「柚葉、抱きしめても問題ないか」


「え、抱きしめる!?」




考えの読めない表情で言われたものだから、余計に驚いて上擦った声が出てしまった。



「悪い。こんなこと、言うもんじゃないな。私らしくない、すまなかった」




玄関の扉を開けようと、私に背を向けた旦那様。


咄嗟に裸足で玄関に降りて、背中に手を添えた。



「待ってください。まだ、行かないで…」



政略結婚のようなもので、私の旦那様の間に愛はないと思っていたのに、私の苦しみや弱さを旦那様が受け入れてくださったことで、私の中で旦那様への愛が、心の奥にできてしまった。