俺・栗川久咲(くりかわ ひさき)は、今一年前の約束の場所にいる。


~一年前~

「ねえ、一年後、この場所でまた一緒に桜、見よ」

そう笑ったのは、その日の翌日、引っ越した女の子・宇川水桜(うがわ みお)だった。

水桜は、桜が好きな子だった。

「いいけど」

俺は、そんな水桜のことが好きだった。

「じゃあ、約束ね」

彼女は、うれしそう笑って小指を絡ませた。

俺は、水桜の笑顔が大好きだった。


俺は、今、約束をした桜の木の下にいる。

あの約束をした後の水桜の笑顔が瞼の裏でよみがえる。

「来てくれたんだ」