この言葉が、荒んだ心をどれだけ温かく包んでくれたか。


空を見上げると、さっき見た時と同じように月は全く欠けのない円をしている。





あぁ、旦那様の顔が見たい。会いたい。



目尻から一筋の涙が頬を伝い、それを指先で拭って空から顔を下ろすと、目の前には何匹もの狼たちが私を囲っていた。




どの狼も、旦那様じゃない。私を食べようと、隙を見ているのが分かる。


運の良いことに、私の背後には大きな木が控えており、狼は前と両脇に居るだけ。

でも逃げようとすれば、食べられる。威嚇しても刃向かわれて終わる。



どのみち終わりか。