巻き込まれた獣人家族にどんな反応をされるか。怒られるだけならまだしも、訴えられたらと。もちろんこちらの不手際で、獣人の子に怪我をさせるところだったんだ。訴えられても仕方がないんだけど。

 もしそれで、ここを運営できなくなってしまったら? ここは俺だけじゃなく、たくさんの人々が力を貸してくれて出来上がった、素晴らしい場所なんだ。
 どうにかここを守らないと、みんなの協力が無駄になってしまうし。ここが好きだと、集まってくれているみんなにも申し訳がない。

 なんて事を考えながら、獣人家族の元へ向かった俺だったが。いざ会ってみると、俺の考えとは逆の反応が返ってきた。いや、もちろん怒られはしたんだけど……。

「この度は申し訳ございませんでした!」

 頭を下げる俺、そしてそれに続いて頭を下げるジェラルドさんとノーマンさん。そしてすぐさま、頭の下げ具合が悪いと、ジェラルドさんの頭を殴るノーマンさん。本当、しっかり謝ってくれと、心の中で文句を言った。

『頭を上げてください』

『私達はあなたのせいではないと、ちゃんと分かっていますから。駆けつけて彼を見た時にすぐに分かりましたよ。ああ、またかって』

『そうですよ。それに子供に怪我はありませんでしたし』

『しかし責任者は私です。お客様の怪我を負わせる可能性があった。本当に申し訳ございませんでした』

『分かりました。謝罪は受け取ります。ですが、そうですね。もしそれでもとおっしゃるのでしたら、彼に何か罰を』

『勿論です!! 彼には2週間の遊戯場への立ち入り禁止と、お酒を提供しているお店への入場を禁止いたしました』

『ハハハッ、それは確かに彼にとってはかなりの罰ですね。お前はどうだ? 私はそれで良いのだが』

『ええ、私もそれで十分ですよ。ですのでもう頭を上げてください』

 そう言われてそっと頭を上げる俺。ジェラルドさん達も頭を上げると、ジェラルドさんは歩き出し獣人の子の前へ。そして改めて獣人の子に謝った。

 獣人の子は最初、お母さんの洋服をギュッと握ったままジェラルドさんをジッと見ていて。ああ、もしかして親御さんはああ言ってくれたけれど、怖い思いをして話しができないのかもしれないと思った俺。何とか少しでも落ち着いてくれたらろと、俺も声をかけようとしたその時。

『勇者様、また失敗?』

「ああ、ちょっと失敗しちまってな。悪かったな」

『勇者様はいつも失敗だね。失敗ばっかりはダメって、失敗ばっかりしてると、勇者様はみたいな脳筋バカになってしまいますよって、魔王様が言ってたよ。脳筋ってなぁに?』

『こら! そういうことは言わないの』

『でも魔王様言ってたもん!!』

 ……アマディアスさんに後で言っておかないと。子供達の前ではなるべく、そういうことを言わないようにって。大体注意するのに脳筋バカを出すのはどうなんだよ。

『あのね、あのね、ぼくビックリしたけど、とっても楽しかったよ!! ビュッ!! ってものすごい風が吹いて、ブワッ!! って飛んで。ぼくねぇ、またあれやりたい!! ねぇ、また今度あれやって!!

『またやりたい?』

『スケさん。私達獣人は、というかここに来ている人達は、あれくらいじゃ気にもしませんよ。あなただって分かっているでしょう? 少し前まではこれくらいの爆発、日常茶飯事だったんですから』

『ですがまぁ、確かにここは施設ですからね。気をつけないといけないでしょうが、怖がったり、気にしたりするような人は稀でしょう』

 いや、うん。確かにそうなんだけど。う~ん、どうにも地球での記憶が戻ったせいか、ちょっと心配しすぎたかな。いや、でも経営者としてはなぁ。それにしてもあの爆発を、もう1回やってほしいなんて、そう言われるとは思っていなかった。

 その後、ジェラルドさんの謹慎処分が終わったら、あの爆発じゃないけど、何かをして遊ぶと約束したジェラルドさんと獣人の子。
 その約束が終わったら、これからお昼を食べに行くということで、俺は迷惑をかけたお詫びにと、無料昼食券を渡し。それから駄菓子セットを獣人の子に渡して。

 獣人の子は爆発が楽しかったのと、駄菓子セットを貰えてニコニコ、親御さんは昼食券にニコニコで、その場から去っていった。まさかニコニコを見送ることになるとは。最初の俺の心配は何だったのか。

 そうして獣人親子と別れた後は、ジェラルドさんをノーマンに任せ、俺もリルと一緒に食堂へ向かうことに。後はノーマンさんがジェラルドさんを叱ってくれるだろう。俺以上の罰を与える可能性も……。

 食堂へ向かう前、ダイアナが俺の仕事場に今回のことを伝えてくれて。俺のお客さんは2時間後ということで、少し遅れて戻ってきても良いと言ってもらえたからな。少しゆっくりしてから仕事場に戻ることにした。