『はい!! 次は僕です!! 702! 一緒に泊っていたモモン。あいつが最悪でした!! 僕に喧嘩を売ってきたんだよ!』

『喧嘩だっ……』

 喧嘩と聞いて、俺が確認しようと声を出すと、それをかき消すように。目覚まし鳥達が、今日1番の騒ぎになる。

『喧嘩だって!!』

『私達に喧嘩を売ったの!?』

『それは本当なのか!?』

『本当の本当だよ。あいつ、僕に喧嘩を売ったんだ!!』

『なんて事だ!!』

『すぐにそいつの所に行かないと!!』

『俺達の力見せてやる!!』

『みんな待ってくれ!! 俺の話しを聞いてくれ!! というかまずはしっかりと、話しを聞かせてくれ!!』

 俺は騒ぐ目覚まし鳥達に大きな声で話しかける。だがみんな、興奮してしまっていて、ぜんぜん俺の声に気づかず。挙句の果てには、全員で家から出て行こうとして。

 俺は仕方なく風魔法を使って、みんなを部屋の1箇所に集めることに。勿論怪我をしないように、でもしっかりと全員を集められるくらいの、ちょうど良い力加減で、風魔法を使ったよ。

『わあぁぁぁ!』

『もどっちゃうぅぅぅ!?』

 風魔法で完璧に全員捕まえた俺。風魔法を止める前に、全員におとなしくするよう約束してから風魔法をやめた。

『まったく俺の話しを聞かずに、勝手に出て行こうとするんじゃない!』

『スッケーおじさん、ごめんなさい』

『『『ごめんなさい』』』

『でも、モモンが喧嘩を売ってきたって』

『それは許しちゃダメだもん』

『だからそいつの所に行かないと』

『だから待てって。まずは確認をしなくちゃいけないんだよ。えっと、アオ、こっちに来て、しっかり話しを聞かせてくれ。もしかしたらこっちが、謝らないといけないかもしれないからな』

 アオとは、今喧嘩を売られた、と報告してきた目覚まし鳥の名前だ。

『謝る!? 喧嘩売られたのに!? ダメだよそんなの!』

『だからまず、話しを聞くって言ってるだろう。いいか、最初から説明しろ』

 アオがそのお客さんの部屋へ行ったのは、一昨日の夕方だったらしい。なぜアオがお客さんの部屋に行ったのか。それは仕事のためだ。

 その部屋には狼の獣人と、彼の相棒のモモンが泊っていて。最初のうちは何も問題はなかったらしい。いつも通りに時間を聞いて、それから契約通りに夜のご飯を貰って。

 でもそれは狼の獣人が寝てからだった。時々だったけれど、モモンがアオのことを見てきて、バカにしたように笑ってきたと。
 何もしていないのに、何で笑ってくるんだ? そう思ったアオ。だけどお客さんだからと、とりあえずは文句を言わずに、ただ無視をする事に。

 しかし昨晩、一昨日以上にバカにしてきたモモン。しかも今度はバカにしてくるだけじゃなく、手をちょいちょい動かし、アオに自分の方に来いというような仕草をして。その後、同じように小さい自分達だけど、力は俺の方が上なんだぞと。言ってきたらしい。

 ちなみにモモンは、モモンガに似ている魔獣で、大きさもモモンガと同じくらいの大きさだ。が、小さいわりに魔法の能力はそこそこで。しかも体術に関してはかなりの力を持っている魔獣なため。自然界に住んでいるモモンは、そこそこ危険な魔獣に分類されいる。

 そしてそのモモンは、小さい魔獣同士。どうもアオをライバル、というか下に見ていたらしく。それでの発言だったようだ。

『お前達、結構強いんだってな。でも、俺の方が断然上なんだぜ。ほら、かかってこいよ。俺の強さを見せてやる』

 そう言われたアオ。そこまで言われて黙っているわけにはいかない。という事で、モモンの喧嘩を買ったらしい。

『何だって!!』

『やっぱりいかなくちゃ!!』

『そいつは街を出たの!?』

『それともまだ街に居る!?』

『だから待てって!!』

 俺はまた、目覚まし鳥達を風魔法で止めた。そういえば、さっきもみんなで行こうとしていたけれど、相手がどこに居るか分からずに、出て行こうといていたのか? 

 騒ぐみんな。でもここで止めたのは意外な人物だった。

『みんな待って! 僕、ちゃんと奴に勝ったよ!! あいつをノックアウトしてやったよ!!』

 ふんっ!! と胸を張るアオ。それから足蹴りをしたり、翼を平手打ちするみたいの動かしたり。その姿にほんの数秒だったけど、部屋の中がし~んと静まり返り、俺は目頭を押さえた。やっぱりか。やっぱりそうなるよな。

『良くやった!!』

『さすがね!!』

『フンッ! まったく。これだから自分の力を分かっていない連中は。アオ、良くやった!!』

『これで私達の力を、しっかり理解したんじゃない?』

『そうだな、もう喧嘩は売ってこないだろう』

『はぁ、喧嘩を売ってこない、じゃないんだよ。確かに向こうが喧嘩を売ってきたかもしれないけど』

 と、話している最中だった。ベルが鳴り、誰かが目覚まし鳥の家を訪ねてきた。部屋に結界を張り、みんなが勝手に外へ出で行かないようにしてから、みんなの代わりに俺が玄関へ。ドアから外を覗くと、そこには従業員のヘレンが立っていた。

『スケさんすみません。お客様がスケさんに謝罪をしたいと』

『謝罪?』