エルフが俺達に言った、『お前達のその表情は何だ?』って。何だって何だよ? 俺達の表情に何か問題でもあるのか? 俺は蝶達とスレイムを見てみる。するとみんなも俺の顔を見てきて。そしてみんなで首を傾げた。

 勿論俺は首を傾げる事なんてできないけれど、心の中で首を傾げたんだよ。だって俺達の表情はいつも通りだったんだから。俺の表情もそうだったから、みんなも首を傾けたんだろうし。

 またみんなでエルフを見ると、エルフは俺達を最初に見た時の、綺麗で格好いい顔ではなく、凄く嫌そう表情になっていて。俺達と目が合うと更に嫌そうな表情になったんだ。そして、

「だからそれは何だと聞いている」

 って聞いてきたんだ。だからそっちこそ何なんだよ。仕方なくまた俺はみんなを見て、みんなも俺を見てきて。何だよ! 通りでだよ! イライラしながらエルフを見返した。

「はぁ、やはり来るんじゃなかった。長が行けと言うから仕方なく来たが、やはり他に押し付ければよかったんだ。しかもこんな人間の赤ん坊に対して、言葉遣いも何もないだろう」

 何だ何だ? 今までの言葉遣いと全然違うぞ? 今までは文句を言っていても、俺達に訳の分からないことを言っていても、一応話し方だけは丁寧だったのに。
 今はぜんぜん違う、軽くなったっていうか、乱暴とまでは言わないけど、けっこう砕けた言葉遣いになったっていうか。どうしていきなり変わったんだ。

「それか、何かと理由をつけて、あいつがもうすぐ帰ってくる所だったからな。それを待って、あいつに行ってもらえば良かったんだ」

 まぁ、文句が止まらない止まらない。

「そうすれば最初に見つけたあいつの責任になって、俺は何もせずに家に帰れたのに。大体お前達がいるのなら、お前達が向こうへ連れて行けば良かっただろう。お前達が助けたということは、そっちでも何か指示が出ていたんじゃないのか?」

 お前達って、俺は何も知らないぞ? と思っていたら、蝶達やスライムがエルフに話し始めて。今までにないくらい、すごい勢いで話していた。しかも文句を言っているような感じで。ゴブリンの時だって、こんな勢いじゃなかったのに。

「何だ、お前達勝手にここへ来たのか。その赤ん坊を助けるために。じゃあやっぱりお前達の方で」

『******!!』

「何だと、何でそんなことを勝手に決めたんだ。いや言ったんだ!!」

『******、******!!』

「そんなこと俺が知るわけないだろう! 今からでももう1度話し合って、今すぐにそいつを連れて……」

『******、******、******!!』

「はぁ、何を考えているんだ。お前達の中心は」

 みんなの話しについて行けなくなった俺。ただただみんなの話を聞くことしかできなかった。それにしてもエルフはよく、みんなの話していることが分かるな。自然と共に生きていると、よく地球では言われているけど。
 こっちの世界でも同じで、自然と共に生きているから、みんなの言葉が分かったりするのか? 俺も話せたら良いんだけどな。そうすればしっかりとみんなにお礼が言えるのに。

 みんなが話しを初めてどれくらい経ったのか。更にみんなの勢いがヒートアップするんじゃないか、そう思われた時。新たな人物が現れた。

「何をしているんだ。何か見つけた場合、すぐに連絡するように言われていただろう」

 声は上から聞こえて、それからすぐにシュッ!! と背の高い人物が現れたんだ。

 服装は最初のエルフと同じで。背は最初エルフよりも高く、髪の毛は腰くらいまであったが結んでいないため、サラサラと髪の毛がたなびいている。金髪だけど最初のエルフよりも少し暗い? 感じの髪色だ。そして尖った耳。彼もエルフだろう。顔は……、またイケメンかよ。
 
「別に大したことじゃないから知らせなかった」

「大したことがないだと。人間の赤子がいるだけで大事なのに、彼らまで居るなんて。これが本当に大したことがない?」

「そうだ、大した事はない! それにその赤ん坊は、そいつらが連れて帰るだろう。お前達、そうお前達の中心にもう1度知らせろ」

「その言葉遣いはなんだ? いつも我々種族に相応しい言葉遣いにしろと言われているだろう。はぁ、いや今は言葉遣いは良い。それよりも現状を理解しないと。みんな、私にも話しを聞かせてほしい」

 新たに現れたエルフは、最初のエルフよりも落ち着いている感じがして、みんなに丁寧に色々聴いてきた。それに丁寧に返すみんな。最初のエルフの時とは大違いだ。その姿を見て、嫌そうな顔をする最初のエルフ。そして音にはしないが、『チッ』というような仕草をして。

 そんな最初のエルフの様子に、俺はここの中で少し笑ってしまった。これが違いよ。そっちが後から来たエルフみたいに、話しをしっかり聞いてくれれば、みんなもあんな勢いで、何かを話さなかったと思うよ?

「なるほど、そういう事か」

 静かにきちんと話したおかげか、最初のエルフよりも早く話しを終えたエルフ。

「ならばそちらの言う通り、こちらで対処しよう。ミルバーン。、里に戻るぞ。それとお前が最初にこの場所へ着いたんだ。この赤子はお前が責任を持って、里へ連れ帰るんだ」

「そっちに任せれば良いだろう!」

「彼らはすでに決めている。当分あの場所へは戻らないそうだ。それと向こうは後で会うと。今すぐに戻るぞ」

「俺は嫌な予感しかしない。今ここで別れた方が……」

「ミルバーン!」

「はあぁぁぁ、分かった。連れて行けば良いんだろう」

 今度こそ俺達に聞こえるように、最後に舌打ちをしたミルバーンと言われたエルフ。2人が俺を囲み。

「我々のことをどれだけ理解できるか。私の名はシャノン、こっちはミルバーン。これからお前を我々の里、エルフの里へと連れて行く。我々の里でしっかりと世話をするから、安心して眠っていると良い」

 エルフ。エルフって言ったよな? やっぱりエルフで間違えがなかった。それに今エルフの里へ連れて行くって。しかも世話もしてくれるって? 聞き間違いじゃない? はあぁぁぁ、良かった助かった。

 そう思った瞬間、また睡魔が襲ってきて、俺はすぐに寝てしまったんだ。