――――建国祭が間近に迫った、ある日のこと。本日も奥後宮の妃を含め一同が集められていた。
「えー、では本日は陛下よりお話があります」
司会、私。恐らく皇后の仕事ではないが、仕切るのは大事よね。
「……うむ」
そして立ち上がる陛下ことルー。普通は玉座に座って高座から言葉を述べるのだが、謁見の間を使うわけにはいかないし、そのために妃の外出許可など絶対に出ない上に玄宰相き小言を食らうのは明白なので。
「今回は……妃の階級と建国祭の特典について話そう」
妃たちの顔に緊張が走る。普通はこんな形での発表ではない。陛下の言葉を認めた書簡を陛下の側近の宦官が届けに来てくれるものだ。
まぁその書簡は届けられたと同時にほかの妃や後宮全体にも行き渡ると言う恐ろしい行事だったらしい。
まぁ、後宮城市の方は書簡が届けられ、真面目にやっているようなので銅賞をもらったらしいが。
さて、私たちは……だが。
「まず、セナと第2妃はそのまま。許蘭、姚雪華、鄧鶯は順に第3、4、5妃。早速今日から部屋の引っ越し作業にかかるように」
無事に昇級した3人は思わず喜び合う。しかし皇帝陛下の前とだけあって、すぐに居ずまいを倒して姿勢をただす。
「それから……建国祭に関しては全員に金賞を与えようと思うが……どうか」
おぉ……っ!みんなでまさかの……!いや、外出は交代制になるだろうが、建国祭は1週間。日替わりか時間交代制で束の間の休息を取ることができる。私は式典に同行しなきゃならないから、外出の時間以外は忙しいことこの上ないのだが、まぁある程度徒凛さまたちも手伝ってくれるからね。
「私は喜んで」
帝都のお祭りもちょっと興味がある。
そして許蘭たち3人も褒美を受け取る意を示す。
「……」
「徒凛さま……?」
「わたくしはいつものその……銅賞で構いません。故郷の味を」
最近知ったことだが、徒凛さまは主民族ではあるが、元々は小国の王族の出身なのだ。
「明明も楽しみにしていますから」
もしかしたら、外に出られるのは徒凛さまだけだからと言う背景もあるのだろうか。
明明ちゃんの場合はもう少し成長しないと外出許可は出まい。ルーの場合は特例だったのだ。
それに隠形眼鏡をつけるには幼すぎる。万が一瞳の色を見られたら大騒ぎになっちゃうもの。
「それじゃぁ帝都のお祭りではお土産買ってきます」
「わ、私たちも!」
「お土産を!」
「任せてください!」
私に続いて姚雪華たちまで。徒凛さまは本当に愛されているわね。もちろん明明ちゃんも。
「なら小遣い多めに出すか」
と、ルー。しかも小遣い付きとか素晴らしい!
「じゃぁ、ルーのお土産も買わなくちゃね」
「……ひとりで行く気なのか?」
「ウーウェイとリーミアも一緒よ。監視兼護衛で泰武官長も武官を出してくれるから……ひとりではないわ」
「そ……そう言うことでは……」
うん……?
ルーが何だか照れたような表情をしていたのが気になるが……建国祭の開祭は忙しさであっという間に訪れたのだった。