何だ!? どこから声が? 目だけで周りを確認するけれど、相変わらず見える範囲は変わらず。たぶん俺の左斜め後ろの上の方からだと思うんだけど。いきなりの声だったから、もしかしたら違うかもしれないし。間違っていなくても、後じゃ俺からは見えないし。

 だけど蝶達やスライムの様子を見ると、俺の感じた方向は合っているようだった。みんな俺が考えてていた方角を見ていたからな。
 そしてそんなみんなは、少しに間、声が聞こえた方を見た後に戦闘態勢を解いて、最後に倒れたゴブリンの方を見た。

 みんなは声の主を確認できたのか? 確認できて敵じゃないって分かったから。そしてゴブリンが全員倒れたから、戦闘態勢を解いたんだよな? じゃあもう安全なんだよな? なら。
 もちろん声の主のことは気になったけれど、先に襲って来たゴブリンを確認しないと。俺もみんなと一緒に、最後に倒れたゴブリンを見た。

 最後のゴブリンは、頭に矢が刺さった状態で倒れていて。まぁ、見事ど真ん中に刺さっていたよ。そして他のゴブリン同様、ピクリとも動かないことから、完璧に死んでいることが分かった。ふぅ、とりあえずは助かったみたいだな。

 なんてホッとしていると、俺の考えたことと同じように事を、誰かが言ってきた。さっきの声と同じ声でだ。

「これで全部か? もう問題はないな。いや、問題だらけか」

 いやいや、とりあえずの問題は解決したよ。って、だから誰の声だよ。と思った瞬間、いきなり倒れているゴブリン達の前に、俺の方に背を向ける感じで人が現れた。人だよ人。この世界に来て初めての人が、今目の前に!! だけど……。

 どうにも何かか違う。洋服は白がメインで、ズボンを履いているが上に着ている洋服のせいで、スラットとしたスカートを履いているように見える。それから髪は腰までの毛を1つに結んでいて、色は金髪でキラキラ光ってとても綺麗に見えた。

 そしてここが1番気になったところではあるんだけど。耳がさ、少し尖って見えたんだ。後ろ姿で、しっかりと前から見ていないし、本人からちゃんと聞いたわけじゃないけど。その姿はまるで。俺のライトノベルやゲームに出てくるエルフ、そのものだった。

「まったく、この前全て倒したはずだったが、もう入って来たのか? はぁ、面倒な者達だ。大体片付けるのは誰だと思っている。今回は俺が片付けなければいけないんだぞ。私の貴重な時間をお前達に使うなど」

 ブツブツ文句を言い始める、おそらくエルフだと思われる人。

「それに何で、お前のような者がここに居る。ここは人間が入って来て良い場所ではない。赤子だろうが大人だろうがそれは変わらん」

 何だよ。今度は俺の文句かよ。俺だって自分からここに来たわけじゃないよ。神がここに転生させたんだ。文句があるなら神に言ってくれ。

「お前がここに来たせいで、この面倒な者達が、ここへ入って来たのではないのか? まったく余計な事をしてくれた」

 一切俺の方を見ないで、勝手に話すたぶん男のエルフ。それからもゴブリン達を何かの魔法で集めながら、そして集めた後は、これまた魔法で燃やしながら。ずっと俺とゴブリン、交互に文句を言ってきて。

 あまりの文句の多さに、いい加減イライラしてきた頃。ようやく俺とゴブリン以外の文句が。いや、文句なのは変わらないのかよ! 心の中でツッコミを入れてしまった。

「お前達もこんな場所で、あげく人間の赤ん坊なんかと何をしているんだ。最近は姿も現さなかったのに」

 あげくって何だよ、なんかとは何だよ。本当さっきから失礼だな。それにしてもこのエルフ、みんなのことを知っているのか? 今の流れ的に、そして状況的に、蝶達とスライムに言ったのは間違いないと思うんだけど。

 俺がそんなことを考えていると、言われた方のみんなは、3匹で集まって、エルフの方をチラチラ見ながら、何か話し始め。

「何をブツブツと言っているんだ。はっきり言わないか」

 そう言われても、3匹のコソコソ話しは続き。そんなことをしていると、ゴブリン達を焼いていた火が消えそうに。そうして火が消えると、エルフが何かを囁き、今までゴブリン達が焼かれていた場所と、ゴブリン達の血で汚れてしまっていた地面が光り始め。
 光が消えるとそこは、何事もなかったように、元の地面に戻っていた。草はもちろん花もだ。

「よし、これで浄化は終わった。それで、お前達はいつまでコソコソ話しているつもりだ。それに赤ん坊の方も、良い加減何か言ったらどうだ。赤ん坊だろうと、話せなくとも赤子の言葉で何か言うべきだろう」

 そう言いながら、初めて振り返ったエルフ。その顔はとても綺麗だった。カッコいいプラス綺麗って感じか。けっ、やっぱりイケメンかよ。どうしてエルフにはイケメンが多いんだ。

 それに何だよ、今の言い方。赤ん坊で話せないって、ちゃんと分かってるんだから、何か言えだなんて無理言うなよ。
 そりゃあ危ないと所を、ゴブリンを倒してくれたんだ。感謝しているけど、そんな言われ方したら、お礼も言いたくなくなるよ。

 はぁ、でも確かに助けられたのは事実だし仕方ない。まだ文句を言われ続けるのも嫌だからな。

「ばぶ」

 俺はひと言だけ、ありがとう、と言っておいた。それなのに、それなのにだ。何か言えと言ったのは自分なのに、俺達を見たままそれに対して何も言わないエルフ。おい、今度は何だよ。ゴブリンも問題だったけど、こっちもこっちである意味面倒だな。

「お前達のその表情は何だ?」

 は? 何の事だ?