体育あとの睡魔との戦いはなかなか厳しかったけど、なんとか勝利した。
帰りのホームルームを終え、気が抜けたオレは欠伸をしながら、めずらしく遅い玲が来るのを待っていた。
もしかしたら昼に話していた空手部に顔を出して断っているのかもしれない。
「めずらしいな。辻村がまだ迎えにきてないなんて」
「んまぁ。理由は大体わかってる。田中こそ、バイトは?」
「へぇ、さすが。俺のバイトは、まだ時間はあるから時間つぶしてるとこ」
田中はオレを指差して、ケラケラと笑った。
「おいおい。オレでヒマつぶすな」
「いーじゃん。どうせ、こただって辻村来るまでヒマだろ?」
「そうだけど。そう言われると、なんかシャクだ」
「まぁまぁ。俺らの仲じゃないかー。細田 虎太朗様」
両手を合わせてそう”様付け”されると、悪い気はしない。
「仕方がないなー」
「単純」
「え? なんでもありませーん」
両手は広げた田中。
「なぁ、辻村のこと、どう思ってんの?」
「どう?」
急になにを言い出したのかと思ったけど、今日の体育で玲と2人で話していたので、なにか感じたことがあったのかもしれない。
「あー。ほら、イケメンとか、頭いいとか、モテてムカつくーとか」
もしかしたら、いまオレが感じているようなモヤモヤが田中に移ってしまったのだろうか。それはいかん。ネガティブもやもやするのはオレだけで十分だし、それにもしかしたら田中は心配してくれているのかもしれない。
田中は悪ふざけするけど、根は良いヤツなのだ。
「んー。好きだけど?」
「え。好き」
田中の時間が止まった。
「安心しろ。田中のことも好きだから」
「え、あ、そうだよな」
ぎこちなく、うなずく田中。
「まぁ。でも玲と一緒かって言われると違うけど」
「違うって、そ、それは」
オレがそう言うと、田中は前のめりになった。
どうした田中。止まったり、慌てたり、落ち着きがないな。情緒不安定か。
「隣にいるって言うか、いて当然って言うか、離れず、ずっといるって感じ」
「んん?」
「あぁ、もちろん。田中と離れたらさびしいぞ。でも玲とは離れることがないって思うっちゃうって言うか。ま、そんな感じだな」
あらためて聞かれると、むずかしい。
「・・・お前ら、ほんと、拗らせてて面倒くせよ」
「?」
「なんでもねぇよ。あー、お迎えきてんぞ」
肩をすくめた田中はそう言うと、指先をドアに向けた。田中の指先に釣られるように目線を動かすと玲が立っていた。
「こー。帰ろう」
「いま、行く」
カバンを肩にかけて準備をする。
田中のつぶやいた意味はわからなかったけど、田中も思春期モードに入ったのだろう。今度、話を聞いてやろう。
そんな風にぼんやり考えていると、玲が帰りを催促する。
「こー」
「おぅ! じゃ、田中またな」
「へいへい。またな、おふたりさん」
こうして、俺たちの1日が終わる。
明日もまた、同じようにモヤモヤしたり、ばか騒ぎしたり、笑い合うんだろうなと、玲と肩を並べながら思った。
帰りのホームルームを終え、気が抜けたオレは欠伸をしながら、めずらしく遅い玲が来るのを待っていた。
もしかしたら昼に話していた空手部に顔を出して断っているのかもしれない。
「めずらしいな。辻村がまだ迎えにきてないなんて」
「んまぁ。理由は大体わかってる。田中こそ、バイトは?」
「へぇ、さすが。俺のバイトは、まだ時間はあるから時間つぶしてるとこ」
田中はオレを指差して、ケラケラと笑った。
「おいおい。オレでヒマつぶすな」
「いーじゃん。どうせ、こただって辻村来るまでヒマだろ?」
「そうだけど。そう言われると、なんかシャクだ」
「まぁまぁ。俺らの仲じゃないかー。細田 虎太朗様」
両手を合わせてそう”様付け”されると、悪い気はしない。
「仕方がないなー」
「単純」
「え? なんでもありませーん」
両手は広げた田中。
「なぁ、辻村のこと、どう思ってんの?」
「どう?」
急になにを言い出したのかと思ったけど、今日の体育で玲と2人で話していたので、なにか感じたことがあったのかもしれない。
「あー。ほら、イケメンとか、頭いいとか、モテてムカつくーとか」
もしかしたら、いまオレが感じているようなモヤモヤが田中に移ってしまったのだろうか。それはいかん。ネガティブもやもやするのはオレだけで十分だし、それにもしかしたら田中は心配してくれているのかもしれない。
田中は悪ふざけするけど、根は良いヤツなのだ。
「んー。好きだけど?」
「え。好き」
田中の時間が止まった。
「安心しろ。田中のことも好きだから」
「え、あ、そうだよな」
ぎこちなく、うなずく田中。
「まぁ。でも玲と一緒かって言われると違うけど」
「違うって、そ、それは」
オレがそう言うと、田中は前のめりになった。
どうした田中。止まったり、慌てたり、落ち着きがないな。情緒不安定か。
「隣にいるって言うか、いて当然って言うか、離れず、ずっといるって感じ」
「んん?」
「あぁ、もちろん。田中と離れたらさびしいぞ。でも玲とは離れることがないって思うっちゃうって言うか。ま、そんな感じだな」
あらためて聞かれると、むずかしい。
「・・・お前ら、ほんと、拗らせてて面倒くせよ」
「?」
「なんでもねぇよ。あー、お迎えきてんぞ」
肩をすくめた田中はそう言うと、指先をドアに向けた。田中の指先に釣られるように目線を動かすと玲が立っていた。
「こー。帰ろう」
「いま、行く」
カバンを肩にかけて準備をする。
田中のつぶやいた意味はわからなかったけど、田中も思春期モードに入ったのだろう。今度、話を聞いてやろう。
そんな風にぼんやり考えていると、玲が帰りを催促する。
「こー」
「おぅ! じゃ、田中またな」
「へいへい。またな、おふたりさん」
こうして、俺たちの1日が終わる。
明日もまた、同じようにモヤモヤしたり、ばか騒ぎしたり、笑い合うんだろうなと、玲と肩を並べながら思った。