あなたの隣にいてもいいですか…〜最後まで幸せと笑顔をありがとう〜

実家での真理からの食事の誘いのお陰で、すっかり機嫌が直った真司だったが…

その週の土曜日のお休みを使い早速、真理とランチデートに出かけた。

当日までの真司のウキウキぶりは、妻の弥生以外でも解るくらいご機嫌オーラがだだ漏れだったらしい…

職場で女性隊員におすすめのお店を聞いたり、自分でも色々と調べたりと、普段では見せない真司の姿があったという。

そして約束当日がウキウキモード全開だったことは、言うまでもない。

本人も意識してか知らずか、鼻歌交じりで真理の迎えに向かったそうだ。

真理の自宅に車で迎えに行き、色々とリサーチして決めたお店へ食事に行った。
笑顔と笑い声の絶えない、楽しそうな親子の食事風景だった。

食事を終え、真司の希望でイオンへ向かった。
やはり真司も真理とショッピングがしたかったのだ…
と、いうより、買ってあげたい物があった。

イオン大塔ショッピングセンター…
駐車場に車を停め、真司と真理はショッピングセンターのほうへ向かった。

さて…真司が真理に買ってあげたかった物とは…

真司は迷わず真理をアクセサリー売り場の宝石店へ連れて行った。

「えっ…?パパ…ここ、宝石店…」

「うん…パパな、今年の真理の誕生日もプレゼントあげてないし…たまにはな…」

戸惑う真理に、真司は優しく微笑みながら少し照れ臭そうに言った。

「でも、結構高そうよ…このお店…ママに怒られちゃうよぉ?」

「w…大丈夫、ちゃんとママにもお許しもらってきたから…」

心配そうな表情で問う真理に、安心しろ…と言わんばかりの笑顔で真司は答えた。

「すみません…アクアマリンで…ちょっと見せてもらっても…」

お店の店員に声をかけ、真司は真理の誕生石でもあるアクアマリンを使った物を見せてもらえるように頼んだ。

真司に声をかけられた店の店員は、営業スマイル満載で対応してきた。

「いらっしゃいませ…アクアマリンでございますね?…申し訳ありませんが、失礼ながら、ご予算のほうはどれくらいで?…」

「ん~~…そだなぁ…15〜20くらいかなぁ…」

それを聞いた真理は、びっくりしたような表情をすると慌てたように会話に入ってきた。

「ちょっ、ちょっとまって…パパ…そんな高いのいらないよぉ〜」

急な真理からの拒否に真司は不服そうに眉をしかめながら、少し拗ねたような口調で返答した。

「…べつに、いいじゃないか…たまにはさ…今日はパパが真理に買ってあげたいんだから…」

なんだかちょっといじけた子供のような表情をする真司を見て、何故か真理は自分のほうが悪いような気になってきた。

「いゃ…あのね…べつにパパからのプレゼント、欲しくないってわけじゃないの…そんな高い物、ちょっと躊躇するっていうか…普段はつけられないかな…なんてね…」

「…ん~~…なるほど…そっか…わかった…じゃぁ、真理の言い分を考慮して…そうだな…ん~~…10くらいなら、どうだ?」

「10万かぁ…ん~~…正直、まだ十分高い気もするけど…私的には1〜2万くらいのでいいんだけど?…」

「1〜2万!?真理ぃ〜、流石にそれはないだろ…こんな宝石店で、パパを甲斐性なしみたいな父親に、しないでくれよ…」

「w…わかってる…パパの気持ちも…ぅん…じゃ、10万くらいの…パパ、一緒に選んでくれる?」

そう言われた真司はそれまで真理と真司の会話を黙って側で見守っていた店員のほうを向いた。

「すみません、そういうことだから…10くらいで…いくつか見せてもらっても?…」

真司に言われた店員は、「かしこまりました…」と、笑顔で応対した。

店員が勧めてきた6点ほどのネックレスや指輪を二人で見ながら、30分ほどの時間がたった。

結局、指輪より普段つけしやすいネックレスを選んだ。

「ねっ、パパ…せっかくだから今、着けて帰っていい?」

支払いをしている真司に、真理は嬉しそうに笑顔で言った。
それを聞いた真司は、店員へ着けて帰ることを伝え、こちらもまた嬉しそうに答えた。

「じゃ、パパが着けてあげるから後ろ向いてごらん…」

後ろ髪をたくし上げながら真理は父親の前に背中を向けて立った。

その娘の首に今購入したばかりのネックレスを、後ろから手を回し真司は愛おしそうに優しく装着した。

「ありがとう、パパ…どう?…似合う?」

ご褒美を貰った子供のように目をキラキラさせながら喜ぶ真理を、誇らしそうに見つめながら真司は、うん、うん…と笑顔で頷いた。

〜〜透明で澄んだブルーの、ラテン語で「海の水」という意味を表すアクアマリン…
美しい海の精の宝物が海底から浜辺へ打ち上げられ、宝石になったというロマンチックな神話も伝えられている〜〜

生まれ月の宝石には意味があり、身に着けていれば悪いものから身を守り幸せが訪れる…

今回、宝石や誕生石のことを色々と調べ情報を得た真司は、ちょっとしたお守りがわりにでもなればという気持ちからの贈り物だった。

ただの気休めにしかならないのかもしれない…
だが…それでも、何か娘にしてあげたい…
何か力になってあげたい…
気休めでもなんでもいいから…

これが「親心」というものなのだろう。

そんな父親の気持ちを、感のいい真理はもちろん気づいていた。
と、いうより…真司自身、隠すのが下手くそなのだ。

昔から真理や妻の弥生に、プレゼントやサプライズをしようと計画しても、毎回バレバレだった。

でもそのことを真理も弥生も、いつも知らないふりをしサプライズとして喜んだ。

真司のその気持ちが嬉しかったからだ。

なので本人は毎回バレバレだったことを、今でも知らない。
もちろん、自分が隠し下手なことにも、気づいていない。

真理の体調を気にしながら歩幅を合わせて歩いてくれている優しい父親の腕に、真理は腕を回しガシッと抱きつき少し目を潤ませながら、聞こえるか聞こえないかくらいの声で呟いた。

「パパ…大好きだよ…」

「ん?なんか言ったか?」

流石に真司には聞き取りにくかったようで、不思議そうな顔をしながら聞いてきた。

「べっつに…なんでもないよ…それより、このあとどうすんの?」

「そっか?ん~~…そうだな…真理はなんか欲しい物とかはないか?」

「この前、ママ達にだいぶ買ってもらったからなぁ…」

「あぁ~…確かになぁ…まさかあんなに大量買いするとは、俺もびっくりしたよ」

少し顔を顰める(しかめる)ような表情をしながら、真司は苦笑いした。

「ほんとよぉ…まぁ、有り難いけどさぁ…だけど、あんなにどこに着ていくのよ…」

「www…まぁなぁ…でも、ママ達もそれなりに真理を甘やかしたかったわけだし、愛情表現だと思って、受け取っとてやってくれw」

「うん…わかってる…そうする…」

真理と真司は笑いながら顔を見合わせた。

「よし!じゃぁ、そこの店でお茶でもするか?」

少し前にあるケーキ屋兼喫茶店を指さしながら真司は言った。

「いいけど…どうせ、パパがチーズケーキ食べたいだけでしょ?」

ちょっと意地悪っぽく笑いながら真理は言った。

「あっ…バレたか…」

「そりゃそうよぉ…これでも、パパの娘ですから…まっ、ママには敵わないけどねw」

「そっか…パパの娘…か…」

しみじみと噛みしめるように真司は呟いた。

「なに、しんみりとしてんのよ…お店、入るんでしょ?ほら、行くよ…」

真理は真司の腕を掴み、促すように店のほうへ誘導した。

二人は店に入り、お互いにケーキセットを注文し、しばしの楽しい時間を過ごした。

その姿は仲の良い親子とも恋人同士とも見える、本当にほのぼのと暖かい空気の漂う光景だった。

満足気に笑顔で真理を愛おしそうに見つめる真司…
その姿は娘を思う父親の愛で溢れていた。