんだってね。驚いたよー。空も元気?」



「うん、空も元気だよ。私も、未だに信じられない感じだよ」



「空から、私のこと聞いたんでしょ?私、ホントにバカだよね…。ま、今では、あれで良かったと思ってるよ。結婚した相手は、あの時の浮気の彼なんだ…」



「栞、幸せ?」



「うん、こうして子どももいて…すごく幸せだよ。空と舞のことを聞いても何とも思わないくらい…幸せだから安心して」



「そうか…それなら良かった。いい人と結婚して良かったね」



「うん。舞は、子どもはまだ?」



「そうなんだ…なかなか出来なくて…」



「そうか…授かりものだからね。そのうちに出来ると思うよ」



そう、言いながら子どもの顔を見る栞は、本当に幸せそうだった。



なんか、羨ましいな…



「空にも、よろしく伝えてね」



「うん…分かった。元気でね…」



栞と別れた後…

舞は、栞が幸せで良かったという気持ちと…

羨ましいという気持ちが交錯して…

なぜか、苦しかった…



空に、栞が元気で、幸せそうだったと伝えると…



「そうなんだ…良かったな…」



と、安心したような顔をした…