「はぁ、またあの脳筋バカ勇者ですか」

『爆発させるって、何でトイレで爆発が起こるんだよ』

 さっきの爆発音はトイレが爆発した音だったらし。何で爆発するような物がないトイレで爆発が起こるんだ? はぁ、仕方ない。ご飯を食べるのはトイレの対処をしてからだな。

 施設の中はお客さんでいっぱいなため、施設の中を移動するより外を移動した方が早いってことで、窓から外に出る。今いる場所は1階だから何の問題もない。というか5階くらいから外へ出たところで、俺達はほぼ問題ないけど。

 そうして俺はリルに乗って。ダイアナはそのまま飛んで。そしてアマディアスさんも飛びながら、爆発現場へ向かうことに。
 別にアマディアスさんは来なくても良いんだけど、ジェラルドさんの名前を聞いて、しかも彼が今回の爆発の原因と聞いて、たぶん馬鹿にしに行くんだろう。

 それから出てくる時に、託児所の子供達から、ジェラルドさんがどんな事をしたのか、しっかり見てきて後でお話しして、なんて頼まれてたしな。それに対するアマディアスさんの答えは。

「では今日のお昼寝前の絵本はやめて、今回のジェラルドの失敗のお話しをしましょう」

 だった。そしてそれを聞いた子供達は大盛り上がり。ジェドに、さぁご飯を食べましょうと言われていたけど、あの盛り上がり方では当分収まらないんじゃないかな。

 外に出て少し移動すると、煙が見えてきた。爆発音から、まぁまぁの爆発だったのは分かっていたけど、煙を見てやはり大きな爆発だったのはことが分かる。まったく何をやればこんな大きな爆発が起こるのか。

 移動しながらダイアナに詳しい話しを聞くと、ダイアナも詳しくは分からないらしく、ノーマンにジェラルドさんがやらかしたから、俺を呼んできてほしいと頼まれたらしい。
 ノーマンがいてジェラルドさんを止められなかったか。というか、止めていたんだろうけど、ジェラルドさんが止まらず暴走した感じか? はぁ、まったく。

 そうして現場へ着けば、壁の一部が完全に崩落しており、かなりの野次馬が集まっていた。その中を消化してくれている、安全管理部門の面々。俺達が着くまでにほぼ消化は終わっていたため、それからすぐに消化活動は終わって、中の確認に移った。

 確認が終わる間、俺達は壊れた壁から中へ入り、向こうのほうで正座をして、ノーマンに怒られているジェラルドさんの所へ。

『ジェラルドさん、ノーマン』

「スケさん! はぁ、すみません。またうちのジェラルドがやらかしれしまって。ジェラルド! 誠心誠意、しっかり謝りなさい!!」

「すまん、スケ!! 別に壊そうと思ったんじゃないんだ。それにここまで酷くなるとは思わなかったんだ」

『壊そうと思ったんじゃないって、それは当たり前です。故意に壊したなら許しませんよ。それで何があったんですか?』

 それはちょっとした水漏れから始まった。ここのトイレはみんなが使えるように。そう、まだ魔力が安定しておらず、上手く魔法が使えない子供達でも安心して使えるように。ある工夫がしてあるんだ。

 魔力を溜められる石があって、それに魔力を溜めておき、それにちょっとの魔力を入れることで風魔法を発生させ、用を足した後の水を風魔法で流すようになっているんだ。

 そして水を流した後は次の人のために、水魔法が使える人は、水魔法で便器に水を入れておく。水魔法が使えない人は、銅で作られている、ちょっと大き目の壺が置いてあるんだけど。そこから水を汲んで、便器に入れてもらうようにしている。

 その壺にヒビが入っていて、そこから水が漏れていたらしいんだ。本来だったらそういった修理は安全管理部門の人達任せてあって。今回も施設を見回っていた安全管理部門の人が気づいて、仲間を呼んでいる最中だったと。

 が、そこにたまたま通りかかったジェラルドさんとノーマン。壺のヒビくらい俺が止めてやるって。ノーマンと安全管理部門の人が止めるのも聞かずに、壺へ向かったジェラルドさん。土魔法で止めれば大丈夫だろうって、得意じゃない土魔法を使い。

 それでも最初は水漏れが止まったらしく、応援の人が到着するまでの時間稼ぎにはなるだろう。ほら、俺にだってこれくらいはできるんだと。調子にのっていたジェラルドさん。
 だが、水漏れを止めてから数分後、水が漏れていた部分しか止めていなかったせいか、ヒビの別の部分から水が漏れ出し。

 なぜかここで慌てたジェラルドさんが、新たな水漏れ部分にも、とりあえず土魔法を使えば良かったのに、手で勢いよく押さえ。その押さえた力が強すぎたせいで、壺には雷状に大きなヒビが。そして新たなヒビからも水漏れが。

 それでさらに慌てたジェラルドさんは、何故かさらに手に力を入れていまい。そんなジェラルドさんを止めながら、土魔法でヒビを覆ってくれようとしたノーマン。だけどここでまた、ジェラルドさんが余計な事を。

 せっかく止めてくれている、ノーマンの土魔法に火で温めた方が強くなって、更にしっかりと止まるんじゃないかって、謎理論を展開して、それを実行しようとし。それを止めようとするノーマンと安全管理部門の人。

 ちょっと揉み合いになり、火魔法を少し使われたところで止められたんだけど。ジェラルドさんを引き離した時、揉めていることを知らずに、パチパチ花火を持ちながら、トイレに入って来た獣人の子がいたと。

 パチパチ花火っていうのは、雷魔法が施してある、棒花火みたいな物で。吹くと色々な色の火花が散って、子供達に大人気のおもちゃなんだけど。
 獣人の子がパチパチ花火を吹いて、その火花が壺の方へ。そして水と土と火と、まぁ色々な偶然が重なり、今回の爆発に至ったらしい。

 獣人の子は爆発前に、危険を感じ取った、今回の1番の原因であるジェラルドさんが、瞬時に動いて獣人の子を外へ連れ出してくれて。かすり傷もなくすんだらしい。今は向こうのベンチで係の人が説明してくれているようだ。
 あぁ、良かった。怪我がなくて。謝罪しに行かないとな。

『ジェラルドさん。俺、言いましたよね。こういうことは専門の人に任せて、ジェラルドさんは何もしないでくださいって』

「いや、それは」

『言いましたよね』

「……はい」

『まったく、これで何度目ですか! トイレをこんなにして! いやトイレは直せば良いですが、今回は怪我人が出るところだったんですよ!!』

「む……、それについては、本当に申し訳なく思っている」

『はぁ、前回なんて1時間以上もかけて、みんなでジェラルドさんに伝えたはずなんですけどね』

「スケさん、本当にすみません。私がしっかり止めることができていれば」

『いえ、ノーマンのせいじゃないですよ。これは考えるよりも先に行動してしまうジェラルドさんのせいですから。まぁ、戦いに関してで言えば、それがあなたの力でもあるので、文句はありませんが。こういう時にそれを発揮されると迷惑です』

「スケ、この男に何を言ってもダメですよ。なにせ考える頭を持っていない、脳筋バカ勇者ですからね」

「何だとてめぇ!」

『ジェラルドさん!!』

「うっ……」

『まったく、本当に反省しているんですか。というか、本当に反省してください。それから反省している間、遊戯場とお酒の提供をいている施設への立ち入りを禁じます!! 皆に伝えておきますからね。そうですね2週間は禁止します!』

「そ、そんな!! 1週間ぶりに帰ってきたのに!! そ、そうだ! ここを破壊したのは俺だからな。俺もここの修復をやるから……」

『ジェラルドさん、前に2回ほどそう言って手伝ってどうなりましたか? 忘れたとは言わせませんよ』

「う……」

『ダイアナ、これからタイロンが来るでしょうから、ここはタイロンに任せると伝えておいてください。私は獣人の子とご家族に謝罪してきます』

「はい、了解しました!」

「ほら、ジェラルド行くぞ! お前がしっかり謝らないと」

「スケ、私は子供達の元へ戻りますね。みんな今回の話しを楽しみに待っているでしょうから。しかし今から戻って、お昼をしっかりと食べてくれるでしょうかね。お昼寝前の約束ですが、今すぐ聞きたいと騒ぐかもしれませんね。まぁ、子供達が喜ぶのなら、脳筋バカもたまには役にたつ」

『アマディアスさん、今回は怪我人が出るところだったんですよ』

「そうでしたね。ですが子供は楽しい話しが好きですから。それにおそらく獣人の子も……。ではお先に。リル、待っていますからね」

『は~い!!』

 アマディアスさんがきた時に入ってきた、壁の崩れている所から外へ出て行った。俺はジェラルドさんを連れて、巻き込まれそうになった獣人家族の元へ。今回のこと許してくれるだろうか。