次の日の夜、目が覚めると見慣れない天井で八瀬童子の里にいることを思い出した。

そっか、私昨日から鬼市くんの実家に泊まってたんだっけ。

むくりと起きて枕元のスマホに手を伸ばす。時刻は20時、私たちの時間で言う朝だ。里のあやかし達はそろそろ活動を始めている頃だろう。

トークルームにメッセージが届いている。それに目を通しながら立ち上がった。

メッセージに書かれていた通りの道順に従って廊下を歩くと大広間に辿り着く。中からみんなの話し声が聞こえてそっと襖を開けた。


「お、巫寿が起きてきたぞ」

「おはよ、巫寿ちゃん。昨日は大変だったね」

「こっち座れよ」


食事の並んだテーブルを囲う皆に招かれて挨拶を返しながら席に着く。


「あれ、お兄さんは?」


昨日挨拶をしたからかお兄ちゃんの姿が見えないことを不思議に思ったらしい。

私が答えるよりも先に鬼市くんが口を開いた。


「祝寿お兄さまは朝方お戻りになった。今日は任務が入っているらしい。巫寿の事はお前に頼んだ、と任された」

「ふーん、そうなのか……って"お兄さま"?」


怪訝な顔をしたみんなに、「気にしないで」と小さく息を吐いた。

ていうかお兄ちゃん、お前に頼んだって何?