旦那様の秘密を知ってしまった以上、死は避けられない。




目を瞑って、両親に感謝を言い続けた。

もちろん旦那様にも。月城家へ来てくれてありがとうと。そして、後をよろしくおねがいしますと。




ざわざわと音を立てて揺れていた木々が一斉に静まり返ると、一匹の狼がその静寂を破るように地面を蹴った。




早く終わって。

そう願うのに、蹴った音がツンと耳に響いても意識は遠のかず、何かの荒い鼻息が聞こえる。



怖いはずなのに片目だけを開き、目の前の景色を視界に入れた。



私の目の前には、背を向けた狼が一匹。




「旦那、様…?」