二泊三日の短いながらも、最高な時間と思い出を作り鹿屋から無事、佐世保の自宅へ帰宅してきた真理と信也。
真理は美帆との絆を改めて感じそして深め、信也は貴幸と男同士の楽しい時間を過ごしたようだ。
最初の目的よりそれ以上のものを得た二人だった。
特に自分のためにあそこまで悲しみ、悔しがって泣いてくれた美帆のそんな気持ちに、真理は感動さえ感じかみしめていた。
そんな深みのある旅行から帰ってきた真理が、次にやりたい事を実行しようとしていた。
それは…ずばり!女子会!!
と、いっても…友人や職場仲間などとやるのではなく、真理が一緒にしたいのは自分の母親と信也の母親の三人でなのだ。
女同士で気兼ねなく女子トークをしたい…
そのことを聞いた信也は、今更?…と言いながらも直ぐに輝美に連絡を入れてくれた。
真理も母親に連絡をし三人の都合を合わせ、あっという間に日どりが決まった。
早速、今日から二日後…明後日の11時に、輝美が車で迎えに来てくれることとなった。
母親の弥生もその時一緒に拾ってくれることになったが、そのことに関しては母親同士で連絡し合って…ということになった。
この真理からの思いもよらない提案に、母親達の喜びようは言うまでもなかった。
しかしそれとは裏腹に、父親の真司が少し拗ねていた…ということだったが…
自分は呼ばれなかった…
なんだか仲間外れにでもされたようで、寂しい気持ちにでもなったのだろうか…?
どちらにしろ男親というものは、娘がいくつになっても可愛くて仕方がないものなのだろう。
携帯ごしでの真理の宥めるような会話で、何とか機嫌を直したようだった。
少し長めな会話をしたことで、真理のことをちょっとだけ独り占めしたような気分になって、機嫌が良くなったようだった。
…そして、当日。約束の時間どおり、11時に輝美のお迎えが来た。
「真理ちゃぁん!迎えにきたわよぉ〜」
いつにもなく元気で明るい輝美の声が、玄関から響いた。
その声に引っ張られるように、真理が出てきた。
「あっ…お義母さん…今日はわざわざお迎えまで来てもらって…ありがとうございます」
「何いってんの…そんな水臭いこと今更言わないの…今日のプランは色々と私が考えてきたんだから…ほら、早く乗って、乗って!」
その輝美の車には真理の母親、弥生の姿もあった。
真理の姿に気づくと、弥生は窓ガラス越しに手を振った。
きちんと連絡取り合って輝美が真理の迎えに来る途中、弥生も乗せてきたのだ。
後部座席のドアを開け、輝美は真理を誘導し車に乗せた。
「おはよう…体調、大丈夫?」
少し心配そうに弥生が声をかけてきた。
「おはよ…ぅん…今はだいぶ落ち着いてる…脚の浮腫は相変わらずだけどね」
「そぅ…でも、無理しちゃだめよ…辛くなったらすぐにいいなさいよ」
運転席に乗ってきた輝美は、二人のそんな会話を聞きながら、ゆっくりと車を発進させた。
「それじゃ、しゅっぱぁつ!…あっ、私からもしつこいようだけど、真理ちゃん…辛い時はちゃんと言ってね」
ハンドルを握りながらミラー越しに輝美は真理へ優しく言った。
「はい…」
二人の母からの「心配」という名の愛情を感じながら、真理は笑顔で答えた。
さて…それはさておき、今日のプランは輝美が考えてきたということだが…
車内では親子の会話、というより完全に女同士の女子トーク、という感じで盛り上がっていた。
すると輝美が二人に提案するように聞いてきた。
「ねぇ、そろそろお腹空かない?今日はさ、たまには佐世保バーガー食べない?」
「佐世保バーガーかぁ…そうねぇ、たまにはいいわねぇ…これくらいの歳になると、あまり食べなくなったわねぇ…どう?真理もいい?」
「うん、いいよ…佐世保バーガー…確かに最近食べてないなぁ…ちょっと楽しみかも…」
真理と弥生は顔を見合わせ、笑顔で言った。
「よっしゃ!そうこなくっちゃ!実は、もう私のお気にのお店の「Kaya」に向かってるのよね」
「w…さすがお義母さん…相変わらずの行動力で…w」
「ほんとに…輝美さんの行動力には、誰もかなわないわねぇw」
輝美の相変わらずの行動力とその言葉に、真理も弥生ももう笑わずにはいられなかった。
そんな笑いで車内はいっぱいになっていた時、輝美の車は「Kaya」の駐車場に到着した。
三人は車を下り、お店のほうへ向かった。
現在の時間は、11時30分…
ちょうどランチタイムに入る時間帯で、すでに数人のお客の姿があった。
「うぅ〜ん…何バーガーにしよっかなぁ…久しぶりだし迷うわぁ…」
お店の前にあるメニュー表を覗きながら、弥生は悩みながら独り言のように言った。
その様子を見ていた輝美が、二人へ提案してきた。
「ねっ…それぞれ違うバーガー頼んで、少しずつシェアしない?」
「あっ…それいいかも…ママ、どう?」
「そうねぇ、せっかくだから色々食べてみたいわね…そうしましょっか…」
三人の意見がまとまったところで、注文を決めることに…そして決まった3品。
スペシャルバーガー(チーズ+ベーコン+エッグ)
チキンかつれつバーガー
フィッシュバーガー
それとポテトは…
なんだかんだいって「Kaya」の佐世保バーガーは、なかなかの大きさだ。
一人1つずつのポテトは、流石に食べきれるかどうか…
と、いうことでポテトは2つ…三人でシェアすることに…
飲み物はというと、お店の横にある自動販売機で購入する。
真理は烏龍茶、輝美はアイスコーヒー、弥生はアイスミルクティーを購入した。
ここのシステムではハンバーガーの注文と同時に、車のナンバーを伝え自分達は駐車場の車で待機するのだ。
注文の品が出来ると、スタッフが車まで持ってきてくれる。
注文して待つこと、約15分…
二十歳くらいの若いお姉ちゃんが、輝美の車の窓をコン、コン…と軽く叩いた。
輝美が窓を開けると、そのお姉ちゃんは手に持っていた紙袋を差し出しながら、確かめるように言った。
「えぇ〜と…車ナンバー、1033の方でよかったでしょうか?」
「はい…大丈夫でぇす」
紙袋を受け取りながら輝美は答えた。
「それでは袋の中の、ご注文の品の確認をお願いします」
そう言われ輝美は紙袋の中を覗き込み確認した。
「チキンかつ、スペシャル、フィッシュ…ポテト2つ…OKです!」
それを聞くと品を届けたお姉ちゃんはニッコリ笑い、「ありがとうございましたぁ」と言いながらペコリと頭を下げると、車から離れお店のほうへ帰って行った。
佐世保バーガーの入った紙袋を助手席のほうへ置き、輝美は駐車場から出発した。
「さてと…これ持って今からハウステンボスに行こうかと思ってるんですけど…天気もいいし…お二方、どうですかぁ?」
「いいですねぇ〜、天気もいいですし…散歩感覚で…あっ、真理…足、大丈夫?」
「普通に歩くくらいは大丈夫よ…確かに、長時間はちょっとキツイかもだけど…お外でハンバーガーて、ピクニックみたいで楽しそうじゃない?」
「よぉ〜し!では、ハウステンボスへ向かいまぁす!」
二人の了承を得ると、輝美は改めて目的地を告げた。
「了解ぃ〜!レッツゴー!」×2
真理と弥生が声を揃えて言った。
目的地までのその間も車内での女子トークは、笑いも尽きず盛り上がっていた。
そして気がつくと…
目的地、ハウステンボスへ到着していた。
約30分ほどの道のりだっただろうか…
駐車場に車を停め、三人はチケット売り場へ向かった。
「大人、3枚…一日チケットお願いします」
チケットを買おうした真理を輝美が止め、弥生が三人分のチケットを購入した。
そして自分のぶんのチケット代を弥生に渡そうとバックから財布を出そうとする真理の手を、またもや輝美がスッと優しく止めた。
「今日は、母親の私達に甘えなさい…」
そう言うと輝美は弥生のほうを向き、二人はお互いに目で合図を送り合った。
なるほど…輝美と弥生は、前もって話し合っていたのだ。
当日は真理のことを母親として、二人で甘やかそうと…
「そうよ、真理。今日くらいはママ達に素直に甘えときなさい…お金だって、これから色々と必要になるでしょ?」
「そぅ、そぅ…今日は私達が真理ちゃんのこといぃ〜ぱい甘やかすって、決めてんだから…ねっ!」
二人からのそんな言葉を聞かされ真理は胸がいっぱいになり、そしてじわぁ〜…と暖かくなるのがわかった。
何か返事を返さなきゃ…と思いながらも、胸がいっぱいすぎて言葉が出なかった。
それを察するように輝美と弥生は、お互いに真理の手をとり入場口へ誘導した。
「ほら、ほら…いつまでも突っ立ってないで、中入ってお昼にしましょ!もう私、お腹ペコペコよぉ…」
輝美のその言葉に弥生も同意するように言った。
「ほんとねぇ…実はさっき、私お腹が鳴ったのよね…」
「えっ…やだママ、恥ずかしい…そんなにお腹空いてたの?」
ちょっと弥生のことをからかおうと、少し意地悪っぽく言った真理のお腹からも…
ぐぅ~〜…
「あら?真理…あなたも人のこと言えないじゃない?」
すかさず弥生は意地悪っぽく笑いながら、真理に言った。
「面目ないです…」
少し顔を赤らめながら、真理はシュン…となった。
「はい、はい…今日はそんな顔しないの…ほら、あそこ…あそこで食べましょ…」
パラソルの下にテーブルが置いてある、休憩場所のような所を指さしながら、輝美が言った。
三人それぞれ椅子に座ると、輝美は持ってきた佐世保バーガーとポテトを紙袋から取り出した。
平日だからかそんなに混雑しておらず、ゆったりと落ち着いた雰囲気だった。
「たまにはいいわねぇ、こういうのも…美味しいお店やレストランもいいけど、こうやって外の空気を吸いながらっていうのも悪くないわね…」
周りを見回しながら、弥生は清々しそうな表情で言った。
持ち込んできたバーガーを、まずはそれぞれ二口ほど食べお互いに交換した。
三種類のバーガーを三人でシェアしあって食べた。
「うぅ〜ん…美味しい…ちょっと冷めちゃったけど…なんだか学生時代に返ったみたいで、いいわねぇ」
「ほんとに…学校帰りによく友達と買い食いしてたわぁ…」
「へぇ~…ママ達も学校帰りとかに買い食いとかしてたんだぁ…」
「そりゃあねぇ…私達にだってそういう若い頃があったわよぉ、ねぇ?輝美さん?」
「まぁねぇ…私はどっちかっていうと、明(あきら)と…あっ、亡くなった信也の父親なんだけど…同級生で家も近所だったから、よく一緒に買い食いしたかなぁ…」
「あっ…お義母さんからしん君のお父さんの話聞くの、初めて…よければもっと聞かせてください…お義母さんが嫌じゃなければ、もっと聞きたいです…ねっ?ママ?」
「そうねぇ…私も輝美さんのダーリンの話、聞いてみたいわぁ…」
「えぇ~…べつにそんな、期待するような話なんてないわよぉ?」
「いやぁ~…でも、同級生だったわけでしょ?それがどうやって恋人になったのか、とか…どっちから告白したのか…とか?やっぱり、そういうのは輝美さんから?」
「あっ、それに関しては、実はね………」
弥生からのちょっとした問いに、輝美は明からのほとんどプロポーズに近い告白のこと、それまでの熱烈なアプローチの日々のことなどを、少し恥ずかしそうに話しした。
「しん君のお父さんって、お義母さんにベタ惚れだったんですねぇ…なんだか、ロマンチスト?な感じの人?」
「そぉねぇ…確かに…私の誕生日に花束持って帰ってきたり、誕生石の入ってるネックレスをサプライズで準備してたり…それっぽいとこ結構あったかもね…」
懐かしそうに微笑みながら、輝美は言った。
そんな話の内容から、弥生と真司の話にもなり色々と話の内容も尽きず、気がつくと15時前に…
偶然、腕時計が目にはいった真理が、素っ頓狂な声をだして言った。
「あっ!もう3時になりますよ…」
「あら、ほんと…お喋りに夢中になっちゃって、時間を忘れちゃってたわ」
真理に言われ輝美も自分の腕時計を見ながら、少し驚いたように言った。
「どうします?食後の運動がてら、少し歩きます?お土産のお店とかもありますし…」
弥生からの提案に二人は賛成し、テーブルを片付けるとお店のほうへ向かって歩き始めた。
真理の足の状態に合わせ、お喋りをしながらゆっくりと…
お店は総合売店もあれば、種類別でわけてあるお店など色々とあった。
その中の一つの「チーズの城」という販売店で、三人は『シュフォンボブチーズケーキ』をそれぞれ購入した。
真理は信也へのお土産に、弥生も真司へ、そして輝美はもちろん自分用と美容室のスタッフ達へ…
その後、総合売店に行き、三人でお揃いのキーホルダーを買った。
お店を出るとお互いバックにそのキーホルダーを付け、友達同士のようにはしゃぎながら出口へ向かい、ハウステンボスから退場した。
駐車場へ向かい車に乗車すると、先ほど歩きながら次の行動を決めていた三人は、声を揃えて言った。
「次の場所へ、レッツゴー!」✕3
そして向かった場所は、イオン大塔ショッピングセンター…
現在の時間は、17時…
輝美と弥生の二人共通の願い、今日一番の最大イベント!
それは…真理と一緒にお洋服選び&ショッピング!
ああでもないこうでもない、これもいいね、あれもいいね…
こっちも着てみて、これも着てみて…
輝美と弥生の要望に、真理は試着室を出たり入ったり、大忙しだった。
ほとんど着せ替え人形のように、プチファッションショー状態だった。
そして気がつけば洋服にパジャマ、靴や帽子、小物入れポーチ、イヤリングなど…
三人の両手は買い物袋でいっぱいになっていた。
それらは全部、輝美と弥生が真理に買い与えた物だった。
始めは遠慮がちに断る仕草をしていた真理だったが、結局は二人の気のすむまま流れに任せてしまった。
お陰で輝美と弥生は満足そうに、満面の笑みだった。
そんなほとんどが母親達の真理への自己満足に近いショッピングで、二時間ほどたったところで弥生の携帯が鳴った。
「あら…主人からだわ…何かしら…ちょっとごめんなさい…」
そう言いながら弥生は二人から少し離れて、携帯にでた。
その様子を残された二人は、顔を見合わせながら静かに見守っていた。
3〜4分ほどの会話をすると、弥生は少し可笑し(おかし)そうに笑いながら二人の元へ帰ってきた。
「あの人、そろそろ真理を解放してやれって…それでね、信也君も家に来て夕飯の準備もしてるから、帰ってこいって言うのよ…どうする?」
「やだ…パパったら、まだ機嫌直ってなかったの?…はぁ〜、しょうがないなぁ…」
「まっ、でも…うちの信也もお邪魔してるみたいだし、せっかくお食事も準備してくれてるみたいだし…それに、確かにそろそろお腹も空いてきまん?…帰りますか…」
「そうねぇ…男二人で何を作ったのか、わかりませんけど…せっかく準備してくれたわけだし、無駄にするのも可哀想ですもんね」
「えっ…でも私パパの料理、結構好きよ…男料理、て感じなとこもあるけど…子供の頃、たまに作ってもらった記憶あるけど、それなりに美味しかったわよ」
「あらま…真理ちゃん、その言葉…直接、パパさんに言ってあげなさいな…絶対、喜ぶわよ」
「ぅんぅん…そうね、もう泣いて喜ぶかもよぉ…なんなら機嫌なんてあっという間に直っちゃうかも…なんだかんだ言って、結局あの人も子離れしてない親バカなのよぉ…w」
クスクスと笑いながら弥生は言った。
そんな会話をしながら三人はお店を出て、駐車場へ向かい車に乗ると弥生の自宅、坂之下家へ向かった。
その道中の車内では相変わらず女子トークで盛り上がっていた。
真理は美帆との絆を改めて感じそして深め、信也は貴幸と男同士の楽しい時間を過ごしたようだ。
最初の目的よりそれ以上のものを得た二人だった。
特に自分のためにあそこまで悲しみ、悔しがって泣いてくれた美帆のそんな気持ちに、真理は感動さえ感じかみしめていた。
そんな深みのある旅行から帰ってきた真理が、次にやりたい事を実行しようとしていた。
それは…ずばり!女子会!!
と、いっても…友人や職場仲間などとやるのではなく、真理が一緒にしたいのは自分の母親と信也の母親の三人でなのだ。
女同士で気兼ねなく女子トークをしたい…
そのことを聞いた信也は、今更?…と言いながらも直ぐに輝美に連絡を入れてくれた。
真理も母親に連絡をし三人の都合を合わせ、あっという間に日どりが決まった。
早速、今日から二日後…明後日の11時に、輝美が車で迎えに来てくれることとなった。
母親の弥生もその時一緒に拾ってくれることになったが、そのことに関しては母親同士で連絡し合って…ということになった。
この真理からの思いもよらない提案に、母親達の喜びようは言うまでもなかった。
しかしそれとは裏腹に、父親の真司が少し拗ねていた…ということだったが…
自分は呼ばれなかった…
なんだか仲間外れにでもされたようで、寂しい気持ちにでもなったのだろうか…?
どちらにしろ男親というものは、娘がいくつになっても可愛くて仕方がないものなのだろう。
携帯ごしでの真理の宥めるような会話で、何とか機嫌を直したようだった。
少し長めな会話をしたことで、真理のことをちょっとだけ独り占めしたような気分になって、機嫌が良くなったようだった。
…そして、当日。約束の時間どおり、11時に輝美のお迎えが来た。
「真理ちゃぁん!迎えにきたわよぉ〜」
いつにもなく元気で明るい輝美の声が、玄関から響いた。
その声に引っ張られるように、真理が出てきた。
「あっ…お義母さん…今日はわざわざお迎えまで来てもらって…ありがとうございます」
「何いってんの…そんな水臭いこと今更言わないの…今日のプランは色々と私が考えてきたんだから…ほら、早く乗って、乗って!」
その輝美の車には真理の母親、弥生の姿もあった。
真理の姿に気づくと、弥生は窓ガラス越しに手を振った。
きちんと連絡取り合って輝美が真理の迎えに来る途中、弥生も乗せてきたのだ。
後部座席のドアを開け、輝美は真理を誘導し車に乗せた。
「おはよう…体調、大丈夫?」
少し心配そうに弥生が声をかけてきた。
「おはよ…ぅん…今はだいぶ落ち着いてる…脚の浮腫は相変わらずだけどね」
「そぅ…でも、無理しちゃだめよ…辛くなったらすぐにいいなさいよ」
運転席に乗ってきた輝美は、二人のそんな会話を聞きながら、ゆっくりと車を発進させた。
「それじゃ、しゅっぱぁつ!…あっ、私からもしつこいようだけど、真理ちゃん…辛い時はちゃんと言ってね」
ハンドルを握りながらミラー越しに輝美は真理へ優しく言った。
「はい…」
二人の母からの「心配」という名の愛情を感じながら、真理は笑顔で答えた。
さて…それはさておき、今日のプランは輝美が考えてきたということだが…
車内では親子の会話、というより完全に女同士の女子トーク、という感じで盛り上がっていた。
すると輝美が二人に提案するように聞いてきた。
「ねぇ、そろそろお腹空かない?今日はさ、たまには佐世保バーガー食べない?」
「佐世保バーガーかぁ…そうねぇ、たまにはいいわねぇ…これくらいの歳になると、あまり食べなくなったわねぇ…どう?真理もいい?」
「うん、いいよ…佐世保バーガー…確かに最近食べてないなぁ…ちょっと楽しみかも…」
真理と弥生は顔を見合わせ、笑顔で言った。
「よっしゃ!そうこなくっちゃ!実は、もう私のお気にのお店の「Kaya」に向かってるのよね」
「w…さすがお義母さん…相変わらずの行動力で…w」
「ほんとに…輝美さんの行動力には、誰もかなわないわねぇw」
輝美の相変わらずの行動力とその言葉に、真理も弥生ももう笑わずにはいられなかった。
そんな笑いで車内はいっぱいになっていた時、輝美の車は「Kaya」の駐車場に到着した。
三人は車を下り、お店のほうへ向かった。
現在の時間は、11時30分…
ちょうどランチタイムに入る時間帯で、すでに数人のお客の姿があった。
「うぅ〜ん…何バーガーにしよっかなぁ…久しぶりだし迷うわぁ…」
お店の前にあるメニュー表を覗きながら、弥生は悩みながら独り言のように言った。
その様子を見ていた輝美が、二人へ提案してきた。
「ねっ…それぞれ違うバーガー頼んで、少しずつシェアしない?」
「あっ…それいいかも…ママ、どう?」
「そうねぇ、せっかくだから色々食べてみたいわね…そうしましょっか…」
三人の意見がまとまったところで、注文を決めることに…そして決まった3品。
スペシャルバーガー(チーズ+ベーコン+エッグ)
チキンかつれつバーガー
フィッシュバーガー
それとポテトは…
なんだかんだいって「Kaya」の佐世保バーガーは、なかなかの大きさだ。
一人1つずつのポテトは、流石に食べきれるかどうか…
と、いうことでポテトは2つ…三人でシェアすることに…
飲み物はというと、お店の横にある自動販売機で購入する。
真理は烏龍茶、輝美はアイスコーヒー、弥生はアイスミルクティーを購入した。
ここのシステムではハンバーガーの注文と同時に、車のナンバーを伝え自分達は駐車場の車で待機するのだ。
注文の品が出来ると、スタッフが車まで持ってきてくれる。
注文して待つこと、約15分…
二十歳くらいの若いお姉ちゃんが、輝美の車の窓をコン、コン…と軽く叩いた。
輝美が窓を開けると、そのお姉ちゃんは手に持っていた紙袋を差し出しながら、確かめるように言った。
「えぇ〜と…車ナンバー、1033の方でよかったでしょうか?」
「はい…大丈夫でぇす」
紙袋を受け取りながら輝美は答えた。
「それでは袋の中の、ご注文の品の確認をお願いします」
そう言われ輝美は紙袋の中を覗き込み確認した。
「チキンかつ、スペシャル、フィッシュ…ポテト2つ…OKです!」
それを聞くと品を届けたお姉ちゃんはニッコリ笑い、「ありがとうございましたぁ」と言いながらペコリと頭を下げると、車から離れお店のほうへ帰って行った。
佐世保バーガーの入った紙袋を助手席のほうへ置き、輝美は駐車場から出発した。
「さてと…これ持って今からハウステンボスに行こうかと思ってるんですけど…天気もいいし…お二方、どうですかぁ?」
「いいですねぇ〜、天気もいいですし…散歩感覚で…あっ、真理…足、大丈夫?」
「普通に歩くくらいは大丈夫よ…確かに、長時間はちょっとキツイかもだけど…お外でハンバーガーて、ピクニックみたいで楽しそうじゃない?」
「よぉ〜し!では、ハウステンボスへ向かいまぁす!」
二人の了承を得ると、輝美は改めて目的地を告げた。
「了解ぃ〜!レッツゴー!」×2
真理と弥生が声を揃えて言った。
目的地までのその間も車内での女子トークは、笑いも尽きず盛り上がっていた。
そして気がつくと…
目的地、ハウステンボスへ到着していた。
約30分ほどの道のりだっただろうか…
駐車場に車を停め、三人はチケット売り場へ向かった。
「大人、3枚…一日チケットお願いします」
チケットを買おうした真理を輝美が止め、弥生が三人分のチケットを購入した。
そして自分のぶんのチケット代を弥生に渡そうとバックから財布を出そうとする真理の手を、またもや輝美がスッと優しく止めた。
「今日は、母親の私達に甘えなさい…」
そう言うと輝美は弥生のほうを向き、二人はお互いに目で合図を送り合った。
なるほど…輝美と弥生は、前もって話し合っていたのだ。
当日は真理のことを母親として、二人で甘やかそうと…
「そうよ、真理。今日くらいはママ達に素直に甘えときなさい…お金だって、これから色々と必要になるでしょ?」
「そぅ、そぅ…今日は私達が真理ちゃんのこといぃ〜ぱい甘やかすって、決めてんだから…ねっ!」
二人からのそんな言葉を聞かされ真理は胸がいっぱいになり、そしてじわぁ〜…と暖かくなるのがわかった。
何か返事を返さなきゃ…と思いながらも、胸がいっぱいすぎて言葉が出なかった。
それを察するように輝美と弥生は、お互いに真理の手をとり入場口へ誘導した。
「ほら、ほら…いつまでも突っ立ってないで、中入ってお昼にしましょ!もう私、お腹ペコペコよぉ…」
輝美のその言葉に弥生も同意するように言った。
「ほんとねぇ…実はさっき、私お腹が鳴ったのよね…」
「えっ…やだママ、恥ずかしい…そんなにお腹空いてたの?」
ちょっと弥生のことをからかおうと、少し意地悪っぽく言った真理のお腹からも…
ぐぅ~〜…
「あら?真理…あなたも人のこと言えないじゃない?」
すかさず弥生は意地悪っぽく笑いながら、真理に言った。
「面目ないです…」
少し顔を赤らめながら、真理はシュン…となった。
「はい、はい…今日はそんな顔しないの…ほら、あそこ…あそこで食べましょ…」
パラソルの下にテーブルが置いてある、休憩場所のような所を指さしながら、輝美が言った。
三人それぞれ椅子に座ると、輝美は持ってきた佐世保バーガーとポテトを紙袋から取り出した。
平日だからかそんなに混雑しておらず、ゆったりと落ち着いた雰囲気だった。
「たまにはいいわねぇ、こういうのも…美味しいお店やレストランもいいけど、こうやって外の空気を吸いながらっていうのも悪くないわね…」
周りを見回しながら、弥生は清々しそうな表情で言った。
持ち込んできたバーガーを、まずはそれぞれ二口ほど食べお互いに交換した。
三種類のバーガーを三人でシェアしあって食べた。
「うぅ〜ん…美味しい…ちょっと冷めちゃったけど…なんだか学生時代に返ったみたいで、いいわねぇ」
「ほんとに…学校帰りによく友達と買い食いしてたわぁ…」
「へぇ~…ママ達も学校帰りとかに買い食いとかしてたんだぁ…」
「そりゃあねぇ…私達にだってそういう若い頃があったわよぉ、ねぇ?輝美さん?」
「まぁねぇ…私はどっちかっていうと、明(あきら)と…あっ、亡くなった信也の父親なんだけど…同級生で家も近所だったから、よく一緒に買い食いしたかなぁ…」
「あっ…お義母さんからしん君のお父さんの話聞くの、初めて…よければもっと聞かせてください…お義母さんが嫌じゃなければ、もっと聞きたいです…ねっ?ママ?」
「そうねぇ…私も輝美さんのダーリンの話、聞いてみたいわぁ…」
「えぇ~…べつにそんな、期待するような話なんてないわよぉ?」
「いやぁ~…でも、同級生だったわけでしょ?それがどうやって恋人になったのか、とか…どっちから告白したのか…とか?やっぱり、そういうのは輝美さんから?」
「あっ、それに関しては、実はね………」
弥生からのちょっとした問いに、輝美は明からのほとんどプロポーズに近い告白のこと、それまでの熱烈なアプローチの日々のことなどを、少し恥ずかしそうに話しした。
「しん君のお父さんって、お義母さんにベタ惚れだったんですねぇ…なんだか、ロマンチスト?な感じの人?」
「そぉねぇ…確かに…私の誕生日に花束持って帰ってきたり、誕生石の入ってるネックレスをサプライズで準備してたり…それっぽいとこ結構あったかもね…」
懐かしそうに微笑みながら、輝美は言った。
そんな話の内容から、弥生と真司の話にもなり色々と話の内容も尽きず、気がつくと15時前に…
偶然、腕時計が目にはいった真理が、素っ頓狂な声をだして言った。
「あっ!もう3時になりますよ…」
「あら、ほんと…お喋りに夢中になっちゃって、時間を忘れちゃってたわ」
真理に言われ輝美も自分の腕時計を見ながら、少し驚いたように言った。
「どうします?食後の運動がてら、少し歩きます?お土産のお店とかもありますし…」
弥生からの提案に二人は賛成し、テーブルを片付けるとお店のほうへ向かって歩き始めた。
真理の足の状態に合わせ、お喋りをしながらゆっくりと…
お店は総合売店もあれば、種類別でわけてあるお店など色々とあった。
その中の一つの「チーズの城」という販売店で、三人は『シュフォンボブチーズケーキ』をそれぞれ購入した。
真理は信也へのお土産に、弥生も真司へ、そして輝美はもちろん自分用と美容室のスタッフ達へ…
その後、総合売店に行き、三人でお揃いのキーホルダーを買った。
お店を出るとお互いバックにそのキーホルダーを付け、友達同士のようにはしゃぎながら出口へ向かい、ハウステンボスから退場した。
駐車場へ向かい車に乗車すると、先ほど歩きながら次の行動を決めていた三人は、声を揃えて言った。
「次の場所へ、レッツゴー!」✕3
そして向かった場所は、イオン大塔ショッピングセンター…
現在の時間は、17時…
輝美と弥生の二人共通の願い、今日一番の最大イベント!
それは…真理と一緒にお洋服選び&ショッピング!
ああでもないこうでもない、これもいいね、あれもいいね…
こっちも着てみて、これも着てみて…
輝美と弥生の要望に、真理は試着室を出たり入ったり、大忙しだった。
ほとんど着せ替え人形のように、プチファッションショー状態だった。
そして気がつけば洋服にパジャマ、靴や帽子、小物入れポーチ、イヤリングなど…
三人の両手は買い物袋でいっぱいになっていた。
それらは全部、輝美と弥生が真理に買い与えた物だった。
始めは遠慮がちに断る仕草をしていた真理だったが、結局は二人の気のすむまま流れに任せてしまった。
お陰で輝美と弥生は満足そうに、満面の笑みだった。
そんなほとんどが母親達の真理への自己満足に近いショッピングで、二時間ほどたったところで弥生の携帯が鳴った。
「あら…主人からだわ…何かしら…ちょっとごめんなさい…」
そう言いながら弥生は二人から少し離れて、携帯にでた。
その様子を残された二人は、顔を見合わせながら静かに見守っていた。
3〜4分ほどの会話をすると、弥生は少し可笑し(おかし)そうに笑いながら二人の元へ帰ってきた。
「あの人、そろそろ真理を解放してやれって…それでね、信也君も家に来て夕飯の準備もしてるから、帰ってこいって言うのよ…どうする?」
「やだ…パパったら、まだ機嫌直ってなかったの?…はぁ〜、しょうがないなぁ…」
「まっ、でも…うちの信也もお邪魔してるみたいだし、せっかくお食事も準備してくれてるみたいだし…それに、確かにそろそろお腹も空いてきまん?…帰りますか…」
「そうねぇ…男二人で何を作ったのか、わかりませんけど…せっかく準備してくれたわけだし、無駄にするのも可哀想ですもんね」
「えっ…でも私パパの料理、結構好きよ…男料理、て感じなとこもあるけど…子供の頃、たまに作ってもらった記憶あるけど、それなりに美味しかったわよ」
「あらま…真理ちゃん、その言葉…直接、パパさんに言ってあげなさいな…絶対、喜ぶわよ」
「ぅんぅん…そうね、もう泣いて喜ぶかもよぉ…なんなら機嫌なんてあっという間に直っちゃうかも…なんだかんだ言って、結局あの人も子離れしてない親バカなのよぉ…w」
クスクスと笑いながら弥生は言った。
そんな会話をしながら三人はお店を出て、駐車場へ向かい車に乗ると弥生の自宅、坂之下家へ向かった。
その道中の車内では相変わらず女子トークで盛り上がっていた。
