三日間の検査入院を終え退院し自宅へ帰ってきた真理だが、無理をしない程度に仕事へも復帰した。
相変わらず脚の浮腫はあるが、その他の症状はだいぶ落ち着いている。
今回も結果待ちなわけで、病院から連絡がくることになっている。
信也は仕事から帰ってくると、連絡はなかったか?…と毎日のように真理に聞いた。
その度に、まだだよ…あったら教えるから…というような毎回同じ答えを返した。
そんなある日…
真理の携帯に、一本の電話が入った。
病院の受付けからだった。
もちろん内容は結果やその他もろもろの話の為、病院へ来院してほしい、ということだ。
早速、次の日に病院へ向かった。
仕事も急だったが休みをもらえた。
信也には、無理して休まなくても大丈夫…と言ったのだが、頑として譲らず休みをとって付き添ってきた。
病院に着くと前回の時に通された部屋へ案内された。
信也は真理の手を握り、目を閉じ口をギュッとへの字にして黙っていた。
「しん君、眉間にシワよってる…もう少し体の力ぬいたら?…」
真理は信也の眉間をスリスリとさすりながら、落ち着いた口調で声をかけた。
「あっ…ごめん…ん~~…」
目を開け眉間のシワを無くし、信也は大きく深呼吸をしたかと思うと、今度は腕組みをし銅像のように固まった。
「プッ…wだからさ…そんなに緊張して構えなくても…w」
意外にも真理のほうは落ち着いている様子で、クスクスと笑いさえあった。
そんな真理を信也は疑い深く思いながら、心配していた。
またいつものように、無理しているのではないか…
無理して笑っているんじゃないか…
一番不安で辛いのは、彼女のはずなのに…
目の前で強がっている妻に、気のきいた慰めの言葉さえもかけてあげられない自分を、情けなく思っている信也だった。
その時…コン、コン…
扉をノックし例の医師が看護師と入ってきた。
「お待たせしました。えぇ〜と…早速ですがお話のほうを…………」
医師は持ってきたノートパソコンを開けながら、淡々と話を始めた。
やはり子宮体癌は間違いないようだ。
今回の組織診、画像診断などの検査結果から、治療法の選択、検討をしていくというのだが…
子宮体癌の治療法の基本は、子宮提出であり推定の進行期に応じて手術の範囲、方法を決めて行うということ…
そしてその切除した病変を用いて病理検査を行い、術後の追加の治療の必要性や方法を検討するということ…
それらの説明を二人はじっ…と黙って聞いていた。
さっきまでクスクス笑っていた真理も、一点を見つめ強張った表情になっていた。
信也も口をギュッと噛み締め、またもやへの字にしていた。
質問、聞きたいこと…色々あったはずなのに、結局口にした言葉は一つだった。
「…子宮摘出ってことは…子供はもう…無理ってことですよね…」
沈んだような低い声で絞り出すように聞いてきた信也に、医師は申し訳なさそうな表情をしがら答えた。
「残念ながら…」
その言葉を聞くか聞かずか、真理は顔を覆い泣き崩れ、信也は天井を仰ぐように上を向き涙を流した。
そんな二人を目の前に、医師も看護師もかける言葉もなくただ黙って見守るしかなかった。
そして真理と信也が一際(ひときわ)涙を流し少し落ち着いた頃を見極めると、医師は看護師に言って持ってこさせておいた温かいお茶を二人にすすめた。
「どうですか?少しは落ち着きましたか?…まぁ…とりあえず…お茶でも飲んで…」
医師にすすめられたお茶を、真理は涙を拭いながら黙って手に取り一口飲んだ。
それを見ながら信也は大きく深呼吸をし、そしてこちらも黙って一口お茶を飲んだ。
二人の様子を見守りながら医師は話をするタイミングを見計らっていた。
「では…話の続きをさせてもらっても…大丈夫…かな?…」
医師は二人の顔を覗き込むようにして見ると、尋ねるかのように語りかけた。
「すいません…お願いします…」
真理と信也、ほとんど被る(かぶる)ように返答した。
「では…手術の日時やその他、お話のほうを…………」
医師は手術の日時やその術式、その後の治療やケアについて、再発についてなどをまたもや淡々と説明していった。
術式は『広汎子宮全摘出術(こうはんしきゅうぜんてきしゅつじゅつ)』
摘出した病変を病理検査へ用いて、術後の治療法や経過観察の検討…
経過観察は再発や転移、手術後のさまざまな合併症や後遺症などを出来るだけ早期に発見し、治療に繋げるために行う…
今回は手術し、病理検査での診断にて進行期を判断され、それに応じた治療を行う…
Ⅰ〜Ⅱ期と判断されれば、そこから経過観察へ、Ⅲ〜Ⅳ期と判断されれば、リスク因子に応じて化学療法が追加される…
経過観察は5年がひと区切りと考えられている…
ともかく手術で子宮と両側付属器(卵管、卵巣)を取り除かなければならない。
その日時は、1ヶ月後に決まった。
医師からの説明後、「手術同意書」やその他の書類等などにサインをした。
その、サインをする手は真理も信也も少し震えていた。
そして二人共、無言であった。
ところどころで医師が書類の説明のため、声をかけたが真理も信也も黙って頷くだけだった。
色々と終え、真理と信也はお互いかける言葉もなく少し気まずい雰囲気ながらも、信也は真理の肩を優しく包むように抱き支えながら、部屋を出ていった。
その二人の後ろ姿には、黒くどんよりとした悲しみや辛さのオーラが見えるようであった。
病院を出て車に乗り込む時も、二人は無言だった。
その時、二人が考えていたことはたぶん、同じようなことだろう。
子供のこと…
そう、子供が産めなくなるという、ショッキングな現実…
もちろん、病気のことへの不安や心配も大きくある。
これからの日々は、今までような普通の生活はできなくなるであろう…
色々と変わることがあるであろう…
帰りの車内、お互いに黙りこくったまま自宅へ向かっていた。
相変わらず脚の浮腫はあるが、その他の症状はだいぶ落ち着いている。
今回も結果待ちなわけで、病院から連絡がくることになっている。
信也は仕事から帰ってくると、連絡はなかったか?…と毎日のように真理に聞いた。
その度に、まだだよ…あったら教えるから…というような毎回同じ答えを返した。
そんなある日…
真理の携帯に、一本の電話が入った。
病院の受付けからだった。
もちろん内容は結果やその他もろもろの話の為、病院へ来院してほしい、ということだ。
早速、次の日に病院へ向かった。
仕事も急だったが休みをもらえた。
信也には、無理して休まなくても大丈夫…と言ったのだが、頑として譲らず休みをとって付き添ってきた。
病院に着くと前回の時に通された部屋へ案内された。
信也は真理の手を握り、目を閉じ口をギュッとへの字にして黙っていた。
「しん君、眉間にシワよってる…もう少し体の力ぬいたら?…」
真理は信也の眉間をスリスリとさすりながら、落ち着いた口調で声をかけた。
「あっ…ごめん…ん~~…」
目を開け眉間のシワを無くし、信也は大きく深呼吸をしたかと思うと、今度は腕組みをし銅像のように固まった。
「プッ…wだからさ…そんなに緊張して構えなくても…w」
意外にも真理のほうは落ち着いている様子で、クスクスと笑いさえあった。
そんな真理を信也は疑い深く思いながら、心配していた。
またいつものように、無理しているのではないか…
無理して笑っているんじゃないか…
一番不安で辛いのは、彼女のはずなのに…
目の前で強がっている妻に、気のきいた慰めの言葉さえもかけてあげられない自分を、情けなく思っている信也だった。
その時…コン、コン…
扉をノックし例の医師が看護師と入ってきた。
「お待たせしました。えぇ〜と…早速ですがお話のほうを…………」
医師は持ってきたノートパソコンを開けながら、淡々と話を始めた。
やはり子宮体癌は間違いないようだ。
今回の組織診、画像診断などの検査結果から、治療法の選択、検討をしていくというのだが…
子宮体癌の治療法の基本は、子宮提出であり推定の進行期に応じて手術の範囲、方法を決めて行うということ…
そしてその切除した病変を用いて病理検査を行い、術後の追加の治療の必要性や方法を検討するということ…
それらの説明を二人はじっ…と黙って聞いていた。
さっきまでクスクス笑っていた真理も、一点を見つめ強張った表情になっていた。
信也も口をギュッと噛み締め、またもやへの字にしていた。
質問、聞きたいこと…色々あったはずなのに、結局口にした言葉は一つだった。
「…子宮摘出ってことは…子供はもう…無理ってことですよね…」
沈んだような低い声で絞り出すように聞いてきた信也に、医師は申し訳なさそうな表情をしがら答えた。
「残念ながら…」
その言葉を聞くか聞かずか、真理は顔を覆い泣き崩れ、信也は天井を仰ぐように上を向き涙を流した。
そんな二人を目の前に、医師も看護師もかける言葉もなくただ黙って見守るしかなかった。
そして真理と信也が一際(ひときわ)涙を流し少し落ち着いた頃を見極めると、医師は看護師に言って持ってこさせておいた温かいお茶を二人にすすめた。
「どうですか?少しは落ち着きましたか?…まぁ…とりあえず…お茶でも飲んで…」
医師にすすめられたお茶を、真理は涙を拭いながら黙って手に取り一口飲んだ。
それを見ながら信也は大きく深呼吸をし、そしてこちらも黙って一口お茶を飲んだ。
二人の様子を見守りながら医師は話をするタイミングを見計らっていた。
「では…話の続きをさせてもらっても…大丈夫…かな?…」
医師は二人の顔を覗き込むようにして見ると、尋ねるかのように語りかけた。
「すいません…お願いします…」
真理と信也、ほとんど被る(かぶる)ように返答した。
「では…手術の日時やその他、お話のほうを…………」
医師は手術の日時やその術式、その後の治療やケアについて、再発についてなどをまたもや淡々と説明していった。
術式は『広汎子宮全摘出術(こうはんしきゅうぜんてきしゅつじゅつ)』
摘出した病変を病理検査へ用いて、術後の治療法や経過観察の検討…
経過観察は再発や転移、手術後のさまざまな合併症や後遺症などを出来るだけ早期に発見し、治療に繋げるために行う…
今回は手術し、病理検査での診断にて進行期を判断され、それに応じた治療を行う…
Ⅰ〜Ⅱ期と判断されれば、そこから経過観察へ、Ⅲ〜Ⅳ期と判断されれば、リスク因子に応じて化学療法が追加される…
経過観察は5年がひと区切りと考えられている…
ともかく手術で子宮と両側付属器(卵管、卵巣)を取り除かなければならない。
その日時は、1ヶ月後に決まった。
医師からの説明後、「手術同意書」やその他の書類等などにサインをした。
その、サインをする手は真理も信也も少し震えていた。
そして二人共、無言であった。
ところどころで医師が書類の説明のため、声をかけたが真理も信也も黙って頷くだけだった。
色々と終え、真理と信也はお互いかける言葉もなく少し気まずい雰囲気ながらも、信也は真理の肩を優しく包むように抱き支えながら、部屋を出ていった。
その二人の後ろ姿には、黒くどんよりとした悲しみや辛さのオーラが見えるようであった。
病院を出て車に乗り込む時も、二人は無言だった。
その時、二人が考えていたことはたぶん、同じようなことだろう。
子供のこと…
そう、子供が産めなくなるという、ショッキングな現実…
もちろん、病気のことへの不安や心配も大きくある。
これからの日々は、今までような普通の生活はできなくなるであろう…
色々と変わることがあるであろう…
帰りの車内、お互いに黙りこくったまま自宅へ向かっていた。
